かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 203

2021-04-13 17:05:45 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究24(2015年2月)【単独者】『寒気氾濫』(1997年)83頁~
   参加者:かまくらうてな、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:崎尾 廣子 司会と記録:鹿取 未放
            
  ◆欠席の石井彩子さんから、まとめ後にいただいた意見も載せています。
    

203 樹は内に一千年後の樹を感じくすぐったくてならない春ぞ

      (意見)
★一千年後という途方もない時間を木自身が感じ取っている。それをくすぐったいとしかいいよう
 がなかった。それだけでは歌にならないので最後に「春」と入れた。(慧子)
★この歌大好きです。春の成長期に、内から膨張していく感覚を木自身がくすぐったくてないらい
 って感じている。だから「春」つ付け足しでは無いです。樹齢何千年って木があるから、一千年
 後だってこの木はじゅうぶん生きているんですね。(鹿取)
★千年杉とかありますからね。その木の過去の一千年に思いを致すことはあるけど、先の一千年後
 を感じていると目を付けたところが素晴らしい。希望なんですね、これ。(鈴木)
★そうですね、樹齢三千年と言われると私なんかこの木は人間のどんな歴史を見てきたんだろうと
 思うけど、松男さんは樹木自身の未来を見ているんですね。(鹿取)


       (後日意見)
 一千年後とは人間にとって途方もない時間であるが、樹にとっては自然な時間単位なのかもしれない、春が来て動植物が蠢くころ、木もむず痒く、くすぐったい感覚を覚えるのであろう。成長してゆく木のおかしみのようなものが表現されて、いい歌です。(石井)
コメント
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