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可燃物

2024年05月24日 | 本を読んだで

米沢穂信              文藝春秋

 小生はSFもんにつき、ミステリーとか探偵小説についてえらそうなことはいえないがこの小説、分類分けするなら探偵小説のカテゴリーになるだろう。
 探偵小説というとホームズやポアロみたいな名探偵が、なに色か知らん脳細胞をフル回転させて、快刀乱麻難事件を解決して、「犯人はあなただ」で、一件落着。この小説はそういう探偵小説ではない。
 警察小説である。主人公は警官である。コロンボみたいなキャラの立った警官ではない。地味である。警視庁みたいな都会地の警官ではない。群馬県警捜査一課の葛警部が主人公だ。葛警部は決してイーストウッドのハリーやピーター・フォークのコロンボではない。マグナム44をぶっぱなすハリーみたいな乱暴でもないし、しつこく容疑者につきまとうコロンボみたいな粘着性も持ってない。扱う事件も社会を震撼させるような大事件でもない。殺人事件は有るが、地味な事件である。葛警部も決して名警部ではない。上司や部下から好かれてはいないけど嫌われてもいない。それでも地道に捜査をして、確実に事件を解決していく。
 決して派手な小説ではないが、「読ませる」小説である。米沢の筆力のたまものだろう。