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英語脳をつくる!~日本人はいかに効率良く英語を学べるか~

英語学習に関する事いろいろです。日本人がいかにすれば実用英語を身に付けられるか、その最短距離を考察!

英語学習法(84)

2005年05月08日 | 主語
形式主語の‘it’と呼ばれるものを扱います。以下、見ましょう。

(1)John believes the story. (ジョンはその話を信じている。)

(2)John believes [ that Tom loves Mary ]. 
  (ジョンは、[ トムがメアリーを愛していると ] 信じている。)

(1)は、他動詞の‘believe’「~ を信じている」が、目的語の‘the story’「その話」を取っていますが、一方、(2)では、同じく、‘believe’が、‘that’節である、‘that Tom loves Mary’「トムがメアリーを愛している (と)」、を取っています。ここから、‘that Tom loves Mary’は、他動詞‘believe’の目的語としてはたらいている、ということになります。(EG41参照)

(3)The story is believed by John. (その話は、ジョンに信じられている。)

(4) [ That Tom loves Mary ] is believed by John.
  ([ トムがメアリーを愛していると ] ジョンに信じられている。)

能動文である(1)を、受身文にしてみると、当然、(3)になります。能動文から、受身文を生成する条件としては、まず、「目的語」が、主語になる、というカタチの上での制約がありました。(EG35参照) ですので、その約束に従って、同じく、(2)の目的語である、‘that Tom loves Mary’を、主語位置に移動させて、受身文(4)をつくってみたわけですね。

しかし、どうも、受身文(3)とは違って、受身文(4)は、あまり、座りがよくない感じがするそうです。別に、能動文から受身文をつくる際、そのルールを無視したわけではありません。ちゃんと、「目的語」として、認められている‘that’節を、主語位置に移動したわけですからね。そこで、とりあえず、こういった問題を回避するため、以下のようにするのが、通例となっています。

(5) It is believed by John [ that Tom loves Mary ]. (訳同(4))

(5)は、(4)よりも、はるかに座りがよい文なんだそうです。カタチとしては、‘it’を主語に立てた後、‘that’節には、後方にまわってもらう、ということですね。この‘it’は、通常の代名詞の‘it’とは、ちょっと性質が違うものです。

(5)の‘it’は、通常の代名詞‘it’とは違って、何を指すのかは、文脈から選ぶ、といったものではなく、必ず、本来、‘it’が相手にするべき表現が、‘that’節である、というように、予め決まっているという、約束があります。ですので、「‘it ~ that節’の構文」、などとパターン化されて、教わることになっています。

(6) [ That Tom loves Mary ] is predictable.
  ([ トムがメアリーを愛しているなんて ] すぐ予想ついちゃうね。)
(7) It is predictable [ that Tom loves Mary ]. (訳同上)

ところで、「‘it ~ that節’の構文」が、適用される条件は、何も、(4)のような、受身文に限ったことではありません。(6)のような、「‘be’動詞 (is)+形容詞 (predictable)」、の場合にも、(7)のように、適用は可能です。というよりも、どういったカタチが、「‘it ~ that節’の構文」に適用が可能かは、基本的には、あまり、受身文がどう、「‘be’動詞+形容詞」がどう、といった、単純に文法上の問題であるとは、言い切れません。

しかし、やはり、(4)より(5)の方が、座りがよい、と判断されるのと同様に、(6)よりも(7)の方が、座りがよい、といった、共通の判断があります。そこで、こういった問題は、むしろ、英語における、文のスタイル、つまり、文体的バランスの問題、と言ってもよいようなことが、原因であると考えられます。

例えば、(3)と(4)の主語を比較すると、その長さが、やはり、(4)の‘that’節の方が単語の数が多い分だけ、長いですね。そして、その表している内容に関しても、単語の数が多くなった分だけ、情報的な量が、どうしても多くなってしまいます。

そこで、そういった、主語は、述語と比較してみて、どうも重たい感じがするので、何とかして、主語を軽くしようとする意図がはたらくようなのです。つまり、「重いもの」は、後 (つまり、右側) にまわってもらい、その空いた位置には、「軽いもの」 (つまり、‘it’) を置く、といった発想なんですね。

ですので、この、「‘it ~ that節’の構文」は、一見、文法の問題のように見えるんだけれども、その発動のトリガーとなる原因は、実は、あくまでも、その伝達しようとする、「情報量」といった、どちらかと言えば、意味的な要因によるものだ、と言えるのです。ここが、実に、ややこしい問題なんです。

(8)It is impossible for Tom to deceive Mary. (〇)
  (トムがメアリーを騙すことは、不可能だよ。)
(9)To deceive Mary is impossible for Tom. (〇) (訳同上)

ちなみに、(8)のような文は、「‘it ~ (for A) ‘to’不定詞’の構文」、と呼ばれています。そして、この構文における、‘it’のはたらきも、「‘it ~ that節’の構文」の‘it’と、理屈は全く同じです。

そこで、(8)の‘it’は、‘to’不定詞の部分、‘to deceive Mary’「メアリーを騙すこと」、を受けています。そして、この不定詞表現を、主語位置に移動させて、(9)をつくってみます。 (もちろん、‘it’には、退場してもらいます。) そこでは、この移動そのものは、何の問題もなく、OKになりますので、「‘it ~ (for A)‘to’不定詞’の構文」は、‘it’が、不定詞だけを受けることもあるんですね。

(10)For Tom to deceive Mary is impossible. (訳同(8))

今度は、(8)から、‘for Tom to deceive Mary’を移動させました。 (もちろん、ここでも、‘it’には、退場してもらいます。) ‘for Tom to deceive Mary’の部分は、 ‘For Tom’が、主語で、‘to deceive Mary’が、その述語の役割をもっていますので、「‘for’ ~ ‘to’不定詞’」全体で、あたかも、1つの文であるかのような、意味的なまとまりを成している、と言えます。 (EG43参照)

そして、(10)は、一般的には、OKである、と判断されます。しかし、座りがよい文であるかどうかを判断させると、どうも、座りがよい、とは言えないらしいのです。そこで、(8)と(10)を比較してみると、(8)の方が、しっくりくる感じがする、つまり、座りがよい、と判断されます。

では、(9)はどうか、と問われると、それほど、座りが悪いとは思われない、と判断されます。このことから、主語の側に位置する情報量と、述語の側に位置する情報量とのバランスが、座りの「良い・悪い」を決定しているのではないか、と推測されます。

つまり、(8)は、主語が‘it’のみで、一方、述語は、‘is impossible for Tom to deceive Mary’と、圧倒的に、述語側に情報量があります。しかし、一方、(10)は、主語が、‘for Tom to deceive Mary’で、一方、述語が、‘is impossible’のみ、ということで、(8)とは、大きく異なり、圧倒的に、主語の側に情報量があります。

そこで、もちろん、(9)は、(8)と(10)の中間を占めており、主語の側が、‘to deceive Mary’で、一方、述語の側が、‘is impossible for Tom’となっているので、比較の問題上、当然、(8)よりは座りがよいとは言えないが、(10)に比べたら、全然マシである、と言えます。

今回のポイントは、学校でよく教わる、形式主語の‘it’と呼ばれるものの基本と、その機能です。カタチの上では、まさにその名の通り、形式的に主語を置いただけであり、実質的な主語は、後方にまわされた‘that’節や、‘to’不定詞である、ということに異論はないわけですが、その本質的な役割は、ただ単に、主語位置の交代と言うにとどまりません。

カタチの上での文法の問題とは別に、伝達される「情報」、と言った意味的な問題からも、本来、語られるべき構文なのです。そして、こういった、「情報」を処理する上での、コトバの問題の本質は、EC26と、EC27で述べた、「文法」の問題と、「知覚」の問題といった、2つの異なる要因の中では、後者である「知覚」の問題に属するものなのです。

そのような観点で述べる限り、今回扱った、「情報量」が及ぼす、文法上のカタチの変化は、まだまだ、言わなければならないことがありますので、これに関しては、ひとまず、別の機会ということに。

■注1 :「形式主語‘it’」は、「仮主語‘it’」、とも呼ばれています。ですので、後方にまわった、‘that’節や、‘to’不定詞は、これに対応する呼び方で、「真主語」などと、呼ばれます。

■注2 :(8)のような、「‘it ~ (for A) to不定詞’の構文」は、その‘to’不定詞が、いわば、「名詞(的)用法」です。ですので、本来、名詞表現がくる主語位置に、現れることが可能なんですね。

■注3 :(8)における、‘for Tom’は、「トムが」、という解釈と、「トムにとって」、という解釈の、両方がありますが、(9)では、「トムにとって」、という解釈しかなく、一方、(10)では、「トムが」、という解釈しかありません。これに関する議論は、EG43を参照して下さい。


●関連: EG35EG41EG43EC26EC27

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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英語脳関連で参りました。 (松崎博(L&R英語大学))
2005-05-15 15:15:46
はじめまして。偶然私も「英語脳を創るlisten and repeat」なる本をナツメ社より出しており「英語脳」で参りました。「L&R英語大学」の松崎博と申します。本職も大学の英語教師です。日夜英語修行に励まれている皆さんにぜひ我がブログ大学にもご参加(入学)いただき、相互の交流が出来ればとブログさせていただいております。http://blogs.yahoo.co.jp/listen_and_repeat2000/
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こちらこそ、初めまして (「英語脳をつくる!」 emptycategory)
2005-05-15 23:24:32
あはは、「英語脳」ってたくさんあるんですね。自分も何となく、「英語脳」ってコトバをたくさん耳にしていたんですが、どうやら、巷では、英語に慣れる耳をつくる(聴解力)、英語を自然習得する(ネイティヴと同じ言語習得)と言った感じで流行っていたのを、最近になって知りました。今考えてみると、自分のやってる「英語脳」は、それらとは、全然違いますね(笑)。ではでは。
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