企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇オープンソースERPソフトの仏ネクセディが日本法人設立

2008-07-14 11:15:00 | ERP

 【ERP】オープンソースERP「ERP5」のリーディングカンパニーの仏Nexedi SA(ネクセディ、リール市、ジャンポール・スメッツCEO)は、08年7月2日に日本法人として株式会社Nexedi(東京都品川区、奥地秀則社長)を設立した。ネクセディグループによって開発されたERP5は、100%オープンソースソフトウエア(OSS)で、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、北米、南米の世界各地で実績を持っている。日本でも1年以上利用のユーザーがある。日本のネクセディは研究開発(R&D)の中心的役割を果たし、約20万ユーロを投資することになっている。「ERP5」は既に銀行業のような大規模システムにも対応しているが、これまでのERPソフトが達成できなかった、より複雑で巨大なシステムに対応するため研究開発事業を展開することにしている。(08年7月2日発表)

 【コメント】これまでERPソフトはSAPに代表されるようにパッケージソフトとして提供されてきたが、最近になりOSSのERP製品が提供されるようになってきた。米国のCompiere(コンピエール、日本代理店=アルマス)やKN情報システムの「HOOP」など      で、フランスのネクセディの「ERP5」もその一つであるが、中でもこの「ERP5」は世界で初めて100%オープンソースERPを実現したことや、世界各国にユーザーを持つことなどから、今最も注目を集めている。

 オープンソースERPのメリットについてネクセディは次のように述べている。「オープンソースERPはベンダー・ロックインからの開放、コスト削減などの観点からも、顕著な効果が認められている。しかしながら、それ以上にユーザーの自由度の高さこそが最大の魅力である。ソフトウエアが公開されているため、コミュニティによる情報交換、コア・システムにまで手を入れられる柔軟性、データ形式の透明性、ソフトウエア利用の安全性の確保など、非オープンソース製品では決して真似のできない長所が光る」。そして他のオープンソースERPに比べての優位性としては、スクリプト言語「Python」の長所を生かし、柔軟で迅速な開発が可能となり、また、統合ビジネスモデル(UBM)に基づいているためソフトウエアの再利用性が高く、ソースコードの肥大化が避けられ、開発コストの大幅な削減を実現できる、ことなどを挙げている。

 わが国のERPソフト市場は、大手企業向けはSAP、オラクルなどが独占し、中小中堅市場ではオービックなどオフコンからの長い実績を持つベンダーによって固められている。この市場にオープンソースERPソフトベンダーが新たに参入することはたやすいことではない。しかし、現在ほどソフトウエア構築に対する安全性やコスト削減の意識の高まりが見られたことは過去になかったといえる。このようなユーザーニーズを取り込めば、オープンソースERPソフトの普及も夢ではない。パッケージ型ERPソフトベンダーは長い間作り上げてきた販売網、保守網が絶対の強みだ。オープンソース型ERPソフトベンダーがこの分野を開拓できるかが、今後の日本市場での普及のカギを握っているといえそうだ。(ESN)


◇企業システム◇株式会社オロのSaaS型ERPソフト「ZAC」

2008-07-11 10:50:06 | ERP

 【ERP】株式会社オロ(東京都目黒区目黒3-9-1、川田 篤社長)は1999年1月に設立されたまだ若いソフト企業だ。東京本社のほか大阪支社、北海道支社を持つ。主力製品のERPソフト「ZAC」はパッケージ販売のほか、今注目されているSaaSでの提供も行っている。SaaS型ソフトは米国のセールスフォースドットコムが成功をおさめて以降、新しいソフトの提供方法として我が国でも俄かに脚光を浴び始めてきているが、ERPソフトをSaaSで提供しているベンダーはまだそんなに多くはない。同社はERPソフト「ZAC」をいち早くSaaSで提供を開始しているが、SaaS型ERPソフト「ZAC」の現状と今後の見通しについて、ZACエンタープライズ事業部長・藤崎邦生取締役に質問を行い、次のような回答を得たので掲載する。

 質問① 貴社のSaaS型ERP「ZAC」が主な対象とする企業規模(従業員数あるいは売上高)および業種(製造業とか流通業など)は何ですか。

 藤崎取締役 対象規模は従業員30人から1000名程度までの中堅・中小企業です。対象業種は受注産業(第3次産業)で、広告業、制作業、コンサル業、建設業、ソフトウェア開発業など案件別の個別原価を必要とされる業種です。

 質問② パッケージ型ERPとSaaS型ERPの販売比率(ユーザー数)の今年と3年後、5年後の推移をどう予想されていますか。

 藤崎取締役 SaaS型ERPの月額利用料金が下がる方向性で市場が形成されることを想定しております。現在、SaaS市場は17%ほどの成長率で進んでおりますが、予想(ユーザー数推移)としては、以下のように予想しております。パッケージ型対SaaS型の比率は、今年=20対1、3年後=10対1、5年後 =5対1。

 質問③ SaaS型ERP「ZAC」は、ユーザー1社1社ごとのカスタマイズはどこまで可能なのですか。また、データのセキュリティはどのように保証されるのですか。

 藤崎取締役 カスタマイズは行わずにパラメータ設定で行う形のシステムとなっております。1社ごとの独自カスタマイズは追加パラメーターの拡張で対応しています。基本的には、どのようなカスタマイズをかけることも可能ですが、機能の拡張性に反する機能については、お断りする可能性もあります。セキュリティにつきましては、いろいろな側面で考えられますが、データセンターでSaaS利用を行う場合には、ユーザー企業からSSLでアクセス制限を行いご利用いただいております。またシステムへのログイン後は画面単位で利用ユーザーの権限設定が可能です。

 質問④ 同じアプリケーションの場合、パッケージ型ERPとSaaS型ERPのコスト的な比較は大体どのくらいと考えたらいいのですか。

 藤崎取締役 パッケージの場合にはライセンスの買い取りとなります。従いましてSaaS型(毎月ご利用料金を支払う形式)で ご利用いただく場合には、ある時点でパッケージ価格を上回ることになります。現時点の価格設定は、2年で逆転する形になっておりますが、今後は、2年から徐々に増やしていく(※SaaS型の月額料金を下げる)方向で考えております。

 


◇企業システム◇日本HPとマイクロソフトが統合ODSソリューションで協業

2008-07-09 09:40:19 | システム開発

 【ニュース】日本HPとマイクロソフトは、無停止型ブレードシステム「HP Integrity NonStep NB50000c BladeSystem」と「Microsoft SQLServer2005」を連携させ、業務データをリアルタイムに統合、可視化を実現する統合オペレーショナル・データ・ストア(統合ODS)ソリューション分野で協業した。これは日本版SOX法やコンプライアンスへのニーズに両社が共同で応えるため。この「統合ODS」ソリューションは、グローバル展開している企業やコンプライアンス対応に取り組んでいる企業などを主な対象としている。(08年7月7日発表)

 【コメント】NonStopという文字を久しぶりに見た。タンデムコンピュータのNonStepコンピューターはストラタステクノロジーのマシンと並んで無停止型コンピューターの両雄であった。1977年にタンデムはコンパックに買収されたが、今度はコンパックが
HPに買収され、03年以降NonStopシリーズはHPの名前で製造されている。05年にはそれまでのMIPSプロセッサーからItanium2プロセッサーに移行し、製品名を「HP Integrity NonStopサーバ」と変え現在に至るという、数奇の運命を持ったマシンだ。
このような買収で現在はHPの一マシンとしての位置づけに収まっているが、これからの市場動向を考えると、無停止型コンピューターの需要は大きく、NonStopの認知度はもっと高まってもいい。

 SQL Serverはマイクロソフトの独自DBソフトとして多くのユーザーを持っているが、今回統合ODS(統合オペレーショナル・データ・ストア)として市場に提供されることになった。これまでも統合ODSはいくつかのベンダーから提供されてきており、潜在需要はかなり高いと思われる。例えば、今サーバーやストレージの仮想化の関心は非常に高い。これは数多くのサーバーやストレージを集約させ、コスト削減を図りたいというユーザー側の要望のほかに、各サーバーに分散されたデーターを統合したいというニーズがあるからに他ならない。この際、複数のDCに分散されて格納されているデータをどうするのかという問題が浮上してくる。

 そこで、今回マイクロソフトとHPが協業して提供する「統合ODS」が威力を発揮することになる。NonStop SQL側は透過的な連携を可能とするためにNonStop SQL/MX2.3とODBC/MXを採用しており、これにより異なるDB間のデータ連携を可能にしている。両社は今後、メインフレームで分散した業務システムを展開している企業に対し、統合ODSソリューションを提供することにしている。日本市場にはTBMをはじめとしてまだまだ多くのメインフレームユーザーが存在している。今回マイクロソフトとHPとが協業して、果たしてどこまでメインフレーム市場に風穴をつくりだすことができるのか、まずは両社のお手並み拝見といったところだ。(ESN)


◇企業システム◇ネットスイートのSaaS型統合業務アプリケーションソフトウエア「NetSuite」

2008-07-07 14:19:01 | ERP

 【ERP】日本市場でもようやくSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)への関心が高まってきたが、米NetSuite社はSaaS型統合業務アプリケーションソフトウエア「NetSuite」をいち早く市場に提供し、現在ではSaaS型統合業務アプリケーションソフトウエアのリーディングプロバイダーとして成長を遂げている(08年第1四半期は前年同期比47%増で、34回連続して四半期ごとの収益増を達成)。「NetSuit」は会計システム、ERP、CRM、Eコマースなどを含む主要な業務アプリケーション機能を、単一のシステムで実現可能な環境で企業に提供しており、SaaS型ソフトであるため、ハードの調達、ライセンス料金の一括支払い、複雑な設定などがすべて不要となる。

 日本法人のネットスイート(東京都港区赤坂1-11-28、松島 努社長)は06年4月に設立され、日本市場での活動を開始している。08年5月には、国内の中堅・中小企業市場(SME市場)向けに販売を強化するため、大手情報処理サービス企業のアイネット(横浜市西区みなとみらい3-3-1、梶本繁昌社長、資本金32億300万円)と販売提携し、日本市場での本格的販売を開始した。現在、「NetSuite」が今後日本でどこまで市場を拡大できるのかに注目が集まっている。ここではネットスイートのマーケティング本部の内野部長に以下の質問を行い、その結果次のような回答が寄せられたので掲載する。

 質問① 「NETSUITE」は①CRM②ERP③BI④Eコマースを統合した業務アプリケーションソフトということですが、基盤となるソフトはこの4つのうちどれですか。
 
 内野部長 弊社のNetSuiteは、単一の統合データベース上で実装された統合業務アプリケーションです。また、統合のデータベースでフロントエンドからバックエンドまで、ビジネスプロセスを統合した製品です。こちら(http://www.netsuite.co.jp/portal/jp/products/index.html)をご覧いただければと思います。CRM/EC/ERPのシステムで、スナップショットをBIでダッシュボード上から役割ごとに必要な情報を引き出し、加工しレポートすることが可能です。一つ一つのトランザクションは、統合化されているところが弊社のもっとも大きな特徴といえるでしょう。

 質問② 「NETSUITE」はすべてSaaSで提供されているのですか。パッケージソフトでの提供はないのですか。

 内野部長 SaaSで提供されます。1998年の企業設立以来、SaaSで提供しております

 質問③ 開発プラットフォーム「NS―BOS」はユーザーにどのようなメリットをもたらしますか。

 内野部長 各ソフトウェアを展開するISVは、NetSuiteの基幹アプリケーション機能上に構築されたNS-BOSによって、短期間に市場投入することが可能になります。NS-BOSにより、あらゆる垂直型アプリケーションが、NetSuiteのERP / CRM / 電子商取引機能などのビジネス機能と連携し、これらの機能を活用できるようになり、開発者は見積もりや注文管理などの「水平型機能」ではなく、垂直型機能の差別化要素に集中することができるようになります。結果として、エンドユーザは、SaaS上で展開される細業種向けソリューションを、自社に構築運用することなく、サービスとしてのソフトウェアとしてご利用することが出来ます。


◇企業システム◇フランスベッドMSが仮想化ソフト+ブレードサーバーを採用し約40%のコスト削減に成功

2008-07-04 10:38:21 | ユーザー

 【ユーザー】大手SI企業のTISは、フランスベッドメディカルサービス(FBMS)の基幹業務システムを、最新の仮想化技術であるVMware社の仮想化ソフトウエア「VMware Infrastructure3」とブレードサーバーを活用し、これまで13台あった既存のサーバーを4台に統合した。従来の後継機種への置き換えで移行を実施した場合と比べて、移行作業・再構築などの初期コストを約40%削減し、新システムを構築することに成功した。(08年6月24日発表)

 【コメント】現在、多くのユーザーの関心を集めているのが仮想化ソフトである。これは各企業とも、従来のメインフレームによる一極集中の反発から、各部門に独自にサーバーを設置し、小回りの利くシステム構築を進めた結果、数多くのサーバーを社内に抱える結果となってしまったためである。あまりにサーバーが多いいとサポートが大変なことになるし、システム再構築の際、多くの労力を注ぎ込まねばならなくなってしまう。そこで仮想化ソフトとブレードサーバーを活用し、サーバー数の削減に手を付けようとしているのが現状だ。

 既に多くの企業が仮想化ソフトを提供しているが、VMwareが業界での知名度ではトップをいく。最近ではマイクロソフトが参入してきたし、オラクル、さらにはシトリックスがXenを買収しOSSの仮想化ソフトとして今後どこまで市場を伸ばせるかも注目される。実はVMwareもストーレージの大手ベンダーであるEMCに買収され、今ではEMC傘下の仮想化ソフトベンダーとして活動している。ただ、このことを強調することはしない戦略らしく、VMwareのホームページを見てもEMCの文字は見えない。マイクロソフトまで仮想化ソフト市場に参入してくる現在、VMwareがEMC傘下に入ったことは経営基盤の強化という面からは評価できるのかもしれない。

 今回のTISのFBMSへの仮想化ソフト+ブレードサーバーによるシステム再構築の発表で注目されるのは、13台あったサーバーを4台に削減し、後継サーバーへの移行に比べ約40%初期コストを削減できたと、具体的数字で表した点だ。仮想化ソフト+ブレードサーバー導入については、これまで技術的な成果はいろいろと言われてきたが、コスト面での具体的発表はなく、果してうまくいくのであろうかというのが平均的ユーザーの感覚ではなかったかと思う。今後は続々と仮想化ソフト+ブレードサーバー導入の成果発表がなされるものと期待される。(ESN)


◇企業システム◇サンがオープンソースDBのMySQL社を事業統合

2008-07-02 11:11:08 | システム開発

 【ニュース】サン・マイクロシステムズは、オープンソースDB「MySQL」を事業内容とするMySQL社を7月1日付で吸収合併し、両社の事業を統合した。旧MySQL ABは、新たにサンのソフトウエア部門内に設けられたビジネスユニットとして、サンのオープンソース事業のさらなる発展を目指して活動を開始する。サンはMySQL統合を機に、日本でもオープンソースDBの企業レベルでの利用拡大を図ることにしている。MySQLとサンの革新的なネットワークコンピューティングを高い次元で融合させ、マーケティングおよび販売活動でのさらなる相乗効果を図ることにしている。統合後のビジネスモデルは、原則として従来の販売モデルを継続する。(08年7月1日発表)

 【コメント】米国でのサンとMySQLの統合は08年2月に完了しており、今回の日本での統合はこれを受けて行われたもの。オープンソースソフトウエア(OSS)は、Linuxをはじめとして既に企業システムに導入されていることはご存知のとおり。OSSは導入コストを低く抑えることができる上、一メーカーの囲い込み戦略を回避できるといったメリットのために、徐々に企業システムに浸透し始めている。当初はOSSに対して品質上の問題がクローズアップされたが、最近発表されている調査報告書では「既存のソフトウエアに対しOSSは何ら遜色はなく、ある部分ではむしろ信頼性がある」とするものがほとんどのところまできている。

 品質はクリアできてもOSSは常にソフトウエア特許の問題を抱えている。これに対しては、日米欧のコンピューター関連5社が、Linuxの特許を外部から購入、これを無償で提供する特許管理会社「オープン・インベンション・ネットワーク(CIN)」を設立するなど、現在着々と手が打たれている。また、08年6月には米レッドハットが米ソフト企業2社とOSSソフトでの特許訴訟を和解で決着するなど、OSSの特許問題の前途に光明を見出しつつある。

 こうなるとOSSの課題として残るのはサポートの問題だ。OSSの事業主体は、これまで技術コミュニティか個人がほとんどで、経営基盤が弱体である。将来とも継続してOSSを提供し続けられるのかという不安がよぎる。将来でなく現在のサポートの点での保証が得られなければ、企業ユーザーとしてはOSS導入に二の足を踏まざるを得ない。そこで、大手IT企業は一斉にOSSベンダーの買収に乗り出すことになったわけである。レッドハットがJBossを、シトリックスがXenをそれぞれ買収したが、オープンソースDBについてはサンがMySQLを買収し話題を集めたわけである。大手IT企業がOSSベンダーを買収することによって経営基盤とサポート面の強化とが同時に実現できるようになるわけである。今回のサンとMySQLの事業統合により、今後DB分野で圧倒的シェアを誇るオラクルにMySQLがどこまで肉薄できるかが焦点となってくる。(ESN)