ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

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敗因と/金子達仁・戸塚啓・木崎伸也

2007-06-28 21:23:13 | 
ワールドカップで日本が屈辱的な予選敗退を喫してから1年余りがたった。
もう去年のあの期待と不安、歓喜と失望が遠い昔の出来事のようだ。
監督はオシムに代わり新しいナショナルチームは今、アジアカップに向けた最後の選手選考を目前に控えている。
ドイツはひとつの記憶として、通過点として多くのサッカーファンの胸に刻まれてしまっているかのようだ。
しかしまた、多くの人たちになぜ日本は勝てなかったのか、どこにボタンの掛け違いがあったのか、
という後悔にも似た思いを残したことも間違いない。
結局日本協会がその理由をきちんと提示できずにいる以上、
歴史の立証を待つしかないのか、そんな思いでいるときに出てきたのが本書だった。
私と同世代か少し下の若きスポーツライターたちによる共著だ。

いわゆる海外組と国内組という括りの中で選手たちは微妙な心理状態に置かれていく。
海外組は合流すれば即レギュラー、国内組は頑張って海外組の留守を支えても彼らが戻ってくればベンチを暖めてしまうことになる。
その微妙な心理のあやは本大会が近づくにつれてほつれだし、やがて瓦解してしまう。

選手を信じていたがために、創造力という最も難しい規律を課したジーコ。
そのために攻撃的にいくのか守備的にいくのかという、基本的な戦術でも二つに割れたチーム。
二重の矛盾と軋轢の中で内なる敵に負けてしまった日本。
それはおよそ国を代表して国際舞台で戦うという事に対してあまりにも幼すぎたと言えなくもない。
数々のインタビューが綴られている本書を読みながらそんなことをつらつらと考えていた。
小学生年代から始まってトップチームに至るまで、
日本人に足りないものが何なのかということがほんの少し透けて見えてくる。

関係者にとってもまだ生々しい記憶だろうし、本当の意味であのワールドカップが何だったのか、
ということが分かるには今しばらく時間がかかるのだろう。
アジアカップはその答えを見つけるための、だから日本のサッカーの将来を見据えるための始めの一歩となる。


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