特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

a²+b²=c² を満たす、ピタゴラス数の性質について

2019-10-29 17:38:38 | 算数

1. まえがき

 a²+b²=c² を満たす自然数(ピタゴラス数)の性質について、次のような面白い問題があった。
 検索にかかるのでよく知られた問題のようです。なお、この式はa,bに対して対称なので、a,bを
 入替えても変わらない。


 (1) a,b の内、一方が奇数で他方が偶数である。したがって、cは奇数となる。
 (2) a,b の内、いずれか1つのみ3の倍数で、cは3の倍数ではない。
 (3) a,b の内、いずれか1つのみ4の倍数で、cは4の倍数ではない。
 (4) a,b,c の内、いずれかは5の倍数

2. 計算

 データとして
  (3,4,5), (5,12,13), (8,15,17), (7,24,25), (20,21,29), (9,40,41), (12,35,37)
  (11,60,61), (28,45,53), (33,56,65), (16,63,65)
 などがあり、上の命題は満たされている。

3. 証明

 (1) 準備
  (奇数)²⇔奇数、(偶数)²⇔偶数 という事実は簡単にわかる。このような問題の定石として、
  a,b,cは既約とします。


  まず、a,bともに偶数なら、上のことから、cも偶数なので、2で割れ、既約という条件に反
  し、a,bのいずれかは奇数となります。しかし、a,b共に奇数という可能性が残っている。


  a,bともに奇数なら、cは偶数になる。そこで、自然数x,y,zを使って、a=2x+1, b=2y+1,
  c=2z となる。すると


    4(x²+x+y²+y)+2=4z² → 2(x²+x+y²+y)+1=2z²
  となり、左辺は奇数、右辺は偶数で矛盾。

  ゆえに、可能性としては、a,bは偶数と奇数の組でcは奇数。

 (2) 3の倍数を基準にすると任意の自然数nは
    n=3k, 3k±1
  と表される。すると、
    n²=3(3k²), 3(3k²±2k)+1
  となり、 n²を3で割ると余りは 0,1 で、nが3の倍数でなければ、n²の余りは「1」のみで
  ある。


  したがって、a,bが共に3の倍数でないと仮定すると、a²,b² の余りは、共に1で、その和
  の余りは2となるが、c²の3の余りは、0,1のみだから矛盾。


  さらに、a,bが共に3の倍数ならa²+b²もc²も9の倍数になり、cは3の倍数になるが、a,b,c
  は既約という設定に矛盾する。

  ゆえに、a,bの1つのみが3の倍数であれば、a²+b²のあまりは1で、cが3の倍数でなけれ
  ばc²の余りも1となって、命題が成立。


 (3) (1)から
    a=2k, b=2m+1, c=2l+1
  と表せる。すると
    a²=c²-b² → 4k²=4m(m+1)-4l(l+1) → k²=m(m+1)-l(l+1)
  となる。つまり、m(m+1)などは偶数だからk²は偶数、したがって、kも偶数。すると
  a=2kは4の倍数となる。当然、b,cは奇数で4の倍数ではない。

 (4) 5の倍数を基準にすると任意の自然数nは
    n=5k, 5k±1, 5k±2
  と表される。すると、
    n²=5(5k²), 5(5k²±2k)+1, 5(5k²±4k)+4
  となり、n² を5で割ると余りは 0,1,4 で、nが5の倍数でなければ、余りは「1,4」のみで
  ある。


  したがって、a,b,c がすべて5の倍数でないとすると、a²,b²の5の余りは共に「1,4」で、
  a²+b²の余りは「0,2,3」となるが、c²の余りは、「1,4」のみだから矛盾。


  ゆえに、a,b,cのいずれかは5の倍数。

4. あとがき

 以上のことは、あちこちに載っているので周知の事実らしい。なお、ピタゴラス数はつぎの
 一般解が知られている。

   (m²-n²)²+(2mn)²=(m²+n²)²・・・・・・・・(4.1)
 これを証明する。ここでの注意は、既約と1項の(1)から、m,nの内、一方は偶数、他方は奇
 数である。


 上の結果からa,cを奇数、bを偶数として議論しても良い。
   b²=c²-a²=(c+a)(c-a)=4{(c+a)/2}{(c-a)/2}・・・・・・(4.2)
 となる。ここで、(c+a), (c-a) は偶数となるから、このように変形した。このとき、
 (c+a)/2, (c-a)/2 が共通因子dを持つと仮定すると、それらの和と差も共通因子dを持つが
   (c+a)/2+(c-a)/=c , (c+a)/2-(c-a)/2=a
 となり、a,cは既約で共通因子を持たないから、矛盾。結局、これらは共通因子をもたない。

 したがって、(4.2)の右辺が平方数になるには (c+a)/2=m², (c-a)/2=n² となる必要が
 ある。すると
   b=√[4{(c+a)/2}{(c-a)/2}]=2mn, a=m²-n², c=m²+n² 
 となり、(4.1)を得る。

以上

[2023/11/10] (2),(3)の命題の拡張と(3)の誤りを他のサイトの方法に訂正。



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