Darkness Before the Daylight Blog

鋼の錬金術師、黒子のバスケにまつわる人々、漫画やアニメ、日々の楽しみ、その他つれづれ。

ロイ・たぬたんぐ大佐とエドにゃんのお話(10)

2011-12-31 23:59:52 | 小話

エドワードの弟、アルフォンスの行方は、意外に早くわかりました。

ブレダが持ってきた報告書によると、アルフォンスは、行方知れずになった地点から

いくつか山を越えた、北の小さな雪深い村で、雌のユキヒョウと暮らしているというのです。

「ユキヒョウだと?」

「はい。同じネコ科ですから、身体の大きさは大分違いますけど、一緒に暮らせるんで

しょうね」

「これによれば年齢も同じくらいだ。間違いなさそうだな」

「ええ。金色の目をした猫は、その猫とエドワード君以外には、いないようです」

たぬたんぐ大佐は、その情報をエドワードに伝えました。

エドワードが「アルを助け出す」と息巻くので、大佐は止めました。そういえばエドワードは、

壁に穴を空けたり鎖を切ったりすることが、錬金術で可能かどうか、質問してきたことが

ありました。それは弟を救い出すためだったのです。

しかし、ユキヒョウ相手にそんな物騒な真似をしたら、怒らせてしまいます。それは

返り討ちが恐ろしい。

「あのなエドワード。どうも報告によると、アル君とそのユキヒョウは、仲良く生活している

らしいから、まずは会えるかどうか、私が掛け合ってあげよう。とにかく顔を見てアル君の

無事を確かめて、その後のことはよく相談して決めたらいいと思うが、どうだ」

「大佐、ついてきてくれるのか」

「そうしよう。私も行って、一緒に話をしよう。だから、壁を壊す必要はないんだよ」

「うん、わかった」

エドワードはとても喜びました。そして、その村を訪れることになりました。

それまでと同様に、エドワードが困っている人を見つけ、大佐が助けるということを繰り返し

ながら、二匹は北を目指しました。

秋も深まり、朝晩はかなり冷え込む季節になっていました。北に向かっているのですから、

一日ごとに寒さが厳しくなってきます。初雪が降るのも、そう遠いことではないでしょう。

落ち葉を踏みしめながら歩く道すがら、エドワードはうきうきと言います。

「アル、俺の顔見たらびっくりするかな…何話そうかな。ねえ大佐、おみやげ何持ってけば

いいと思う?」

たぬたんぐ大佐はおみやげを一緒に考えながら、この道が永遠に続けばいいのにと思い

ました。その村に到着すれば、エドワードは弟と暮らすことになるでしょう。

たぬき軍部を通して、そのユキヒョウ-イズミ・カーティスと言うそうです-とは、すでに

連絡を取っていました。彼女は迷い猫のアルフォンスを保護して、自分の子どものように

優しく世話をし、育てているのです。ブレダがエドワードの存在を伝えると、イズミは、

アルフォンスから兄がいるのは聞いている、エドワードさえよければ、兄弟二人を引き取り、

面倒を見たいと答えました。

たぬたんぐ大佐は、実際にイズミに会ってみて、彼女が信頼に足る者であれば、その

申し出通りにすることが、最もエドワードにとって望ましいだろうと判断しました。

しかしそれは、大佐にとってとても辛いことでした。エドワードと出会ってからの年月、

大佐はとても楽しかったのです。

嬉しいと感じる時、それはエドワードが喜んだ時でした。

反対に悲しい時、それはエドワードが悲しんでいる時でした。

大佐の幸せは、エドワードと共にあったのです。

ほんの隣村まで送るつもりで一緒に始めた旅がこんな結果を生むとは、予想もしていま

せんでした。

この短い日々の間にいくらか大人びたように見えるエドワードは、大佐の心を惹きつけて

やみません。

※※※※※※※

いつまでもと願った旅でしたが、どんなものにも終わりはあります。

二匹はいよいよ、明日にはアルフォンスの暮らす村に着くという場所に来ていました。

「ただいま、エドワード。遅くなったね」

「お帰り、大佐。ご飯買ってきてくれた?」

「ああ、お待たせ」

二匹は小さな小屋に泊まることになりました。ホットドッグが夕ご飯です。

「今日はここで休むとしよう。明日会いに行く約束は取り付けてあるから、心配はいらないよ、

エドワード」

「うん」

食べ終わって、エドワードは言いました。

「なんか、この味なつかしい」

「そうか?」

「大佐に初めて会った時、もらっただろ」

覚えていたのかと、たぬたんぐ大佐は驚きました。

「大佐のおかげでアルにも会えそうだし、ホントに親切にしてくれたよな。ありがと」

大佐は黙って首を振りました。なぜか胸がいっぱいになりました。

「俺、大佐が大好き」

エドワードが小さな前足をひろげて、たぬたんぐ大佐の首に抱きついてきました。

大佐はびっくりしましたが、目を閉じてエドワードを抱き返しました。

「私もだよ」

そう言いました。強く抱きしめてしまいそうになるのを、エドワードが苦しいかもしれないと

思い、やめました。猫の身体はとても温かくて小さく、毛皮はふかふかとやわらかく、

それは初めての感触でした。最初で最後だと、たぬたんぐ大佐は思いました。

寒い夜でした。二人寄り添ううち、エドワードはすうすうと眠り始めました。大佐はエドワードを

横にして、毛布をかけてやりました。

さっきたぬたんぐ大佐は、エドワードには内緒にして、大急ぎでイズミ・カーティスの元を

訪れたのでした。

(明日、エドワードを連れてきます。以前ご相談した通り、その後のことはどうか、よろしく

お願いします)

(私はいいけど、エドワードはそれで納得しているのかい?)

(まだ話してはいませんが、彼にとっては兄弟一緒に、あなたのもとで暮らすのが一番の

幸せでしょう)

(あんたはどうするんだい)

(私はまた旅に出ます。仕事がありますし)

(それでいいのかい)

(はい。いいんです)

これが最善なのです。そう自分に言い聞かせていると、エドワードがうっすらと目を開け

ました。

「早く明日にならないかな。楽しみで、なかなか眠れない」

そうつぶやき、ごろごろと喉を鳴らして、幸せそうにエドワードは目をつぶりました。

いつもなら希望に満ちている明日が、今の大佐にとっては悲しいものでした。

「好きだよ、エドワード」

小さな小さな声で、大佐はもう一度言いました。

その言葉が口から自然にこぼれて初めて、たぬたんぐ大佐はその気持ちを自覚したの

でした。

………続く………

大晦日に更新!なんかたぬたんぐ大佐が切ない…

今年もあと数分、一年間たくさんの方々にご来訪いただき、ありがとうございました!

おかげさまで楽しい一年間でした。来年も頑張ります。

拍手、メッセージありがとうございます!

12/30  メグさま

いらっしゃいませ!クリスマス話、たぬたんぐ読んで下さって嬉しいです!

温かいお言葉ありがとうございます!来年もきっと相変わらずロイエドロイエド言っていると

思いますが、よろしくお付き合いいただけましたら、とっても幸せです。

小説にお褒めの言葉をありがとうございます!(照)一応話の整合性はとれるように

考えてはいるつもりですが…丁寧だと感じて頂けていれば、すごく光栄です。

推敲は思いついたらするので、かなり以前にサイトにあげた話でも、ひっそりと手直ししたり

しています。誤字脱字もよくあったりしまして…(汗)

たぬたんぐ話、笑って頂けて嬉しいです。ウインリィってなんとなく以前から、顔の両脇に

下ろした髪がちょっと犬の耳に似ていると思っていたので、ああしました。

管理人は犬が好きでして、「わふわふ」というHNも大きい犬のイメージなんですよ。

元気の出るお言葉を頂いて、また書きたい!という気持ちがいっぱい湧いてきました。

メグ様もお身体大切に、よいお年をお迎えくださいませ!