かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 222

2021-05-13 17:34:22 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究27(15年5月実施)
                【非想非非想】『寒気氾濫』(1997年)91頁~
      参加者:石井彩子、泉真帆、かまくらうてな、M・K、崎尾廣子、M・S、曽我亮子、
          渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:石井 彩子 司会と記録:鹿取未放

 ◆「非想非非想」の一連は、『寒気氾濫』の出版記念会の折、塚本邦雄氏が絶賛された。 
   全ての歌に固有名詞が入っていて全て秀歌、「敵愾心を覚える」とスピーチされた。

222 ひんがしへひんがしへ犬(いぬ)の陰嚢(ふぐり)咲きひんがしへ行く良寛の足

        (レポート)
 子供にせがまれれば、日が落ちるまで鞠付きに興じる何事にもとらわれない無欲恬淡な性分の良寛は、69歳の時、島崎村(現長岡市和島村)の木村家邸内に住んでいた、その屋敷で30歳の貞心尼に出会った。「こころさへかはらざりせばはふつたのたえずむかはむ千代も八千代も」『蓮の露』という和歌を詠んでいる。再会を思って、貞心尼の住む福島(現長岡市福島)の閻魔堂に向かう、塩入峠(しおのりとうげ)を越え、信濃川を渡ったというから、犬(いぬ)の陰嚢(ふぐり)は川辺に咲いていたのであろうか。犬の陰嚢の咲く様は、恬淡で飄々とした良寛の足取りのようで、また、貞心尼への恋心をも思わせる、東へ、東へと畳み掛ける表現は、貞心尼へとはやる想いを伝えている。良寛は74歳で亡くなるが貞心尼の手厚い看護をうけ、最期を看取ってもらった。(石井)
■レポートに付いていた図は、ブログでは省略。


       (当日意見)
★別紙の図を見てください。良寛が住んでいる所は真ん中中央の木村家です。そして右下に 貞心尼の
 住む村があります。直線距離で18.6キロくらいです。これは塩入峠を越えて信濃川の渡しを通って
 行く道です。6~7時間かかったのではないでしょうか。朝行って夕方着くという感じです。こんな
 ふうにして良寛は貞心尼に逢いに行ったのではないでしょうか。(石井)
★西方浄土の西に向かってでは無く、東というのはなぜだろうと思っていました。良寛と貞心尼の恋の
 話というのは知っていましたが、この歌と結びつけては全く考えていませんでした。修行の為に良寛
 はひんがしへひんがしへ歩いて行って、その足元に犬の陰嚢が咲いていたって単純に考えていたので
 すが、石井さんの意見のように貞心尼に会いに行く話だと犬の陰嚢お名前が作用してエロチックな歌
 になりますね。(鹿取)


          (後日投稿意見)
 日がな一日子供と鞠つき遊びをしたような優しい良寛さんが春ののどかな日の中を歩いている。「ひんがしへ」を3度繰り返したことで、てくてくとした足元が見えてくるようだ。そんな良寛さんの足元には可憐な犬の陰嚢が春の日射しをあびて一面に咲いているのだ。(K・M)


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