【仮想化】アシスト、日本IBM、日本オラクルの3社は、オラクルのサーバー仮想化製品「Oracle VM」を活用した仮想化およびITインフラ領域において協業する。IBMのサーバー製品「IBM System x」「IBM BladeCenter」やストレージ製品「IBM System Storage」と、オラクルの仮想化製品「Oracle VM」を組み合わせ、機能検証や推奨構成を作成して、検証結果を、ベストプラクティスとして活用できるようにまとめ、ユーザーへのシステム提案活動において活用する。また、オラクル製品とIBM製品とを活用した仮想化技術およびITインフラ導入の普及・促進を目的としたコンソーシアム「アシスト・IBM・オラクル仮想化アライアンス」を7月10日に設立した。年内50社程度に参加企業を拡大させていく。 (08年7月10日発表)
【コメント】仮想化技術は日を経るごとに注目が高まり、これから加速度的に導入ユーザーが増えることが予想されている。今回のアシスト、日本IBM、日本オラクルの3社によるコンソーシアムの結成は、このような背景を基に結成されたもの。3社の中、カギを握っているのは日本オラクルだ。これは仮想化ソフトとして、オラクルの「VM」を採用していることがこのことを物語っている。IBMも独自の仮想化ソフトを持っている。もともと仮想化技術はIBMのメインフレーム上で開発されたもので、IBMこそが仮想化ソフトの本家といえる。今回、このことをかなぐり捨ててでも、オラクルの仮想化ソフトを市場に広めようとしている日本IBMの真意はどこにあるのか。
これは、OSの問題に当てはめてみると分かりやすいかもしれない。PC分野はクライアント、サーバーともにWindowsが市場を独占して、さしものIBMも身動きが取れない状況へ追い込まれたのはご存知のとおり。そこに降って沸いてきたのが、LinuxOSの登場だ。Lnuxは今急速に企業のサーバー用OSとして浸透を見せ始めている。長年Windowsの独占を指を咥えてみてきたIBMとしてはLinuxの登場はWindows反攻のまたとないチャンスとなった。現在に至るまでIBMはLinuxに力を入れ、このことはこれからも変わらないはずだ。一方、仮想化ソフト市場を見てみると現在ストレージ大手EMC傘下に入り経営基盤が強化されたヴイエムウェアがトップシェアを握っているほか、オープンソースのXenをシトリックスが買収し本格普及に乗り出している。マイクロソフトは独自の仮想化ソフトを持っているが、実はシトリックスはマイクロソフトの別働隊としての色合いが濃いソフト企業で、2社は共同してそれぞれの仮想化ソフトの普及を図りつつある。それに加えオラクルが他社を圧倒するDBユーザーをベースに仮想化ソフトを広げようとしている。
このような現在の仮想化ソフト市場動向の中で、さしものIBMも自社の仮想化ソフトを独自に普及させようとしても、ヴイエムウェアを追撃できないか、下手をするとマイクロソフト・シトリックス連合に敗れ去る恐れも現実味を帯びてくる。このようなことから日本IBMは日本オラクルと手を組むことによって、劣勢を一挙に巻き返そうとしたことが、今回のコンソーシアム結成に至った背景といえるのではないか。今回「アシスト・IBM・オラクル仮想化アライアンス」とアライアンス名に社名を入れた。このようなケースはあまり前例がなく、何か、マイクロソフト・シトリックス連合への挑戦状のようにすら感じられる。(ESN)