縁起笑店

縁起の道も招き猫から
陶芸家猫社長のつれづれコラム
横浜の縁起村から伊豆の満腹村に移住

さよならバロン

2013-01-29 | Weblog
バロンは雄の大きくておとなしい雑種の老犬だ。
バロンの犬小屋は道路に面している。
ピノコとの散歩の途中で時々フェンス越しにパンやドックフードをあげていたら
猫社長の顔を覚えてじっとじっとみつめるようになった。
餌くれ、そう言っているのだ。
「ないない、今日は何にもない」と手の平をみせて
通り過ぎて振り返るといつまでも猫社長を恨めしげに見ていた。
そんなバロンは夏頃からいつも寝ていることが多くなった。
猫社長が近寄って声を掛けても頭をちょんちょんしても起きないことがあった。
それでも食べ物だと気がつくとよろよろと立ち上がってくれた。
食欲だけは猛烈だった。
今年の冬はことのほか寒さが厳しい。
バロンは無事だろうか、もしかしたらこの寒さに耐えられないのでは、
そう思うと意識的にバロンの前をよけていた。
避けてばかりいても拉致があかない。そう思い久しぶりに小屋の前を通った。
バロンの犬小屋は無くなっていた。
ああ、そうかやっぱり。しばらくバロンを避けていたことを後悔した。
会いたいときにあなたはいない。
うなだれて小屋のあった所から庭の方へ目線を移した。すると、
あれ?
土を盛ったこんもりとした小山があった。
小山の上には萎れた花束が置かれていた。
えーっ、うそ~、
どうやらバロンは庭に土葬されたみたいだ。
バロンはあそこで微生物に分解され骨になる。
今日、バロンのいた家の前を通った。
盛り土の下にバロンが眠っている。
バロンがまだいるような気がした。