かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 207

2021-04-21 18:45:46 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究 25(15年3月) 【光る骨格】『寒気氾濫』(1997年)86頁~
   参加者:石井彩子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:渡部 慧子  司会と記録:鹿取 未放
    

207 見上ぐれば風を巻き込み俺様は貪欲なるぞと椨(たぶ)の木がいう

      (レポート)(慧子)
 見あげた作者に椨の木が言った内容は「風を巻き込み俺様は貪欲なるぞ」。なるほどあの椨の木であればその言葉もうなずける。ゆれる、しなう、そよぐ、そんな言葉では追いつかない感じをレポーターも思う。ここは対象になりきるのではなく、人間の特性を木に見て、ユーモラスな一首。
  *椨:クスノ木科の常緑高木。葉は厚くつやがある。5~6月に枝先に黄緑色の小さな花を群
     生する。果実は直径1センチ内外の球形。本州以南、台湾、中国などの暖地の海岸近く
     に自生、材は枕木、家具、楽器など、樹皮は黄八丈織物の染色に用いる。
                         (新世紀百科辞典)

        (意見)
★「風を巻き込み」は叙述部分で、椨の木が言っているのは「俺様は貪欲なるぞ」だけですよね。
   (鹿取)
★椨は綺麗だし、風にも強い逞しい木ですね。(曽我)
★「対象になりきるのではなく」、は作者が椨の木を客観的に見ているということ?(石井)
★はい。(慧子)
★客観的に見ているだけで、それを人間に投影しているとは思いません。「人間の特性を木に見て」
 はなくていいと思います。椨の木の生命力の強さとか生きる逞しさを風さえも巻き込むと例示し
 て「俺様は貪欲なるぞ」と言わせている。(鹿取)
コメント
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