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◇企業システム◇日本ユニシスと三井物産が次世代物流情報プラットフォームを開発

2008-07-31 11:51:11 | アプリケーション

 【アプリケーション】日本ユニシスと三井物産は、両社で開発した次世代物流情報プラットフォーム・サービス「UNITRA」の運用を開始した。この「UNITRA」は物流現場において「モノ」にふられた固体識別番号をICタグやバーコードなどの自動認識技術を利用して識別し、インターネットを介して「モノ」の移動情報を収集・蓄積するサービス。利用者がインターネットを通じて、どこからでも移動履歴確認や分析ができるプラットフォームをSaaS型のサービスとして提供する。提供機能の第一弾として、パレットやカゴ車、プラスチックコンテナーなどの環境利用型の搬送器具を管理する「RTIマネージャ」を開始した。同サービスは、従量制による課金体系とし、月額40万円(税別)からの利用が可能で、システム導入に比べ1/5程度のコスト削減を実現する。最終的にはICタグと「UNITRA」につながったネットワークを用いて、世界中のあらゆる「モノ」の動きを共有できる社会的なインフラを目指すことにしている。 (08年7月30日発表)

 【コメント】今回両社が共同で開発した「UNITRA」は、SaaSおよびインターネットの機能を最大限生かし、ITの将来動向を見据えたシステムとして注目される。物流業界では従来からリアルタイムで「モノ」の動きを追跡するシステムは開発されてきたが、「UNITRA」はインターネットを使いワールドワイドに対応したことに意義がある。言語も日本語、英語の2か国語を将来拡大させる計画となっている。現在、中国やインドのソフト企業の台頭が目覚しいが、この原因はワールドワイドでの対応が行えるからだ。この点、日本のソフト企業は国内市場に集中しており、このままでは世界から置いてきぼりを食いかねない。ワールドワイドの市場ではインターネットの活用技術がポイントとなる。つまり、最近言われ出し始めてきた“クラウド・コンピューティング”がカギを握ってくる。このほど、米国のHP、ヤフー、インテルの3社はクラウド・コンピューティングの研究のため共同でセンターを構築することを明らかにした。今回の「UNITRA」はクラウド・コンピューティング力が試される絶好の機会ともいえる。

 「UNUTRA」はSaaSで提供されることでも注目される。SaaSはようやく日本でも注目され始めたが、まだまだ実際のユーザーは少ない。かつて日本ではメインフレームを自社内に設置することが一種のステータスシンボルとなり、なかなかアウトソーシングが普及しなかった。ところが現在ではメインフレームのアウトソーシングは当たり前に行われるようになってきた。SaaSでも同じことがいえるであろう。現在は、サーバーぐらいは自社に置きたいという企業が多いが、将来はパソコンだけを社内においてSaaSを利用するのが当たり前のようになろう。そうすることによって、自社にIT要員を確保しなくても済み、いつでも最新のIT機能を使うことができる。問題はコストだ。SaaSは初期コストは自社導入より安いが、3年目、4年目になるとどうしても自社導入より高くなる。しかし、TI要員の人件費やハード、ソフトのレベルアップ費用などを総合的に考えると必ずしも高いとはいえない。将来はSaaS+クラウド・コンピューティング利用が当たり前になり、システムの自社導入が珍しい存在になるかもしれない。(ESN)