かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 208

2021-04-22 16:12:56 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究 25(15年3月) 【光る骨格】『寒気氾濫』(1997年)86頁~
   参加者:石井彩子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:渡部 慧子  司会と記録:鹿取 未放
    

208 風にやられて万の葉裏を晒せるにだれもレイプと言ってはくれぬ

       (レポート)
 風に吹かれる樹木がいっせいに葉裏をさらされる状態を樹の側からこんなふううに呟いてみた。言葉を持たない木のためにと言うのではなく、木に会えばおのずから対象と一つになる作者。(慧子)
                          

        (意見)
★私はすごく単純に考えて、木の葉の裏って誰も見たくないじゃないですか、そういう見たくない
 ものを見せられる、風によって暴力的に晒される、だからレイプという表現にしたのかなあ。葉
 の裏は変に白かったりして美しくない。風が木としての有りようを変えちゃった。擬人化した言
 い方なのでちょっとこんがらかりますね。(石井)
★レイプという語がどうも唐突だと思っていましたが、そういうことですかね。「恨み葛の葉」な
 んって歌もあって、葛の葉は風に飜ると裏が白くて目立つそうです。(鹿取)
★でも欅なんかの葉の裏って美しいですよ。(慧子)
★まあ、いろいろの考え方がありますから。美しいものを晒させるのもレイプですかね。一斉に晒
 させられる訳ですから。(石井)
★美しいものを晒させられるのがレイプなのか、醜いものを晒させられるのがレイプなのか、分か
 らないけど、自分だったら醜いものを晒す方が嫌ですね。何か私が作者の意図を見落としている
 のか、どうもレイプというのがよく分からないです。(鹿取)


      (後日意見)
恋しくば尋ね来て見よ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉
人形浄瑠璃や歌舞伎などで、通称「葛の葉」として知られる話に出てくる歌。狐が恩返しの為、人間の妻になって一子を儲けるが、正体が分かって去っていく時にこの歌を残す。「葛の葉」は狐の名前と植物名の掛詞。(鹿取)


        (後日意見) 
 作者が女性だったら、絶対にこのようなかたちで「レイプ」という言葉は使わないと思いました。
「言ってはくれぬ」とも。「風にやられ」たあと、もう元には戻らない。大きな傷が残り、世の中、人生が変わってしまう。「風にやられ」たことを、必死で隠そうとする。平然と、何事もなかったように装おうとする。私だったらそうだと思う。だから、こんなかたちで、この言葉を使ってほしくないというのが、正直な感想です。(T・H)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 渡辺松男の一首鑑賞 207 | トップ | 渡辺松男の一首鑑賞 209 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事