Dr. Mori Without Borders / Mori-san Sans Frontieres

森 一仁が医学・国際政治経済金融・人文教養教育など関心問題を国際的・学際的に考える。

医学界で大人気のエビちゃん♪

2008-03-23 23:42:35 | 臨床医学
「売られ続ける日本、買い漁るアメリカ―米国の対日改造プログラムと消える未来」と言う書籍の書評には、対日改造プログラムの中身として「金融」「商法」に続いて「医療」を挙げている。細かい内容については米国エスタブリッシュメントが進める日本改造①等に詳しいのであるが、医療関係では市場原理を導入したアメリカ型の自己負担医療を推進したいのであろう。

日本では国民皆保険により公的保険で医療費用をカバー出来る。アメリカは公的保険の代わりに民間保険が主体であるが、これは加入していれば医療費用負担をカバーしてもらえる「こともある」代物である。なぜなら保険でカバーしていない疾患や問題があるからである。自動車保険でも何でもとにかく保険には色々と制約の多い国である。分厚い書類を読みとおすだけでも一苦労であるのだが、これに加えて保険料が高額であったり問題も多い。

この保険料算定に重要なのがいわゆる「保険数学」と言う分野であるが、統計学的にデータ収集をして分析をし、得られた結果に重みを付け、最適解としての最適治療方針を選択・決定する・・・聞こえは良いのであるが、これが最善の医療かどうかはまた別の問題であると思う。しかしながら保険会社は治療に費やされた「コスト」の支払いを決定する事により、いわば生殺与奪の力を持っている。言い換えれば「もっと安い治療を選んでください。今回は支払えません。」等と言う事が出来るのである。アメリカ流医療の導入とは、「民間保険」と「統計医学」を普及させようと言う事であろう。

さて、アメリカ流市場原理医療を批判してきた李先生は「EBMに基づいたガイドラインの滑稽」についての厚生労働省の反論に答えてでも述べているが、ここで見られているような「EBMに基づいた」と言う厚生労働省の表現自体がよくわからない。EBM自体が「統計的エビデンスに基づいた」と言う事であるので、「統計学的データに基づいた医療に基づいてガイドラインを作成しよう」と言う表現はなんだかまどろっこしいのである。

さらにはEBMではガイドラインに基づいて治療をしようと言うのではなく、個々の症例に対して「最適解」を各自で見つけて治療を施すと言うのが本来の思想であるらしいので、トップダウン方式で問題処理をしようという思想にはそぐわないらしい。

厚生労働省の医系技官の募集要項でもEBMを推進とあるから、統計医学を推進したいのはわかる。日野原先生の言葉としてEBMが語られているのはちょっと疑問もあるのだが、これはまた今後の考察としよう。

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