1. まえがき
電磁界の内、電界が正弦波変化するときの電子の運動を求める問題があった。
E,Bを定数として、
電界 E=<0, -Esinωt, 0>、磁界 B=<0, 0, -B>
となる電磁界があるとき、v, r を電子の速度、座標として初期条件
v(0)=0 , r(0)=0
の時の、電子の運動を求めよ。
2. 計算
運動方程式は、よく知られたように
mv'=-e(E+v×B)
となり、
ve=E/B、Ω=eB/m、eE/m=veΩ
とすると成分に分けると
vx'=Ωvy ・・・・・・・・・・・・・①
vy'=-Ωvx+veΩ sinωt=-Ω(vx-ve sinωt) ・・・・・・②
vz'=0 ・・・・・・・③
となる。すると①②から
vx''=Ωvy'=-Ω2(vx-ve sinωt) ・・・・・・④
vy''=-Ω(vx'-ωvecosωt)=-(Ω2vy-ωΩvecosωt) ・・・・・⑤
3. Ω≠ω のとき
④を微分演算子で書くと
(D2+Ω2)vx=Ω2ve sinωt
この式の斉次式の一般解はよく知られたように
vx=AcosΩt+CsinΩt
また特殊解は公式から
vx=Ω2ve{1/(D2+Ω2)} sinωt=Ω2ve{1/(Ω2-ω2)} sinωt ・・・・・⑥
したがって、非斉次式の一般解は
vx=AcosΩt+CsinΩt+{Ω2ve/(Ω2-ω2)}sinωt
vx(0)=0 から 0=A となり
vx=CsinΩt+{Ω2ve/(Ω2-ω2)}sinωt ・・・・⑦
となる。
同様に⑤を微分演算子で書くと
(D2+Ω2)vy=ωΩvecosωt
この式の斉次式の一般解は
vy=DcosΩt+FsinΩt
この特殊解は公式から
vy=ωΩve{1/(D2+Ω2)}cosωt={ωΩve/(Ω2-ω2)}cosωt
したがって、非斉次式の一般解は
vy=FcosΩt+GsinΩt+{ωΩve/(Ω2-ω2)}cosωt
vy(0)=0 から
0=F+{ωΩve/(Ω2-ω2)}
となり
vy=-{ωΩve/(Ω2-ω2)}cosΩt+GsinΩt+{ωΩve/(Ω2-ω2)}cosωt ・・・・⑧
となる。
⑦⑧を①に入れると
CΩcosΩt+{Ω2ωve/(Ω2-ω2)}cosωt=Ω[ -{ωΩve/(Ω2-ω2)}cosΩt+GsinΩt+{ωΩve/(Ω2-ω2)}cosωt ]
→ CcosΩt=-{ωΩve/(Ω2-ω2)}cosΩt+GsinΩt
この恒等式が成立するには
C=-ωΩve/(Ω2-ω2) , G=0
となればよい。
つまり、⑦⑧は
vx=-{ωΩve/(Ω2-ω2)}sinΩt+{Ω2ve/(Ω2-ω2)}sinωt
={ωΩve/(Ω2-ω2)}(-sinΩt+(Ω/ω)sinωt)・・・・⑨
vy={ωΩve/(Ω2-ω2)}(-cosΩt+cosωt) ・・・⑩
となる。
⑨⑩を積分すると
x={ωΩve/(Ω2-ω2)}{(1/Ω)cosΩt-(Ω/ω2)cosωt}+H
={Ωve/(Ω2-ω2)}{(ω/Ω)cosΩt-(Ω/ω)cosωt}+H
y={ωΩve/(Ω2-ω2)}{-(1/Ω)sinΩt+(1/ω)sinωt}+K
x(0)=y(0)=0 から
0={Ωve/(Ω2-ω2)}{(ω/Ω)-(Ω/ω)}+H → H=-{Ωve/(Ω2-ω2)}{(ω/Ω)-(Ω/ω)}
0=K
したがって、非斉次式の一般解は
x={Ωve/(Ω2-ω2)}{(ω/Ω)cosΩt-(Ω/ω)cosωt}-{Ωve/(Ω2-ω2)}{(ω/Ω)-(Ω/ω)}
={Ωve/(Ω2-ω2)}{(ω/Ω)cosΩt-(Ω/ω)cosωt-(ω/Ω)+(Ω/ω)}
={Ωve/(Ω2-ω2)}{-(ω/Ω)(1-cosΩt)+(Ω/ω)(1-cosωt)}
=2{Ωve/(Ω2-ω2)}{-(ω/Ω)sin2(Ωt/2)+(Ω/ω)sin2(ωt/2)}
y={ωΩve/(Ω2-ω2)}{-(1/Ω)sinΩt+(1/ω)sinωt}
={Ωve/(Ω2-ω2)}{-(ω/Ω)sinΩt+sinωt}
なお、vz=0, z=0 は自明(下記でも同じ)。
4. Ω=ω のとき
非斉次式の特殊解は
vx={1/(D2+ω2)}ω2vesinωt、vy={1/(D2+ω2)}ω2vecosωt
公式から
vx=-(ωve/2)t cosωt=-(ve/2)ωt cosωt
vy=(ωve/2)t sinωt=(ve/2)ωt sinωt
斉次式の一般解を含め、非斉次式の一般解は
vx=Acosωt+Csinωt-(ve/2)ωt cosωt
vy=Fcosωt+Gsinωt+(ve/2)ωt sinωt
vx(0)=vy(0)=0 から
0=A , 0=F
したがって
vx=Csinωt-(ve/2)ωt cosωt
vy=Gsinωt+(ve/2)ωt sinωt
同様に、これらを①に入れて
Cωcosωt-(ve/2)(ωcosωt-ω2t sinωt)=ω[Gsinωt+(ve/2)ωt sinωt]
→ Ccosωt-(ve/2)(cosωt)=Gsinωt
この恒等式が成立するには
C-(ve/2)=0 , G=0 → C=(ve/2) , G=0
したがって
vx=(ve/2)(sinωt-ωt cosωt)
vy=(ve/2)ωt sinωt
をえる。
積分して
x=(ve/2ω){-2cosωt-ωt sinωt}+L
y=(ve/2ω)(-ωt cosωt+sinωt)+M
x(0)=y(0)=0 だから
0=(ve/2ω){-2}+L → L=ve/ω
0=0+M → M=0
したがって
x=(ve/2ω){-2cosωt-ωt sinωt}+ve/ω=(ve/2ω){2(1-cosωt)-ωt sinωt}
=(ve/2ω){4sin2(ωt/2)-ωt sinωt}
y=(ve/2ω)(-ωt cosωt+sinωt)
以上