かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 28

2022-03-21 14:33:06 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の4(2017年9月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【大雨覆】P24~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、A・Y、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取未放

     
28 呼びかけてかならず寒くなるわれに茜の雲よ鳥消えてゆく

    (レポート)
 親和の情から、おーい鳥よと呼びかけている作者。しかし、なかなか空高くゆく鳥は気づいてくれず、つい時間の経つのも忘れ冬の外気に身を冷やしてしまう。茜の色彩の美しさも味わい深い一首だ。
    (真帆)


        (当日意見)
★「鳥雲に入る」という季語がありますよね。「春になって北に去る渡り鳥が、雲に入るように見
 える」(広辞苑)、春の季語ですね。(鹿取)
★何か分からない大きなものに対して呼びかけているような気がします。(慧子)
★自分は鳥に比べれば信じることもしないし、鳥に呼びかけても帰ってこないことを知っている。
 そういうことで自分が冷え冷えとなっていくと取ったのです。それで「茜の空」というのは夕鶴 
 で最後は茜の空に消えてゆくんですね。寒くなるのは人間の一首のさもしさというのかな。人間
 がもともとは裏切ったんだから、そういう寒さじゃないかと。(A・Y)
★26番歌(ひかりより繊きおもいというものを鳥は知りつつ天翔るらん)で見たように、「ひか
 りより繊きおもい」を持った主体、27番歌(鳥と呼びはてしなき空見上ぐればきらきらと神の
 花粉は飛べり)の「神」、空に向かって呼びかける相手はそういういわゆる〈超越者〉に対して
 なのかなあと思います。もちろん人間の思念を超えた超越者だから返事は帰ってこないので〈わ
 れ〉は「かならず寒くなる」、そしてそんな〈われ〉の目に茜の雲が映り、北に帰る渡り鳥がそ
 の美しい雲の中に消えてゆく。(鹿取)


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