かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 84 スペイン③

2024-08-30 09:55:36 | 短歌の鑑賞
 2024年度版 馬場あき子の外国詠10(2008年7月)
   【西班牙 2 西班牙の青】『青い夜のことば』(1999年刊)P55~
    参加者:N・I、M・S、崎尾廣子、T・S、藤本満須子、
       T・H、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:T・H まとめ:鹿取未放
          

84 尖塔は碧空に入りて西班牙の深き虚に触れ物思はしむ

      (レポート)
 私は残念ながら、この尖塔がどこの教会のものか分からない。スペインの都市には至る所教会があり、そこには高い尖塔が聳えている。マドリッドのカテドラル、バルセロナのガウディのサグラダ・ファミリア、サンディアゴ・デ・コンポステラのカテドラル、いずれも高い尖塔を持つ。それは少しでも天に近づきたいとのキリスト教の信仰の現れで、ゴシック建築の特徴。今、馬場はその尖塔を仰ぎ見ている。その尖塔はスペインの紺碧の空に吸い込まれているように見える。またその尖塔は「深き虚に触れ」、歴史的な事件や人間の営みなどについて、馬場を深い思いに誘っている。スペインの深き虚とは何か、かつてスペインは、大航海時代には、この地球上に日の沈むところなきまでに植民地を広げた。教会の尖塔を眺めることにより、スペインという国・地域の歴史的な事件や人間の営みなどまでに思いを致す馬場の感性の鋭さに感銘を受ける。 
    (T・H)


      (まとめ)
 「……人間にはとうていはかりしれない宇宙がやどすなにかの感情が、真っ青な幕になって砂漠に垂れおちているようだ。いつくしみでも憐(あわ)れみでも恩寵(おんちょう)でもない、酷薄か虚無か、あるいは意味という意味をすべてろ過しつくした蒼空(そうくう)である。」
          辺見庸(神奈川新聞二〇〇八年七月二八日朝刊)

 82番歌「静かの海のさびしさありてマドリッドのまつさをな虚にもろ手を伸ばす」にもあった「虚」がまた出てきた。直截に言えば「虚空」ということだろう。こちらは「尖塔」だから82番歌の「虚」より物思う内容が絞りやすい。大きくいえば、やはり東洋思想と西洋思想、キリスト教という思想についてであろう。(鹿取)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 馬場あき子の外国詠 83 ... | トップ | 馬場あき子の外国詠 85 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事