江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

大鷲に浚(さら)はるる小児 「土佐風俗と伝説」天狗怪禽

2024-06-26 22:28:48 | 天狗

大鷲に浚(さら)はるる小児  「土佐風俗と伝説」天狗怪禽

             2024.6

今は昔、天明(1781~1789年)の末、吉本虫夫(むしを:名は外市トイチ、谷垣守の高弟)が長岡郡本山(高知県長岡郡本山町)に住んでいた時の事である。

郷中の大石村の農家の子で三四歳ばかりなるを、一人の童女(小めろ:原注)が子守りをして遊ばせていた。
折しも、山村にはよくあることで、朝霧が立って遠近も分ち難く、ものが見えにくかった際であったが、たちまちその幼児の行方がわからなくなった。

父や里人は驚き悲しみ、四方八方捜しまわったが、何の手がかりも得られなかった。
ただ、林の中にて小さな草履の片足を拾い得たばかりであった。
本山の辺には大鷺が居たので、それに浚(さら)われたものであらうとの噂であった。
哀れな話である。

虫夫は、次の歌を詠じて、父母の心を慰めた。
 白銀に 黄金の玉に 換ぬ子を 物に取られし 親の心は
  立てば匍へ 匍へば歩めと 撫子の 常夏ならで 秋失せにけり
 
元亨釈書 (げんこうしゃくしょ)には、東大寺の良弁(ろうべん)が、鷲に浚(さら)われた児を、丹後にて発見した話がある。

昔は、世の開けぬ時には、このような例は沢山あつたと見える。



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