かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞  155

2021-10-09 19:12:41 | 短歌の鑑賞
 ブログ版清見糺鑑賞 23  東芝Rupo
                        かりん鎌倉なぎさの会 

155 莫逆の友のごとくにありしかどガタが来ている東芝のRuPo
                  「かりん」2000年12月号

 「東芝RuPo」と題された一連七首の中の一首。並ぶ順は次の通り。

東芝RuPoやがて絶えなんとばかりを東芝は言う どうしてくれよう
莫逆の友のごとくにありしかどガタが来ている東芝のRuPo
メソポタミアの粘土板よりはかなきは東芝RuPoのフロッピーディスク
東芝RuPo探しあぐねて今ぞ知る売れないものは売ってないのだ
とりあえずインクリボンのカセットは六〇〇〇首分買いもとめたり
黄泉の国へどちらが先に行きつくか行方はかなきRuPoとわたくし
明日に向って撃つものなどは何もなく昨日の歌をRuPoに打込む

 「莫逆の友」は『荘子』に出てくる語で「心に逆らう莫(な)し」の意。意気投合して極めて親密な間柄のことをいう慣用句。東芝RuPoの製造中止の報に反応して 作った歌。一連コミカルに作られているが、アナログ主義者でパソコンを遂に扱 わなかった作者は、ワープロも一本指で打っていた。作者にとってせっかくなじんだワープロがやがて使えなくなることは作歌生活に関わる切実な問題だった。この歌、「莫逆の友」という漢語の格調高い言いまわしと「ガタが来ている」という俗語とのミスマッチが面白い。

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