かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 306

2024-08-24 11:08:48 | 短歌の鑑賞
  2024年度版 渡辺松男研究37(2016年4月実施)
    【垂直の金】『寒気氾濫』(1997年)124頁~
     参加者:S・I、泉真帆、M・S、鈴木良明、
         曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放

306 点滴の間にうかびたる銀漢の遠くに杉は凍裂をしぬ

    (当日発言)
★点滴の間って時が過ぎているような過ぎていないような微妙な時間の移りですよね。
 自分は点滴を受けているけれど、厳しい現実が彼方にはある。宇宙のようなことを暗
 示しているのかなあ。(慧子)
★高熱で点滴をされている間にこういう像が見えているんですね。寝ているから現実の
 天の川は見えない。そしてもっと彼方に杉が凍裂していく姿がくっきりと見えてい
 る。それは苦しい心身が脳にそういう像を結ばせているんですね、というかそういう
 ふうに解釈できるように作られている。凍裂する杉の像がとても清冽で、この像の出
 し方が上手だなって思います。(鹿取)
★幻覚を見てそれを表現していらっしゃるのかなと。すごいなあと思います。普通の状
 態じゃこんな歌できませんから。(S・I)
★自分が杉とは思われませんか?(真帆)
★それは自分自身を投影しているんでしょう。(S・I)
★私は宇宙にはあれもこれもあるって、この人は思っているんじゃないかなあ。自分は
 こうしてうつらうつらと点滴を受けているけれど向こうでは杉が凍裂している、そん
 な厳しさもある。(慧子)
★私は麻薬とかそういうものを飲みながら書いた人の詩を読んだことがありますが、そ
 れに通じるところがあります。(S・I)

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