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かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 243

2024-04-15 16:17:58 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究29まとめ(2015年7月実施)
   【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)100頁~
    参加者:S・I、M・S、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部 慧子  司会と記録:鹿取 未放


243 空いっぱいに透明大河流れおり欅若葉は藻のごとく揺れ 

       (当日意見)
★凄く大きい上からみ見下ろしような歌。(M・S)
★空いっぱいとあるから夏の豪雨をイメージしました。やっぱり宇宙的なイメージなの
 でしょうかね。(S・I)
★私は宇宙までは広げませんでした。下から大空を眺めています。風が吹いていて、風
 に色はないので透明ですが、その気流を大河のイメージで捉えています。その透明な
 河には大きな欅の若葉を付けた枝が枝毎藻のように揺らめいている。伸びやかでゆっ
 たりとした気 持ちの良い歌ですね。(鹿取)
★蛇足ですが、確かこの歌を含んで「透明大河」と題さたて一連は新人賞の歌作に入っ
 ていたと思います。歌壇賞を取られる前ですが。(鹿取)

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渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 242

2024-04-14 19:45:46 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究29まとめ(2015年7月実施)
   【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)100頁~
    参加者:S・I、M・S、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:渡部 慧子  司会と記録:鹿取 未放


242 夏の日の黄揚羽・電話そして君 突然に来て簡単に去る 

       (当日意見)
★M・Sさんが「記号って短歌に使ってもいいの?」とおっしゃったんだけど、ここ
 では 「・ (なかぐろ)」が使われていますよね、並列を表す為に。最近は皆さ
 ん、けっこうに記号を 使っていますね。この歌集と同じ1990年代には、ニューウ
 ェーブと呼ばれる人たちが 盛んに記号を使いました。加藤治郎さんとか荻原裕幸
 さんとか、よかったら読んで見てく ださい。(鹿取)
★夏の日が最初にくるのがいいと思います。突然に来て簡単に去るものを順番にあげて
 いるようですが、ちゃんといいものをあげていると思います。(M・S)
★そうですね、アトランダムのようで詩的に出来上がっていますよね。黄揚羽のキ、君
 のキ、来てのキと歯切れのよいキの音を連ねて心地よいリズムを生んでいます。夏の
 日が強烈なんだけど他の物はなんとなくはかない感じですよ。黄揚羽が突然目の前に
 現れてあっという間にいなくなってしまうように、君からの電話も君自身もあっとい
 う間に目の前から去ってしまう。最近の若い人がうたっているようないわば平べった
 い言いまわしなんだけど上手くつかめていますよね。まあ、去られるのもここでは甘
 い痛みなんでしょうけど。「突然に来て簡単に去るもの」って三つまとめて、「枕草
 子」みたいで楽しいです。(鹿取)

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渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 241

2024-04-13 10:41:14 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究29まとめ(2015年7月実施)
   【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)100頁~
    参加者:S・I、M・S、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部 慧子  司会と記録:鹿取 未放


241 自転車を五月の街へ漕ぎ出だし回転をする君の白脛  

       (当日意見)
★君の脛が回転するというと非常に面白い使い方。(S・I)
★女性の脛って魅力的なんですね。(M・S)
★「回転をする白脛」がうまいなって。なかなか白脛って出てこない語ですよね、君の
 脚なら言えそうだけど。太股だとちょっと語感的にも暑苦しいし、なまめかしすぎる
 けど。「回転をする」というに無機的な語感に「白脛」を繋げたところが面白くて、
 動きが的確で健康的でいい感じですね。(鹿取) 
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渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 239,240

2024-04-12 10:38:45 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究29まとめ(2015年7月実施)
    【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)100頁~
    参加者:S・I、M・S、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:渡部 慧子  司会と記録:鹿取 未放


239 初夏のわれは野に立つ杭となり君の帽子の飛びくるを受く  

        (当日意見)
★いつでもどうぞ、どこへ飛んできてもエラーしないで受けますよという感じが出て
 いる。(M・S)
★どっしりとした存在感がある。寺山のような青春歌ですね。(S・I)
★気持ちの良い初夏に野原で杭となって君がたわむれに帽子を投げるのを受けている、
 そんな素直な歌として読んでもいいように思うのですが、なぜわざわざ「杭」なんで
 しょうね。何せ一連の題が「陰陽石」ですから、つい余計なことを思ってしまうので
 すが。フロイト流に解釈すと、尖った物は男性性を、丸い物は女性性を表す訳ですか
 ら、まあこの歌も裏にはそういうことを暗示しているのかなと思います。(鹿取)


240 朝早き地震に根元揺さぶられ爽快となる五月の壮樹  

        (当日意見)
★さっきのフロイトの話からすると、また違う意味になってきますよね。でもこれ
 は、素直に読んでいいのかな。(S・I)
★これは素直に読んでいいのかなあ。地震だから地が揺れるんで根元が揺さぶられるの
 よね。それで爽快になるというのはよく分からないんだけど、運動したような感じで
 さっぱりするのかなあ。「壮樹」って造語でしょうか、壮年の樹ってことですよね、
 そこに自分を重ねてはいるんでしょうけれど、読んで爽快になる歌ですよね。(鹿取)

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渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 238

2024-04-11 09:48:47 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究29まとめ(2015年7月実施)
    【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)100頁~
     参加者:S・I、M・S、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:渡部 慧子  司会と記録:鹿取 未放


238 赤城山の天辺に立ち呼吸深し関東平野を吸い込みては吐く
  
       (当日意見)
★「関東平野を吸い込みては吐く」という非常に大きい世界を詠っていらっしゃる。
    (S・I)
★天辺に立ってお山の大将というか、天下を取ったような気分で関東平野の空気を吸い
 込むような気がするという、おおらかな男性的な歌だと思います。(M・S)
★この作者、登山が大好きで週末には自宅周辺の山々に登っていたそうなので、赤城山
 もよく登られた山なのでしょう。赤城山は群馬県の真ん中辺りに位置する1828メー
 トルの火山で、榛名山、妙義山と並んで上毛三山の一つです。国定忠治の台詞でも有
 名ですね。頂上に着いた達成感とか快い疲れとかで関東平野を見下ろしながら深呼吸
 しているんだけど、「関東平 野を吸い込みては吐く」と大きく表現しているところ
 など国定忠治に通じるところがあるようで、もしかしたら意識されたのかもしれま
 せん。ユーモアもあるし気持ちの良い歌ですね。(鹿取)

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