開業医の妻のたわごと

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人は足から死ぬ

2011年11月03日 11時56分04秒 | Weblog

うちに届く医療雑誌の表紙のキャッチコピーに「人間は足から死ぬ」(?)という文字が

おどっていた。

どうやら「人間は動かないと、足を動かさないと老化が早まるよ」という内容の論文(エッセイ?)の

題名のようだった。

(スマン。中身は読んでまへん。しかもその雑誌は夫の他の雑誌の中に埋もれてしまった)

 

「動かないと弱る」・・・本当にそうだと思う。

私は検査入院3週間で食っちゃ寝をしていた為、本当に弱った。

大部屋で友達になった癌患者のA子とパジャマのまま、散歩しようとして10分ぐらいで

息切れがした。(A子は基礎体力が有るためかスゴク元気だったが)

 

さて、一昨日(火曜日)、私はまたくたばった。

朝から、いつものように散歩をして、その後朝食をとり洗濯を干して・・・

 

調子が悪い。

ちょっと体調不良なのはいつもの事なのだが、その日は横になっても

眠れず、どうしようもなく体調が悪かったので、夕方5時頃、階下の医院へ行き

ビタミン注射を打ってもらった。

 

私が階下へ行った時

注射をしたり採血をしたりする場所にお年寄りの患者さん(93歳)が座っていた。

 

そのおじいちゃんは体が半分に折れたまま固まっていて(農家の老人にはよくあるが)

洋服の着脱がうまくいかないようで、うちのナースB子さんが着るのを手伝っていた。

 

B子は優しい。杖をついたそのおじいちゃんのズボンのベルトの部分(背中側)をつかみ

「おじいちゃん、立てる?がんばろうね。」と温かい言葉がけをしながら「よいしょ」と

いう感じで立たせカッターシャツをズボンの中に入れ、次にジャケットをうまく着せていた。

(立たせる方法も覚えた私)

 

そのおじいちゃん、靴も綺麗だった。身なりは綺麗で素敵なセカンドバッグを持っていた。

が、うちの処置室から中待合室まで2、3メートルの距離を杖を右手でつきつつ、

セカンドバッグを持ちにくそうにして歩行していた。

バッグを杖と一緒に右手に持ったり、立ち止まって左手に持ち替えたりしながら

10分以上かかって移動した。

(私は彼の動作を見ながら、少し重そうなセカンドバッグを止めて

軽いポシェットか何かにすればいいのになあ、と考えていた)

 

私はナースさんが注射を用意をしてくれている間、彼の動きをずっと見ていて

何だか、涙がこぼれた。

そのおじいちゃんの頑張っている姿に胸が熱くなった。

と同時に人間って、あんなにもがんばって生きて行かなければならないのだろうか、と

思うとつらくなった。

 

頑張ってひとりでできる事は自分でする。

それが老化を少しでも遅らせる最良の方法である。

それは判っている。だからむやみに助けてはいけない。

 

おじいちゃんの姿を目で追っていた私は

彼がどうやって家に帰るのか、どの辺に住んでいるのか知りたくなった。

患者さんの病名やその他諸々の事は守秘義務があるが、だいたいの事は

訊いてもいいだろう。

 

ナースさんに聞いた。

うちから約1kmのところに家族と住んでいて、うちへの往復は

ひとりで電動自動車でやってくるとのこと。

数年前までは腰も、そう曲がっていなくてかなり元気だったのに、少し前にデイケア施設に

時々行かされる(?)ようになってから、動きが極端に悪くなったらしい。

そのおじいちゃんは、何でもできるかぎり自分でやりたいと思う人なのだそうだが。

 

デイケア施設では(施設によって方針は違うと思うが)何もかも至れり尽くせりの事が

多い。

運動(体操)の時間もあるようだが、それ以外の生活では、例えば落とした物は

すぐに拾ってくれる。衣服の着脱は全部やってくれる(介護の程度によると思うが)など

皆が一生懸命世話をしてくれる。

お年寄りは体の自由がきかなくなってきていて何をするのも疲れるからスタッフに

甘えてしまう。やってもらえる事が当たり前だと思っている老人が殆どのようだ。

デイケアに行くと歩行が不自由な人は1日中、車いすに座ったまま。

 

そんな風にして人間は足腰がますます弱くなり老いて行く。

 

うちに来る患者さんで、急激に弱った老人というのは殆どがデイケアなどに

入れられた人だと言う。

もちろん、デイケアが悪いワケではない。

働きに出かける主婦は介護を必要となった人を家に置いて働きには行けないだろう。

介護を必要としている老人と一日中対峙していたら、私なら発狂してしまうかもしれない。

 

だから、デイケアセンターは必要だ。

 

人間は誰でも老いる。

最近、夫と「終の棲家」の話をよくする。

ふたりで老人ホームに入ろうか、という話もあるが、それは止めようということになった。

 

今でも家事ぐらいしか体を動かす事の無い私が「3食、掃除、洗濯付き」の所へ入れば

すぐに動けなくなってしまうだろう。

 

一昨日、ビタミン注射を打ってもらいながら、色んな事を考えた。

口の中がフワ~っとビタミンのニオイで臭くなったが

15分後ぐらいには夕食を作る勇気(元気?笑)がわいてきた。

(その日はお夕食は作れないから、夫と息子に外食してきてと頼もうと思っていたが)

 

その日出会った老人の年齢:93歳までは、まだまだある。

人に頼らないで頑張って生きて行こう。(すでに夫には色々頼っているが)

散歩がつらくなる日もあるが、自分の為に家族の為に、毎日歩こう。

 

火曜日、くたばりかけていた私ではあるが、93歳の老爺から色々学んだ日だった。

 

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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2011-11-05 19:09:47
えりりんちゃん♪ 体長はその後如何ですか。アップダウンがあるとは思いますが、順調に回復しているんですよね。お元気になっていることを願っています。ご無理のないように少しずつ・・・ね。

さてタイトルにあるように、人間は歩けなくなると弱るということ、私も父を見ていて実感しました。

父は家で独り暮らしをしていた頃は、ヨタヨタしながらもヘルパーさんの助けを借りて、家の用事を何とかこなしていたのですが、転んで車椅子に乗せられてからは急速に歩けなくなりました。

歩けなくなると家で独り暮らしはできないので、施設に入所となりましたが、危ないという理由で杖を取り上げられてしまい、車椅子オンリーになって、ますます脚が弱っていきました。

時間がかかっても、どんなにヨロヨロでも、自分の脚で立ち、歩くというのは、とても大切だと思いました。

でも父の場合は諸般の事情で仕方がなかったと思っています。施設の方にも良くしてもらいましたし、私が全部面倒をみることも叶わなかったので。
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Unknown様へ (えりりん)
2011-11-06 00:10:43
私の健康状態を気遣ったくれて有り難うございます。(*^_^*)
徐々に回復しているのですが、時々、とても悪くなったりで・・・困ったものです。

お父様が大変だったんですね。
人間最後は誰かの手をかりなくてはならないとは思いますが、私もなるべく人に迷惑をかけないようにと努力したいと思っています。

Unknown様、コメ有り難うございました。

ところで、Unknown様、だあれ?
よければ教えてくださいませ。m(__)m
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うっかり (plum)
2011-11-06 11:23:04
上のコメントをしたのはwell-known(?)の私です。(~_~;)

やはり人は楽な方に行きがちですが、自分でやろうと思わないと、能力が落ちて行ってしまうんでしょうね。

父ですが、遺品を受け取りに施設に行った時、「○○さんはとても自立心が強い方で、何でも自分でやろうとなさっていました。」と言われたんですよ。早く家に帰って元の生活に戻りたいと思っていたんだなぁと、切なくなりました。
返信する
plumちゃんへ (えりりん)
2011-11-06 19:21:26
うふうふ、うっかりさんはplumちゃんでしたか。ちょっとそうかな・・・とは思ったのですが、このブログを仲良しの口の固い友人、数人に読んでもらっているので、そのうちの誰かか、あるいは通りすがりの人(?笑)かしら?と思いました。
友人の中のひとりはブログの作り方を教えてくれた元システムエンジニア(女性です)。
もうひとりは英語とPCの先生。このふたりにはブログの事を教わったので隠すワケにはいきまへんでした。
plumちゃんみたいに自分でできる人はスゴイと思います。

plumちゃんが、お母様とお父様の事で心を痛めておられたのは存知あげていたので、上記のような「よそよそしい?リコメ」は書かなかったのですが、unknownの方となると・・・へへへ、特に真面目になってしまいます。

誰もが辿る道ですが、親の事、そして自分の老い先を考えるとつらくなりますね。
plumちゃんは御両親に精一杯尽くされたと思いますよ。(^^)
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