開山の天狗(二) 「南紀土俗資料」
2025.4
ある時、五右衛門五右衛門と言う気の強い男がイノシシ狩りに出かけたが、影も見えないが、木の上で笑う声がした。
それで、五右衛門は、「何を小癪な」とすぐに鉄砲を一発、その方へ向けて、ずどんと打った。
その夜更けて、皆の寝静った頃、
「五右衛門 五右衛門 これこの足を治せ。」と言いつつ戸をたたく音がした。
五右衛門は直ぐさま起きて、
「どれ治してやろう。」と鉄砲片手に戸を開けたが、影も形も見えない。
その翌夜も、翌々夜も、そんなことがあった。
後に五右衛門は、ふと足が痛くなり、湯崎(和歌山県白浜温泉)へ入湯に出かけた。
そこに、一人の眉目(みめ)よき僧が来ていたので、
「どこから」と尋ねてみると、
「由良の開山で去年中、村の五右衛門と言う者に足を撃たれた。」
とのことであった。
さすが五右衛門も、にわかに心地が悪くなって、ほうほうの体(てい)で帰村したと言う。
以上、「南紀土俗資料」土俗編、呪詛伝説 より
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