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かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 161、162 ネパール⑥

2025-04-27 11:06:27 | 短歌の鑑賞

 2025年度版 馬場あき子の外国詠 20(2009年8月実施)
    【牛】『ゆふがほの家』(2006年刊)94頁~
    参加者:N・I、Y・I、泉可奈、S・S、T・S、
          曽我亮子、T・H、渡部慧子、鹿取未放           
      レポーター:T・H       司会とまとめ:鹿取 未放 

 

161 街の角曲がれば大き牛の尻ありてわが顔圧倒されぬ


     (レポート)
 ヒンドウ教では牛は神聖な動物として尊敬されている。牛が町中を自由に動き回っている。先生は町の小路で、牛の後ろ姿・お尻に出会われ、ぎょっとされた状況がよく表わされている。(T・H)

 

        (当日意見)
★顔と言っているところがよい。牛の尻と顔でお互いの高さが出ている。(慧子)

 

      (まとめ)
 街角の出会いがしらに、車ならぬ牛の尻がぬっと目の前に現れたことのおもしろさ。(鹿取)

 

162 牛の尻ゆつたゆつたと行くあとに優雅なるわがバスは従ふ


      (レポート)
 バスは警笛も鳴らさず、牛のゆっくりとした歩みに従って、ゆるゆると動いている。(T・H)

 

          (当日意見)
★「ゆつた」「ゆつた」「優雅」とユ音が続いている。(慧子)

 

      (まとめ)
 牛を傷つけると刑罰を受ける。ゆえに車は牛に遠慮して走るわけだが、旅行者としては珍しい風俗ゆえ、牛の後をのろのろと進んでゆくバスを楽しんでいる。「優雅なる」はやや皮肉を効かせているが、だからといっていらだっているのではない。慧子さんの発言にみられるように、「ゆつた」「ゆつた」はいかにものんびりとした牛の描写であり、ユ音の連続はゆったりとした穏やかな心境を伝えている。そういえば、ネパールで真っ先に覚えた言葉が「ビスタリ、ビスタリ(ゆっくり、ゆっくり)」であった。 (鹿取)

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馬場あき子の外国詠 160 ネパール⑥

2025-04-26 10:36:57 | 短歌の鑑賞

 2025年度版 馬場あき子の外国詠 20(2009年8月実施)
   【牛】『ゆふがほの家』(2006年刊)94頁~
   参加者:N・I、Y・I、泉可奈、S・S、T・S、
        曽我亮子、T・H、渡部慧子、鹿取未放           
     レポーター:T・H       司会とまとめ:鹿取 未放 
                            

160 一寸の金の仏を得たる街犠の水牛の血を見たる街


               (まとめ)
 カトマンズだろうか、この街で小さな金の仏を買った。いっぽう、同じ街で水牛が何かの生け贄として血を流しているのを見た。そういう混沌とした街の様子を感慨深く思い巡らせたのだろう。「~街」、「~街」とぶっきらぼうな感じもその統一感のなさに、しばし思考停止してことがらだけを投げ出した感がある。金(色?)の仏と贄の水牛(これはフィクションだと思うが)を対照させ、混沌そのもののような街や人間を面白がっているのであろう。(鹿取)

 

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馬場あき子の外国詠 159 ネパール⑥ 

2025-04-25 19:31:22 | 短歌の鑑賞

   カトマンズの丘の上に建つスワヤンプナート(絵はがき)

      ネパール最古の仏教寺院といわれる

 

2025年度版 馬場あき子の外国詠 20(2009年8月実施)

【牛】『ゆふがほの家』(2006年刊)94頁~
    参加者:N・I、Y・I、泉可奈、S・S、T・S、曽我亮子、
         T・H、渡部慧子、鹿取未放           
     レポーター:T・H       司会とまとめ:鹿取 未放 
                            
                                                                              
159 喇嘛(ラマ)の旗ヒンドゥーの鐘カトマンズの朝露にゆるくわれを目覚ます


      (レポート)
 朝、部屋の窓から通りを眺めておられると、そこにはラマ教の教えを記した布の旗がひらめいていたり、ヒンドゥー教のマニ車を回す音などが響いてくる。それらを見たり聞いたりしていると自然に目が覚めてくる。(T・H)

 

          (当日意見)
★ヒンドゥー教の鐘は、とても軽い音がする。(S・S)

 

     (まとめ)
  カトマンズは非常にお寺の多い街である。ラマ教とはチベット仏教のこと。カトマンズ近郊でたくさんの寺院を見て回ったけれど、正直ラマ教とヒンドゥーの寺の区別はまったく分からなかった。ところでカトマンズは排気ガスがひどく埃っぽい街で、マスクをして歩いている人がたくさんいる。朝も常に靄がかかっている場合が多いそうだ。ここは露だが、そういう埃っぽさを洗うように露で湿った朝、窓からは喇嘛の旗がなびいているのがぼんやりと見え、ヒンドゥー寺院の鐘の音も響いてくる。それら異郷の風物が旅の疲れで眠っていた自分をゆっくりと目覚めさせる。「ゆるく」の語の使い方がうまい。「喇嘛(ラマ)の旗ヒンドゥーの鐘」は、対句的に語調を整えるために使っているので、それほど厳密に考えなくても良いのだろう。(鹿取)

 

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渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 25

2025-04-23 20:14:12 | 短歌の鑑賞

2025年度版 渡辺松男研究2の3(2017年8月実施)
    『泡宇宙の蛙』(1999年)【四葉鵯】P19~
    参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
         レポーター:渡部慧子       司会と記録:鹿取未放   

 

25 にんげんの時間は背骨のなかにある樅を見上げてわれ息深し


             (当日発言)
★背骨の中に、生命が地球上に発生してからの進化の歴史が刻まれているんですね。上句は見方によっては理屈っぽいのですが、下句は樅の木と〈われ〉が交流し合っていて暖かくて深々としたよい歌だなあと思います。(鹿取)
★「われ息深し」に時間が流れていていいと思います。(真帆)

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渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 24

2025-04-22 20:24:10 | 短歌の鑑賞

2025年度版 渡辺松男研究2の3(2017年8月実施)
   『泡宇宙の蛙』(1999年)【四葉鵯】P19~
   参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子       司会と記録:鹿取未放   

 

24 夕立にびしょ濡れになりうれしいよしばらくわれも四葉鵯(よつばひよどり)


            (レポート)
 四葉鵯という菊科の花の存在がまずよい。風に吹かれ、雨に濡れるなりゆきを当然のこととする植物と作者の一体感。(慧子)

 
                               
            (当日発言)
★〈われ〉も花も両方濡れているのでしょう。四葉鵯は私も鳥の名前かと思っていました。花の時期は夏、1メートルぐらいの草丈でピンクの花を付けるそうです。夏だから夕立でずぶ濡れになっても寒くないし、爽快なんですね。子供の魂みたいにとっても素直な歌で、好きな世界です。(鹿取)

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