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ローマ人の物語Ⅱ-ハンニバル戦記-/塩野七生

2007-05-08 21:12:35 | 
「ハンニバル戦記」とタイトルにあるとおり、この第2巻ではカルタゴの武将ハンニバルがローマに攻め入った第二次ポエニ戦役を中心に、
紀元前264年から紀元前133年までのローマの戦争の歴史を描いている。
2巻目にして早くもクライマックスを迎えた感のある壮大な戦いの歴史が繰り広げられている。

ハンニバルというアレキサンダー以来の戦術家と、その才を正確に見抜いていたスキピオ。
天才は天才を知るということか。二人の優れた戦術家が繰り広げる覇権争いが緊張感溢れる筆致で描かれている。
「天才とは、その人だけに見える新事実を、見ることのできる人ではない。誰もが見ていながらも重要性に気づかなかった旧事実に、気づく人のことである」
ああ、そうだなあとつくづく思う。

圧巻は、不可能とも思えるアルプスを越えて北からイタリアに侵攻したハンニバルの行軍と、
そのハンニバルを真っ向から迎え撃ったローマ軍とのカンネの会戦である。
戦術に無垢であったローマ軍が初めてハンニバルの狡猾とも思える罠にはまっていく。
そして、それから15年ほど後ハンニバルの戦術的な後継者であるスキピオは数では劣勢の軍勢を率いて、
師匠であるハンニバルとザマであいまみえ、見事にハンニバルを打ち破る。

盛者必衰の理のとおり、カルタゴはもマケドニアも滅ぼされていく。
ローマが生き残れたのはなぜか、それはローマの覇権の基本思想が侵略ではなく緩やかな帝国主義にあったからだという。
勝者が正義なのではなく、勝者ゆえ決して敗者を排除することなく、同化していこうというローマの懐の深さ。
そのある種の寛容さが裏切られたとき、カルタゴもマケドニアも滅びていったのだ。

地中海一の大国となったローマがこの後どういった道のりをたどっていくのか、
次巻が楽しみになってきた。


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