ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

スパイの妻

2021年09月21日 | 映画みたで

監督 黒沢清
出演 蒼井優、高橋一生、東出昌大

 最初は凡作かと思った。それでもわが故郷神戸が舞台の映画だから観ていた。どっかで見た建物や風景が出てくる。
 冒頭、陸軍の将校が貿易商社の社長福原優作にあいさつに来る。将校と優作は親しいらしい。将校は優作に西洋趣味の生活は慎むようにとの忠告をする。その雄作が映画を撮影している。妻の聡子が女優として出演。この映画、どうも優作が趣味として撮影しているらしい。将校と福原夫婦の関係、映画、この二つが後半の大きなカギとなる。
 優作が甥の文雄を伴って満州へ行って、謎の女と同じ船で帰国してからが、面白くなってきた。その女が死ぬ。どうも優作、文雄、謎の女の三人は、国家の重大な秘密を知ってしまったらしい。その証拠品のノートとフィルムは優作が持っている。妻の聡子もそれを知る。
 国家機密か人類普遍の正義か。優作は決断し、聡子はどこまでも優作についていく決心をする。
 とんでもない夫を持ってしまった妻。しかも困ったことに妻は夫を深く愛している。夫は本当に自分を愛しているのか?夫は敵国のスパイなのか?かようなことに、翻弄される妻を蒼井優が好演。その蒼井の好演を夫役の高橋が、見事な「受け」の演技をする。脚本、演出、主役二人の演技、映画の重要な要素が極めて高い水準に達した映画といえよう。