かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 182

2024-01-13 12:31:17 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究22(2014年12月)
      【非常口】『寒気氾濫』(1997年)75頁~
      参加者:S・I、泉真帆、崎尾廣子、鈴木良明、
          曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:S・I   司会と記録:鹿取 未放


182 白骨樹四五本があり月の夜の月のもたらす閻浮の暗さ

      (レポート)
 その昔、閻浮には大きな森があり、閻浮樹が茂っていた。人々はそのような自然に恵まれ、豊かな生活を営んでいたが、今や人類は滅び、白骨樹四五本だけが残っているだけだ。月が煌々と白骨樹を照らしているが、落とす影は不気味で、闇のように暗い。氏の鋭い感性は人間の居なくなった世界を見据えているのかもしれない。閻浮樹は白骨樹となって生を保ち続けているが、人類は生命体としては弱く、真っ先に絶滅する種族なのかもしれない。(S・I)
※「白骨樹」―(台風などで)皮が剥がれ、白くなっている木のことをいう。
※「閻浮」―閻浮堤( えんぶだい)のことで、古代インド世界観における人間世界
        を意味する。『広辞苑』


    (当日意見)
★白骨樹は辞書に出てこないですね。(鈴木)
★ネットで引いたら、登山する人などがたくさん写真を公開していて立ち枯れしている
 木を白骨樹 と呼んでいるようです。松男さんも山歩きする人なので同じ感覚じゃない
 かなあ。「皮が剥がれ、白くなっている木」も狭い意味の白骨樹なんでしょうけれ
 ど。人間がいなくなった世界を歌っている歌最近けっこうありますが、この歌はそう
 いう世界とは思わないです。この一連の歌の並びから見ても、この歌だけ人類死滅後
 だとおかしいですし。白骨樹って標高の高い所にあるよう で、皓々とだか、ぼんや
 りだか、月が白骨のようになった木を照らしてるんです ね。その月光 によってか
 えってこの世の暗さが際だつということだと思います。「人間世界」とか「この世」
 ではなく「閻浮」と言ったところが暗さのはかりしれなさを表していると思います。
   (鹿取)
★S・Iさんはこの歌のどの部分から人類が滅んだ後とお感じになったのですか?
   (真帆)
★「閻浮」ですね、それから白骨樹を月が照らす故に影が濃いという連想に進みまし
 た。人類は樹木などより寿命が短いので死に絶えた後も木は白骨樹として残っている
 んじゃないかと。(S・I)
★僕はこの歌あんまりぴんと来ないです。(鈴木)
コメント
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