かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

追加版 清見糺の一首鑑賞 103

2021-03-12 17:31:58 | 短歌の鑑賞
  追加版 ブログ版清見糺の短歌鑑賞  15 モロッコ見聞録  
                       鎌倉なぎさの会

103 あかあかのトドラ渓谷のけぞりてこれはこれはと人はいうなり
                「かりん」96年12月号

  バスを降りて天を仰いだ馬場あき子は、「これはこれは」といって絶句した。
  何しろ聳え立つ赤い岩の壁に限られて空が狭い。日本では層雲峡が絶景だが、
  これはまったく質の異なった、和歌にはなりそうにもない絶景である。
  あかあかのトドラ渓谷のけぞりてこれはこれはというばかりなる
                      (清見糺「モロッコ私紀行」)

 上記は清見糺の紀行文より引用した。「これはこれはと」の部分は、江戸前期の俳人安原貞室が吉野の千本桜を見て詠んだ句「これはこれはとばかり花の吉野山」を下敷きにしているのだろう。句は感動の余り絶句している様子である。馬場はもちろん貞室の俳句は知っているだろうが、ここでは意識せずにあげた感嘆の言葉だろう。それを聞いた作者が貞室の句を思いつつ歌に仕立てたのだろう。そういう意味では推敲前の「これはこれはというばかりなる」という素朴な描写が生きているのだろうが、「これはこれは」は本人の発言ではないので客観的な「人はいうなり」に改作したのだろう。(鹿取)
 

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