2025年度版 渡辺松男研究2の3(2017年8月実施)
『泡宇宙の蛙』(1999年)【四葉鵯】P19~
参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放
18 山頂はすずしかるらん瞼なき蛇なれば白き風に吹かれて
(まとめ)
白はここでは風だが、蛇まで白蛇のように思える。白い蛇は日本でももともと神様のお使いのような形で登場している。ニーチェの『ツァラツストラはかく語りき』でもツァラツストラの友として鷲と蛇が出てきて蛇は知の象徴として描かれている。ツァラツストラは10年山の上で修行するけれど、その大事な時の友なのだ。『寒気氾濫』の冒頭がニーチェの歌だから、ツァラツストラは松男さんには思い入れがある。また、松男さん山歩きが好きだったそうだから、汗びっしょりになって山頂をめざしていると「山頂はすずしかるらん」というのはごく自然に出てくるのだろう。もちろん「すずしい」は作者の愛着のある語で化石のうぐいが涼しそうだったり、〈われ〉の緘黙も涼しかったり、独特の使い方がされている。『ツァラツストラはかく語りき』では、脱皮し続ける蛇を自己超克の象徴として描いているが、この歌はそういうものとは無縁だろう。(鹿取)
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