特殊相対性理論・電磁気学・数学

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複素数a,bに関する不等式 |(|a|-|b|)/(1-|ab|)|≦|(a-b)/(1-a*b)

2019-03-03 17:24:51 | 不等式

1.はじめに

 複素数a,bについて、|a|≦1,|b|≦1 としたとき、
  |(|a|-|b|)/(1-|ab|)|≦|(a-b)/(1-a*b)|・・・・①
 を証明せよという問題があった。ここで、「*」は複素共役であり、当然、
  |ab|≠1 かつ a*b≠1・・・・②
 とする。

2.計算

 z,w を複素数とすると |z|≦|w|⇔|z|²≦|w|² ・・・③
 である( |w|²-|z|²=(|w|+|z|)(|w|-|z|) だから)。

 a=(a₁,a₂) , b=(b₁,b₂) とすると
  (|a|-|b|)²=|a|²+|b|²-2|ab|,  (1-|ab|)²=1+|ab|²-2|ab|

 |z|²=zz* を使って
  |a-b|²=(a-b)(a-b)*=(a-b)(a*-b*)=|a|²+|b|²-(ab*+a*b) = |a|²+|b|²-2(a₁b₁+a₂b₂)
  |1-a*b|²=(1-a*b)(1-a*b)*=(1-a*b)(1-ab*) = 1+|ab|²-(ab*+a*b)=1+|ab|²-2(a₁b₁+a₂b₂)
 ③より、①を2乗して、上の結果を使うと
 (|a|²+|b|²-2|ab|)/(1+|ab|²-2|ab|) ≦ {|a|²+|b|²-2(a₁b₁+a₂b₂)}/{1+|ab|²-2(a₁b₁+a₂b₂)}
     ・・・・④
 を証明すればよい。

 ここで、x,y,u,v を実数として
  x=|a|²+|b|², y=1+|ab|², u=2|ab|, v=2(a₁b₁+a₂b₂)
 とおくと④は
  (x-u)/(y-u)≦(x-v)/(y-v)・・・・⑤
 となる。元の計算から。⑤の各項は元々、実数の2乗だから、0以上の数であり、(x-u),(x-v)≧0
 となり、また、②から、(y-u),(y-v)>0 となる。だから、⑤の分母を払って、移項計算すると
  (y-x)(u-v)≧0・・・⑥
 となり、これを証明すればよい。まず、

  y-x=1+|ab|²-(|a|²+|b|²)=(1-|a|²)(1-|b|²)≧0
 である。ここで、|a|,|b|≦1 を使った。つぎに

  u=2|ab|=2√{(a₁²+a₂²)(b₁²+b₂²)} , v=2(a₁b₁+a₂b₂)

 だから、シュワルツの不等式によって
  u≧v つまり、u-v≧0・・・・⑦

 となって、⑥が証明された。後は逆順に辿ると⑤、④、そして③を使って、①が証明された。

3. 補足

 なお、与式の等号成立は⑦から u=v となり、この式を展開するとシュワルツの不等式の条件から、
 a=tb (tは0以上の任意の実数)の時、あるいは⑥の y=x のとき、つまり、 |a|=1 または |b|=1
 の時(つまり、a₁²+a₂²=1 または b₁²+b₂²=1 )である。

 さらに、①において、右辺分母の (1-a*b) は (1-ab*) でもよい。
 さらに、当然、②は
  (a₁²+a₂²)(b₁²+b₂²)≠1 かつ (a₁b₁+a₂b₂≠1 または a₁b₂≠a₂b₁)
 となる。

以上



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