かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 86

2020-09-05 19:44:25 | 短歌の鑑賞
  ブログ版渡辺松男研究⑩(13年11月)
     【からーん】『寒気氾濫』(1997年)36頁~
      参加者:崎尾廣子、鈴木良明(紙上参加)、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター 渡部慧子    司会と記録:鹿取 未放


86 あなたとのあいだに菊の黄をおきて沈黙の間は黄を見ていたり

     (レポート)
 話をしていて沈黙が生じるとそこにあるものに目をうつす。目をうつしながら話題を探したりするであろうから、そこにあるものを、ただ「黄」と見るだろう。このような認識の微妙な経験を詠う。上の句はあらかじめ黄の菊ではなく「菊の黄」として、ひそかな布石のように思う。(慧子)


        (記録)
 ★黄色の菊というのは何か意味があるのでしょうか?(曽我)
 ★黄色そのものには作者は意味を置いていないのでは。(慧子)
 ★私は反対、黄色にすごく意味を置いているように感じる。黄色というのは幸せの色と
  いうような。ふたりの間で満たされた気分を黄色の菊で表現しているのかなあと。
     (崎尾)
 ★私はこの歌が大好きだが、黄色にはそれほど意味を置いていない気がする。幸せの黄
  色いハンカチというのもあったけど、絵画なんかではむしろ黄色は不安とか焦りとか
  狂気を表している気がする。でも、この歌はありふれた黄色い菊が恋人との間に置か
  れていて、沈黙の間は「菊」という認識ではなくてマッスとしての「黄」という色を
  見ていた、「黄を見ていたり」の表現が上手いなあと思う。レポーターと解釈は似て
  いる部分もあるんだけど、気詰まりで菊が認識できないほどの空気感ではなくて、も
  う少しリラックスした間柄かなと思う。そういう意味では崎尾さんに賛成で、安らか
  な気分が流れているのかなと。(鹿取)



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