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江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

称名寺前の幽霊  「土佐風俗と伝説」 幽霊と物の怪(もののけ)2

2025-04-25 20:39:07 | 怪談

称名寺前の幽霊  「土佐風俗と伝説」 幽霊と物の怪(もののけ)2

                    2025.4

今は昔、潮江(うしほえ)なる天満宮(高知市天神町)の裏手に、称名寺と言う寺があった(今は報徳学校となっている)。この辺は墓所が多く、人通りが少なく、夜は更に寂しかった。昼間でもなお寂びしい場所であった。

ひと頃、その寺の前に、夜な夜な幽霊が出る、と言う噂があった。
それで、山田某と言う大胆の士は、友人の二人と試しに見に行こう、と出で立った。

夕方、寺の前に至り小川にかかっている橋に腰掛けている内に、時刻も移り夜も森々(しんしん)と更け渡った。何やら橋の下の暗い所に怪しい物が来て化粧する様に見えた。二人は恐しくて、気が動転した。山田は二人に向い、
「先程より、何やらん冷ややかなる手にて、橋の下よりワシの足を捕らえているものがある。」
と言った。
二人は、びっくりして、何も言わずに、先を争そって逃げて行った。

後に山田が唯一人残り、彼の足を捕へたる手を取り川より引上げ見た。すると、白い衣を着ていた女で、髪は打ち乱れて、大変にやつれていた姿であった。
それで、
「その方は。如何なる人で、如何なる故があって来たのか?」と問うた。
 怪しい女は、答えて、
「この近き辺りの豆腐屋の何某(なにがし)の妻でして、以前に死んだものです。夫の某(なにがし)が私の死んだ後に、後妻を迎えました。しかし、心根が悪く、私が残した子供をひどく苦しめるので、一言怨み事を言いたいと、度々家に帰りました。しかし、門口に神仏の守り札があるので、入ることが叶いませんでした。それで、往来の人に頼んで、その守り札を取除いて貰おうと思うのですが、あう人は皆、逃げ去って、どうしようもありませんでした。
どうぞ、私を憐れんで、私の願いをかなえて、その守り札を取り除いてください。」
といった。
山田は、「それは、たやすい事だ。」と言った。

共に同行し、彼の豆腐屋に至って、門口の守り札を引き剥がしたが、彼の女は、世に嬉れし気な顔色をしてその門を入ったと見えた。
入るや否や女の叫び声が聞こえた。

後で、そのことを聞くと、かの後妻は前の妻の死霊に取り殺された、と伝えられたそうである。

以上
「土佐風俗と伝説」 幽霊と物の怪(もののけ) より



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