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かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 40

2025-05-26 11:33:36 | 短歌の鑑賞

  2025年度版 渡辺松男研究2の6(2017年11月実施)
     『泡宇宙の蛙』(1999年)【夢監視人】P32~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、
         A・Y、鹿取未放
         レポーター:泉 真帆       司会と記録:鹿取未放          
     

40 はるかより木の実匂いて来たりけり二足歩行のけものの乳房

        (レポート)
 遠くから木の実の匂いがしてきた。結句の「乳房」からこの二足歩行をするけものは哺乳類であり、それは作者だということを表しているのだろう、そう思ったがどうだろう。(真帆)
      
           (まとめ)
 作者は男性なので、レポートだと人間の男の乳房となってしまう。男に乳房という表現は不自然だろう。また、レポーターの解釈だと、作者が遠くからやってくる作者をこちらで見ていることになる。まあ、こういう設定は可能ではあるが。
 遠くから木の実の匂いと共に近づいてきた「二足歩行のけもの」とは人間の女だろう。木の実が匂ってくるという表現で、原始時代の木の実を採集して生活していた逞しい女の裸の乳房が浮かぶようにしくんであるのだろう。「はるか」は例えば数万年前というような時間的隔たりを含んでいるのかもしれない。木の実の匂いと共に近づいてくる女というのは幻視なのであろうが、それを〈われ〉はありありと感じている。あるいは山道で現実の女性とすれ違ったのかもしれないが、その女性が乳房をあらわに出しているはずはないので、結局、背後に原始の女を幻視したのである。山に来て時間の感覚が日常を超越したときに感じた大いなる幻想のような気がする。(鹿取)
    

 


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