EG85と、EG86に続いて、今回、新たなタイプの構文の検証をします。以下、見ましょう。
(1)Tom is kind to help Mary. (トムは、メアリーを助けるなんて、親切だね。)
(2)Tom is eager to help Mary. (トムは、メアリーを助けたがっているよ。)
(1)と(2)は、両方とも、OKとなる英語です。(1)は、‘be kind’「~ は親切だ」に、その「判断の根拠」となる意味を示す、副詞用法の‘to’不定詞を付け足したものです。 (EG85、EG86、参照) 一方、(2)は、よく、「‘be eager’+‘to’不定詞」、のカタチで、「しきりに ~ したがっている」、と覚えるように習う構文ですね。
そして、(1)と(2)は、よく見ると、両方とも、その姿カタチは、「‘be’動詞+形容詞+‘to’不定詞」であり、外観上、全く同じ構文であるかのように見えます。そこで、今回は、(2)のような、‘be eager’を述語にするタイプの構文を、見てみたいと思います。
(3)It is kind of Tom to help Mary. (〇) (訳同(1))
(4)It is eager for Tom to help Mary. (×) (訳同(2))
そこで、まず、(1)から(3)への書きかえですが、OKになります。しかし、一方、(2)から(4)への書きかえは、アウトです。このことから、‘be eager’は、‘be kind’ほどには、主語に対する制限が、ゆるくない、と言えます。しかし、そもそも、‘be kind’にしたって、それほど、主語に対する制限が、ゆるいわけではないことは、EG85と、EG86で、見たとおりです。
(5) a. Mary is kind to give a charity concert in the village. (〇)
(メアリーは、その村でチャリティーコンサートをやるなんて、親切だね。)
b. There is kind to be a charity concert in the village. (×)
(その村で、チャリティーコンサートをやるなんて、親切だね。)
(6) a. Mary is likely to give a charity concert in the village. (〇)
(メアリーは、その村で、チャリティーコンサートをやりそうだぞ。)
b. There is likely to be a charity concert in the village. (〇)
(その村で、チャリティーコンサートをやりそうだぞ。)
そこで、確認になりますが、(5a-b)のペアは、「‘be kind’+‘to’不定詞」の構文です。(5a)はOKでも、一方、(5b)はアウトです。それは、主語に対して、一応、意味的な制限があるからで、特に、意味内容をもつとは、考えられないような主語、‘there’構文の‘there’が、主語になったりすることはありません。
しかし、その一方で、(6a-b)のペアは、両方とも、OKになります。(6a)は、(5a)の‘kind’を、‘likely’に取りかえただけです。そして、同様に、(6b)も、(5b)の‘kind’を、‘likely’に取りかえただけです。そこでは、(6a)がOKになるのは、もちろんのこと、‘there’構文の‘there’が、主語になる(6b)までも、OKになります。
つまり、この点、「‘be kind’+‘to’不定詞」の構文は、「‘be likely’+‘to’不定詞」の構文ほどには、主語に対する制限が、ゆるくはない、と言えます。そこで、「‘be eager’+‘to’不定詞」の構文に戻ると、(2)がOKで、(4)がアウトですから、この構文は、「‘be kind’+‘to’不定詞」の構文よりも、主語に対する制限が、きついとは言えます。
しかし、逆に、共通点としては、(1)と(2)を見ると、わかるように、その主語が、‘to’不定詞の部分における、主語の役割も果たしている、ということです。つまり、「2つの述語に対して、1つの主語」、が成り立っています。そこで、今度は、後続する‘to’不定詞の部分を消してみます。
(7)Mary is kind. (〇) (メアリーは親切だね。)
(8)Mary is eager. (×) (メアリーは熱心だね。)
(7)の‘be kind’は、独立した文として、OKになりますが、一方、(8)は、基本的に、アウトです。ここで、注意すべきは、(7)と(8)は、どちらも、学校で習うような、英文法の基本文型としては、「主語+‘be’動詞+形容詞」のカタチで、文法的であり、全く問題なし、であるはずなんですが、確かに、(8)は、独立した文としては、アウトなんです。これは、どうしてなんでしょうか。
普通、「主語+‘be’動詞+形容詞」のカタチは、‘She is beautiful.’「彼女は美しい。」や、‘He is tall.’「彼は背が高い。」、といった類の構文として、扱われるのですが、しかし、どうやら、(8)のような文には、単純に、カタチの上でのみ、文法性を判断してはならない要因が、含まれているように思われます。
(9)Mary is eager in her hobbies. (〇) (メアリーは、趣味に関しては熱心だよ。)
(10)Mary is eager about the job. (〇) (メアリーは、その仕事には意欲的だよ。)
そこで、(9)や(10)のようにすると、‘be eager’の文は、OKになります。(9)と(10)では、‘is eager’「熱心だ、意欲的だ」の後に、いわゆる、その「熱意」や、「意欲」の対象となる表現、‘in her hobbies’「趣味において」や、‘about the job’「その仕事に関して」、を置いてみたわけですね。
このように、‘be eager’という述語が、意味的に要求していると思われる、「対象」の意味になる表現を置くと、OKになり、一方、置かなければ、アウトになる、という事実があると、実は、この‘be eager’という述語の振る舞いには、EG46や、EG81などで検証した、「前提」の概念がはたらいているのではないか、と思われます。 (EG46、EG81、参照)
さらに、(8)がアウトであることからは、(2)における‘to’不定詞、‘to help Mary’も、‘be eager’の前提とする、「対象」となる表現、ということになります。そこで、文の骨格とは、なり得ないような、いわゆる、「副詞的用法」の‘to’不定詞として、(2)の、‘to help Mary’を扱う、つまり、(1)における、‘to help Mary’と、同じステイタスをもつ、というような扱いをするのは、ちょっと、無理があるのではないか、と思われます。 (EG42、参照)
このことは、EG42で、副詞的用法の‘to’不定詞を扱う際に、少しだけ、触れてはいたのですが、やはり、カタチの上から、副詞的な扱いを受ける、‘to’不定詞であっても、そこには、どうやら、まるで、白から黒に向かうプロセスに、グレーゾーンが存在するような、「段階性」、とでも言うべき概念が存在するように思われます。
「前提」の概念は、カタチのみからの判断では、把握しきれない文法性に対して、その理解を補強してくれる、重要な概念となるものですが、(7)と(8)のような文法性の違いは、やはり、まず、「前提」の概念が絡んでいる、と見てよいでしょう。
今回のポイントは、‘eager’の構文を、可能な主語、という観点と、その後に続く‘to’不定詞のステイタス、という2つの観点から、考察してみました。そこで、‘eager’の構文は、‘kind’の構文ほどには、その主語に対する制限が、ゆるくない、ということに加えて、‘eager’に後続している‘to’不定詞は、カタチの上では、副詞的用法の‘to’不定詞と言えども、なくてはならない、必須の要素である、という、学校で習うような英文法からは、説明不可能な立場にある表現である、ということを検証しました。
この点については、まだ、もうちょっと、考察すべきポイントがありますが、また別の機会ということで。
●関連: EG42、EG46、EG81、EG85、EG86
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(1)Tom is kind to help Mary. (トムは、メアリーを助けるなんて、親切だね。)
(2)Tom is eager to help Mary. (トムは、メアリーを助けたがっているよ。)
(1)と(2)は、両方とも、OKとなる英語です。(1)は、‘be kind’「~ は親切だ」に、その「判断の根拠」となる意味を示す、副詞用法の‘to’不定詞を付け足したものです。 (EG85、EG86、参照) 一方、(2)は、よく、「‘be eager’+‘to’不定詞」、のカタチで、「しきりに ~ したがっている」、と覚えるように習う構文ですね。
そして、(1)と(2)は、よく見ると、両方とも、その姿カタチは、「‘be’動詞+形容詞+‘to’不定詞」であり、外観上、全く同じ構文であるかのように見えます。そこで、今回は、(2)のような、‘be eager’を述語にするタイプの構文を、見てみたいと思います。
(3)It is kind of Tom to help Mary. (〇) (訳同(1))
(4)It is eager for Tom to help Mary. (×) (訳同(2))
そこで、まず、(1)から(3)への書きかえですが、OKになります。しかし、一方、(2)から(4)への書きかえは、アウトです。このことから、‘be eager’は、‘be kind’ほどには、主語に対する制限が、ゆるくない、と言えます。しかし、そもそも、‘be kind’にしたって、それほど、主語に対する制限が、ゆるいわけではないことは、EG85と、EG86で、見たとおりです。
(5) a. Mary is kind to give a charity concert in the village. (〇)
(メアリーは、その村でチャリティーコンサートをやるなんて、親切だね。)
b. There is kind to be a charity concert in the village. (×)
(その村で、チャリティーコンサートをやるなんて、親切だね。)
(6) a. Mary is likely to give a charity concert in the village. (〇)
(メアリーは、その村で、チャリティーコンサートをやりそうだぞ。)
b. There is likely to be a charity concert in the village. (〇)
(その村で、チャリティーコンサートをやりそうだぞ。)
そこで、確認になりますが、(5a-b)のペアは、「‘be kind’+‘to’不定詞」の構文です。(5a)はOKでも、一方、(5b)はアウトです。それは、主語に対して、一応、意味的な制限があるからで、特に、意味内容をもつとは、考えられないような主語、‘there’構文の‘there’が、主語になったりすることはありません。
しかし、その一方で、(6a-b)のペアは、両方とも、OKになります。(6a)は、(5a)の‘kind’を、‘likely’に取りかえただけです。そして、同様に、(6b)も、(5b)の‘kind’を、‘likely’に取りかえただけです。そこでは、(6a)がOKになるのは、もちろんのこと、‘there’構文の‘there’が、主語になる(6b)までも、OKになります。
つまり、この点、「‘be kind’+‘to’不定詞」の構文は、「‘be likely’+‘to’不定詞」の構文ほどには、主語に対する制限が、ゆるくはない、と言えます。そこで、「‘be eager’+‘to’不定詞」の構文に戻ると、(2)がOKで、(4)がアウトですから、この構文は、「‘be kind’+‘to’不定詞」の構文よりも、主語に対する制限が、きついとは言えます。
しかし、逆に、共通点としては、(1)と(2)を見ると、わかるように、その主語が、‘to’不定詞の部分における、主語の役割も果たしている、ということです。つまり、「2つの述語に対して、1つの主語」、が成り立っています。そこで、今度は、後続する‘to’不定詞の部分を消してみます。
(7)Mary is kind. (〇) (メアリーは親切だね。)
(8)Mary is eager. (×) (メアリーは熱心だね。)
(7)の‘be kind’は、独立した文として、OKになりますが、一方、(8)は、基本的に、アウトです。ここで、注意すべきは、(7)と(8)は、どちらも、学校で習うような、英文法の基本文型としては、「主語+‘be’動詞+形容詞」のカタチで、文法的であり、全く問題なし、であるはずなんですが、確かに、(8)は、独立した文としては、アウトなんです。これは、どうしてなんでしょうか。
普通、「主語+‘be’動詞+形容詞」のカタチは、‘She is beautiful.’「彼女は美しい。」や、‘He is tall.’「彼は背が高い。」、といった類の構文として、扱われるのですが、しかし、どうやら、(8)のような文には、単純に、カタチの上でのみ、文法性を判断してはならない要因が、含まれているように思われます。
(9)Mary is eager in her hobbies. (〇) (メアリーは、趣味に関しては熱心だよ。)
(10)Mary is eager about the job. (〇) (メアリーは、その仕事には意欲的だよ。)
そこで、(9)や(10)のようにすると、‘be eager’の文は、OKになります。(9)と(10)では、‘is eager’「熱心だ、意欲的だ」の後に、いわゆる、その「熱意」や、「意欲」の対象となる表現、‘in her hobbies’「趣味において」や、‘about the job’「その仕事に関して」、を置いてみたわけですね。
このように、‘be eager’という述語が、意味的に要求していると思われる、「対象」の意味になる表現を置くと、OKになり、一方、置かなければ、アウトになる、という事実があると、実は、この‘be eager’という述語の振る舞いには、EG46や、EG81などで検証した、「前提」の概念がはたらいているのではないか、と思われます。 (EG46、EG81、参照)
さらに、(8)がアウトであることからは、(2)における‘to’不定詞、‘to help Mary’も、‘be eager’の前提とする、「対象」となる表現、ということになります。そこで、文の骨格とは、なり得ないような、いわゆる、「副詞的用法」の‘to’不定詞として、(2)の、‘to help Mary’を扱う、つまり、(1)における、‘to help Mary’と、同じステイタスをもつ、というような扱いをするのは、ちょっと、無理があるのではないか、と思われます。 (EG42、参照)
このことは、EG42で、副詞的用法の‘to’不定詞を扱う際に、少しだけ、触れてはいたのですが、やはり、カタチの上から、副詞的な扱いを受ける、‘to’不定詞であっても、そこには、どうやら、まるで、白から黒に向かうプロセスに、グレーゾーンが存在するような、「段階性」、とでも言うべき概念が存在するように思われます。
「前提」の概念は、カタチのみからの判断では、把握しきれない文法性に対して、その理解を補強してくれる、重要な概念となるものですが、(7)と(8)のような文法性の違いは、やはり、まず、「前提」の概念が絡んでいる、と見てよいでしょう。
今回のポイントは、‘eager’の構文を、可能な主語、という観点と、その後に続く‘to’不定詞のステイタス、という2つの観点から、考察してみました。そこで、‘eager’の構文は、‘kind’の構文ほどには、その主語に対する制限が、ゆるくない、ということに加えて、‘eager’に後続している‘to’不定詞は、カタチの上では、副詞的用法の‘to’不定詞と言えども、なくてはならない、必須の要素である、という、学校で習うような英文法からは、説明不可能な立場にある表現である、ということを検証しました。
この点については、まだ、もうちょっと、考察すべきポイントがありますが、また別の機会ということで。
●関連: EG42、EG46、EG81、EG85、EG86
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