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江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

ふざけた霊宝  蜀山人「半日閑話」

2025-02-28 19:56:15 | 江戸の人物像、世相

ふざけた霊宝  蜀山人「半日閑話」

                                             2025.2

訳者注:江戸時代には、本当に珍しい物から、つまらない物、サギっぽい物まで、さまざまな物が見世物に供されたが、これもその一つであろう。

原題は、「とんだ霊宝」  蜀山人「半日閑話」より
以下、本文。

先月頃より、両国橋広小路にて、「とんだ(おかしな、ふざけたとの意であろう)霊宝」の見せ物が、大いに流行した。


細工物宝物目録
細工人 鯰橋源三郎
    古橋甚平

三尊仏 
その中央の主尊は、飛び魚、頭は、くしがい(串に刺したアワビ)、後光は、ひだち(?乾燥させた太刀魚か?)、後光仏とこぶしの中にごまめのあたま、台座は吸い物椀。

不動明王  
頭は、サザエ、顔はサケの頭、手足体ともサケの塩引き、御衣は、 ひだこ(干蛸、つまり乾燥させたタコだえあろう)、袈裟(けさ)は昆布、剣はさしみ包丁、ぼくの縄(?)は、つるし縄、火炎は鎌倉えび(イセエビ)、御台座はサザエ(殻)とアワビ(殻)。 

役の行者(えんのぎょうじゃ:修験道の始祖)  
頭手足とも干し大根、御衣はワカメ、髪は、ところの毛(山芋の根のひげ根)、御袈裟被り物(おけさ かぶりもの)は、干瓢。錫杖は、スルメの足。足駄は氷蒟蒻。岩は、から鮭。

後鬼 
頭より腹まで、カナガシラ(魚の一種)。手足は、キス。腰巻きは椎茸。台は寒天。

前鬼 
鎌倉エビ、腰巻きは、椎茸。よきは、かいじゃくし。台はから鮭。

以上の他は、数が多いので、略した。


目録 見せ物場にて、これを見た。
開帳 とんだ霊宝縁起であった。

上記のは、両国に三カ所、山下に二カ所に見せ物として出品している。

狂詩に云う
昔聞く    四国を巡り  左次 猿を作りて 帰る。
今看(み)る 両国を巡り  霊像 魚となりて 飛ぶ。


蜀山人「半日閑話」より

 

 


猫が嶽の妖描  「土佐風俗と伝説」猫怪 より

2025-02-27 22:06:55 | 化け猫

猫が嶽の妖描(高知県香我美村)  「土佐風俗と伝説」猫怪 より

                      2025.2.27

今は昔 香美郡奥西川村(かみぐんおくにがわ:高知県香美カガミ郡香我美カガミ村)に猫が嶽と言って、断崖がそそり立っている。高さは百間に達し、古木老松が生い茂げり、かって人跡の至ったことがない難所があった。
古(いにしえ)よりの話に、ここに猫王と言う大猫が棲息し、その大さは、三歳駒のようであった。
数多くの小猫がいて、その手下になっていた、と言われていた。

今より一百五十年(この書が出版されたのは、1925年)の昔の明和九年(1772年)に、隣村の富家(ふけ)村の男で、与三右衛門と言う二十五六歳の元気な若者が、この嶽下を通った。
ふと仰ぎ見れば嶽の岩角に梟(フクロウ)が一羽止まっていた。
もともと、与三右衛門は狩猟好きで、ちょうどその時猟銃一挺を肩にしていた。
それで、これ幸いと、猟銃を取下ろし狙ひ澄まして打ったが、美事に命中した。それが落下したので、取りに行ったが、梟ではなく蝦菜を束ねたるものであった。奥三右衛門は、不思議に思いながら上を方をみると、梟は傍の木の枝にいた。更に一発打ったが、又命中して落ちていったと思って拾って見れば、鞠のような木片であった。
与三右衛門も少し奇妙なことと思もって、このような所に長居は無用だと、元来た道へ帰りかかって後ろを見れば、梟は依然として元の岩角に佇み、何事も無かったような様子であった。

世人はこの事を聞いて、
「これは、猫王配下の若猫等が退屈まぎれの戯れに、ちょっと一芸を演じたるものであろう。」と言いはやしたそうだ。


「土佐風俗と伝説」猫怪 より