ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

直腸子宮内膜症は切除しなくてもよいのか?

2006-02-22 | 子宮内膜症
骨盤痛に関しては直腸の子宮内膜症病巣は残ったままでもよいという意見も少なくない。実際のところどうなのだろう?

まずは骨盤痛について考えてみる。子宮内膜症があるとなぜ痛いのか?

1.仙骨子宮靭帯の病巣
Chapronのグループの報告では、深部病巣の局在を検討したところ仙骨子宮靭帯が約60%、膣20%弱、膀胱10%、腸管10%強となっていたとのことだ。これはフランスの報告なので、日本人のものとは若干異なると思う。(日本人では膀胱や尿管の子宮内膜症は少ないが直腸は多め。)しかしながら仙骨子宮靭帯に深部病巣がみとめられることが多いのは、日本も海外も同じようだ。

仙骨子宮靭帯やその周囲には骨盤神経叢が走っており、子宮の知覚神経も当然その中にある。そんなところに子宮内膜症病巣があって毎月のように病巣で出血や炎症を起こせば・・・

そりゃ、当然痛いですわぁ・・・

月経痛に対しては仙骨子宮靭帯切断(LUNA)という術式もある。しかし、子宮内膜症の骨盤痛に対しては有効性が証明されていない。仙骨子宮靭帯に病巣があるのなら切除しない限り痛いはずだ。現在、私はLUNAをしていないが、過去の経験では子宮内膜症がある場合、約半数にはあまり効果がなかった。LUNAはあまり意味がない。

それじゃ、仙骨子宮靭帯病巣はどうするのか?当然、病巣は切除しなければならない。病巣を十分切除しなければ痛みも十分とれない。仙骨子宮靭帯の病巣は排便痛や性交痛とも強く関連しているので、ここの病巣を十分切除するのは大事だ。

病巣を切除しているときに骨盤神経叢も部分的に切除しているのがわかることがある。男性だったら大変なことだが(うっ、性機能が・・・)、女性の場合問題はない。病巣が非常に深く、広汎な切除を必要とする場合には一次的に尿閉になることがあkるが、子宮癌に対する広汎子宮全摘術に比べれば軽度なものである。

ときどき、”靭帯”を切除してしまっていいのでしょうか?"と聞かれることがあります。仙骨子宮靭帯は子宮を支えている靱帯だから、子宮脱になることは・・・ありえる。

一昨年のマレーシアにおけるISGE(国際婦人科内視鏡学会)でHarry Reichの講演中に質問が出た。「脱にならないのか?」

Reichは「子宮内膜症は脱にはならない。決してなることはない」と答えていた。詳細は覚えていないが、私もかなりラジカルな子宮内膜症切除をしても性器脱を経験したことはない。おそらく子宮内膜症では直腸腟中隔や基靭帯(子宮動脈や静脈の付近)で、ある程度繊維化が起こっていて性器が下がりにくいのだろう。

話が脱線してしまった。

私は仙骨子宮靭帯の病巣をできるだけ切除すれば、骨盤痛の6~7割は解決すると思う。それじゃ、直腸の病巣はそのままでいいじゃないかって?

重症例ではダグラス窩が閉鎖して、仙骨子宮靭帯と直腸は強く癒着している。どこから仙骨子宮靭帯でどこからが直腸かわかりにくく、癒着を剥離している途中で仙骨子宮靭帯や骨盤神経叢の一部が直腸側に残ってしまうこともある。そうなると遅かれ早かれ骨盤痛は再発してしまうだろう。できるだけ病巣を切除しようとすると直腸の表面を削らなければならない。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 私だけ?(2) | トップ | 直腸子宮内膜症は切除しなく... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

子宮内膜症」カテゴリの最新記事