ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

音楽・本・映画・サッカーなど興味の趣くままに書いていきます。

理由/宮部みゆき

2008-03-04 22:10:59 | 
大ベストセラー作家にして読んだことがなかった宮部みゆき作品。
「火車」が思っていたよりもいまひとつという印象だったので続けて直木賞受賞作の本作を読んでみる。

この作品は水面に広がる波紋を逆に辿っていくような感じである。
事件の核心に向けて一番遠いところから少しずつアプローチしていく、その構成自体に大きな魅力のある作品といっていいかもしれない。
事件はすでに解決し、しばらく経って取材者の視点で事件を振り返るという手法で展開されている。

精緻に丹念に事件の全容を織り込んでいくといった趣が読者をひきつけていく。
多くの登場人物、さまざまな挿話が重層的に絡み合い事件が複雑な人間関係のなかで起こったことを伺わせる。

なるほどこれが宮部みゆきの醍醐味なのだろうと思わせる力強い作品だと思う。
直木賞もうなずけるエンターテインメントだ。
松本清張以来の社会派ミステリーの系譜がしっかりと引き継がれていることを感じさせる作品だと思う。



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