かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 105、106 スペイン⑤

2024-10-05 10:39:30 | 短歌の鑑賞
   2024年度版 馬場あき子の外国詠12(2008年10月)
       【西班牙3オリーブ】『青い夜のことば』(1999年刊)P61~
       参加者:F・I、N・I、T・K、崎尾廣子、T・S、藤本満須子、
           T・H、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:N・I まとめ:鹿取未放


105 燕だらけのトレドの小路昼深く青きオリーブに塩は凝れり

        (レポート)
 トレドはキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の三つの文化が混在する旧都。新鮮な青オリーブを食用にするため塩でまぶされている。(N・I)


        (まとめ)
 昼深く、静まりかえったトレドの狭い小路を多くの燕が我が物顔に飛び交っている。青いオリーブに塩が凝っているのは、ランチのお店で出された皿のものだろうか。(鹿取)


106 オリーブを納めたる壺埴(はに)の壺ふくらの腹のにじみくるはや

       (レポート)
 焼きをしない粘土でできた壺にはすぐにオリーブ油がしみだしてくるのでしょう。
   (N・I)


       (まとめ)
 昼食をとっているテーブルから埴の壺が見えるのであろうか。あるいは食後に壺をおさめた倉庫などを案内してもらったのかもしれない。素朴な埴の壺の腹の部分はふっくらと形づくられていて、オリーブからしみ出した脂分だろうか、滲んでくるという。腹と形容したことで壺は人間味を帯び、陽気な太っちょおじさんが汗でもかいているような楽しいイメージがかもしだされた。「納めたる壺」「埴の壺」と畳みかけたリズムが楽しく、「埴」「腹」「はや」とハ音の頭韻が囃し詞のような効果を生んでいる。(鹿取)
コメント
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