●「割高」とみなされる公務員の労働コスト
「仕事に見合った賃金しかもらえない」時代に、高賃金を要求すると、仕事がもらえなくなる。
これが、現在の日本の公務員にも起きている。
公共サービスの民間委託等により、以前は公務員しかできなかった仕事を、民間がするようになった。
内閣府の調査では、国民の7割以上が、公務員に任せるだけでは不十分で、民間の力を活用した方が良いと考えている。
なぜなら、「公務員の労働コストは割高である」と考えられているからだ。
実際、日本の公務員給与は、OECD加盟国の中でトップクラスである。
国内の民間企業の平均給与と比較しても、15-20%ほど高い。
調理士・保育士・バス運転手といった業種では、民間の1.5倍から2倍もの給与をもらっている。
一時期話題になった「給食のおばさん、年収800万円」とか「市バス運転手、年収1200万円」といったことは、公務員の給与制度(過度な年功重視、お手盛り手当て等)でないと起きない。
年功が重視される余り、課長の給料より係長の方が高くなったりする。
こうした現状が、国民の多くを「公務員の労働コストは割高である」と考えさせている。
●問題は、「よくわからない」不透明さにある
さて、それでは「本当に公務員の労働コストは割高なのだろうか?」
その答えは、「よくわからない」である。
日本の公務員の人数は、OECD加盟国の中でも最下位クラスで、先進国の中ではかなり少ない。
「給与は高いけど、少ない人数でやり繰りしているのだから、労働コストは割高ではない」とも言える。
ところが、天下りや外郭団体など「公務員もどき」「役所もどき」がたくさんあるので、実態がわからないのである。
例えば、公益法人の役員と職員数は100万人を超えており、これだけで国家公務員の3倍ぐらいになる。
公益法人の役員数は全部で50万人ほどで、その半数以上が公務員出身者となっている。
任意の外郭団体については、その実態すら掴めていない。
加えて、源泉徴収制度など、本来は行政がやるべき仕事を、国民にやらせているケースもある。
実は、こうした「よくわからない」不透明さこそ、日本の公務員の首を絞めている。
現在は、「答えが見つからない」「先が見えない」という不安定な社会である。
そうした時代において、「本来は明確であるべきものが不透明で、よくわからない」というのは、ものすごく嫌われるのだ。
●「公務員だから仕事がもらえる」時代の終焉
「公務員だから仕事がもらえる」時代は終わり、「公務員だから仕事がもらえない」時代へと変わりつつある。
公務員全体を覆う「不透明さ」が無くならず、「公務員の労働コストは割高である」と思われる以上、公務員から仕事を取り上げる傾向は、しばらく続くことになる。
「仕事を取り上げられる」順番も、だいたい決まっている。公務員の中でも、下流に位置する人たちから順に「仕事を取り上げられる」のだ。
まず、外郭団体に勤める「公務員もどき」の人たち、ゴミの収集といった現場で作業を行う人たち、地方の出先機関で働く人たちといった流れである。
- 指定者管理制度の導入により、仕事が無くなった地方の外郭団体が解散し、解雇される職員
- ごみ収集や給食業務の民間委託により、配置転換・早期退職・転職する職員
- 地方分権の流れを受けて、廃止の方向にある国の地方出先機関
といった事例が現実としてある。
こうした真っ先に仕事を取り上げられる人たちほど、電子政府によるサービスの向上や業務の効率化に反対する。
仕事が取り上げられるのは、電子政府やコンピュータのせいではないのに、現実が見えていないのだ。「仕事をもらうために何をすれば良いのか」がわからず、逆効果のことをする。
他方、「電子政府を進める人たち」の「仕事を取り上げられる」順番は、最後の方である。
なので、「電子政府を進める人たち」は、「電子政府サービスの邪魔をする」という気持ちは生まれにくい。ただし、「電子政府サービスを本気で良くしよう」という強い意志やインセンティブも少ない。
電子政府評価委員会(2008年度)活動方針
こちらにも「阻害要因」との表現有り。
電子政府、電子自治体の推進での阻害要因を徹底した洗い出しをお願いしたいところです。