Dr. Mori Without Borders / Mori-san Sans Frontieres

森 一仁が医学・国際政治経済金融・人文教養教育など関心問題を国際的・学際的に考える。

Barbara Brennanが日本で開校?! ~失われる伝統・治療文化~

2007-03-05 05:34:31 | 統合医学(補完・代替医学)
一部の人々はBarbara Brennan School of Healingが日本校を開校すると聞いて「まぁ素晴らしい」と欣喜雀躍するかも知れない。しかし私は実はこの事態を非常に憂慮している。BBSHとは一体何であろうか?なぜ日本校の開校を憂慮しなければならないのだろうか?

Dr. Barbara Brennanとは「Hands of Light」や「Light Emerging」といった著書で知られる元NASA科学者であり、代替医学の分野では割とよく知られている物理学者である。専門の物理以外にも神学博士なども取得しているようであるが、彼女の圧倒的な支持者からは現代のヒーラーとして位置づけ、またそのように尊敬されている。

「Brennan Healing Science」と言う名で結実したそのヒーリングテクニックは、人間の意識がもたらすエネルギー場を応用して疾病の治療に当たろうというものである。「手かざし」をして平癒を祈るといった伝統医学にも見られるモダリティーであり、この観点からは気功法による外気功と区別がつかない。また彼女の学校のウェブサイトによれば、このテクニックは高度の認知技能とエネルギー手技療法の技能を組み合わせたとあるが、ではこのどこが問題なのであろうか?

まず第一に日本には古来より「手当て」と言う言葉がある。病人を「看る」事を「手当て」と呼ぶことで、手を当ててケアする事で象徴しているのである。勿論象徴だけではない。本当に手を当てて病気の平癒を願いながらケアを続けたのである。言い換えれば日本のお家芸、伝統医学の基本が文化として、伝承され続けてきているのである。これを外国人にわざわざ金を払って習う必要は無い。

もっと細かく議論をするなら、本州に住む和人のみならず、アイヌの人々にもこんなテクニックはあった筈だ。なぜ黒船に乗って(笑)白人が教えに来るのか?アメリカ先住民の方がもっと洗練された伝統的治癒技術を持っている筈である。彼らが金を払わせてまで人々にこの「手かざし気功手技療法」を教えるであろうか?

第二に、日本人の方が欧米人よりも論理的思考力を持ち出さない分だけ直観的な事象の把握には優れている。論理よりも行間を読み、ステートメントよりも邪推が大事とされている文化である。高度な認識技能・・・と言っても所詮は論理を超えた認識を可能としようと言う事ぐらいであろう。実際に欧米人には日本的直観は難しいらしい。

こうして見て来ると、日本上陸と言う治療モダリティーは、我々が伝統的に行なってきた治療法であり、家庭看護の基礎技術である。ゆめゆめ大枚叩いて何かを得ようなどと言う気持ちを私は慎まねばなるまい・・・こう思った。しかしながら、日本校を東京に開校と言う事は相当の資金的ベースがあるはずである。しかもウェブサイトによればかつて日本人学生も多かったと言う。私達の伝統的治療文化は海外に流出して逆輸入されている時代に突入したのであろうか?

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