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雫石鉄也のブログ

ガダラの豚

2019年10月23日 | 本を読んだで

 中島らも         集英社

 うう、面白い。上中下3巻の長い小説なのに一気に読んでしまった。ジェットコースターに乗ったように読者はらもさんの筆にふりまわされる。
 いちおう主人公的な人物は大生部多一郎という民族学の教授。肛門のような口をしたこの教授、アル中でテレビで売れっ子のタレント教授である。アフリカの呪術の研究が専門でアフリカでのフィールドワークの経験も豊富。この大生部、アフリカで娘を亡くす。そのため妻逸美は精神を病んでインチキ宗教に入信する。上巻は逸美をとりもどすべき大生部は手品師ミスター・ミラクルとともに、オウムを思わせる宗教団体に乗り込む。教祖がおこす「奇跡」はみんな単純な手品。インチキをあばいて逸美を取りもどす。このくだりは実に痛快であった。
 中巻はテレビ番組撮影にためアフリカへ渡る。大生部、逸美、二人の長男納、大生部の弟子の道満、超能力青年の清川たち一行はアフリカはケニアに飛ぶ。案内人は関西弁をしゃべるケニア人青年。ケニアの村の呪術師に会うため。ケニアの呪術師。それはいわゆる日本でいう「拝み屋」ではない。医者でありカウンセラーなのだ。
「次の村に呪術師はいるだろうか」「それはアメリカに来て、次の街にマクドナルドはあるだろうかと聞くようなものだ」
 彼らはケニアで最強最悪の呪術師バキリと出会う。大生部一行はバキリの元から大切なものを取りもどし、ケニアを命からがら脱出する。
 下巻は日本に乗り込んできたバキリとテレビ局での大バトル。ここでは逸美が「エイリアン2」のリプリーも顔負けの大活躍をする。ここに到るまで主要な登場人物が惨殺されていく。
 らもさん畢生の一大エンタティメント大傑作である。