(拍手コメントお返事は下の方にございます)
たぬたんぐ大佐は、木でできた扉をノックしました。
「ぶんぶくブラッドレイ大総統、ロイ・たぬたんぐ大佐、ただ今参りました」
すると、すぐに「入れ」と返事が聞こえました。
エドワードは大佐とカチカチホークアイ中尉の後について、たぬきの大総統の部屋に足を
踏み入れました。その中はほら穴だというのに広く、座り心地の良さそうな椅子や豪華な
机が置かれていました。
黒い眼帯をかけたおやじっぽいたぬきが出迎えてくれました。たぬたんぐ大佐の方が
若くて背が高いのですが、さすがにえらいたぬきだけあって、妙に強そうに見えるのです。
「たぬたんぐ君、元気そうで何よりだ」
「はっ。お久しぶりです」
大総統はエドワードの方を見て笑いました。
「君が猫のエドワード君か。メロンは食べるかね?」
冬だというのに、綺麗なカットグラスの皿に盛られたマスクメロンが出てきました。
食べるととても甘くて、どこの御高級ハウス栽培メロン様かと、エドワードはびっくりしました。
「君が出発してからの成果の報告は受けているよ。他の動物にも使える錬金術や、
医療系を強化した錬金術を開発できれば、われわれたぬき軍部にとってこの上ない
力になるだろう。引き続き旅を続けてくれ。いかようにも便宜をはかろう」
「はっ、勿体ないお言葉です。粉骨砕身の覚悟で頑張ります」
「医療系の錬金術に関しては、詳しい人物の心当たりがある。後で情報をまとめて届け
させるから、一度会ってみるといい」
「はい。ご配慮ありがとうございます」
「今後、たぬき軍部のテリトリーから出ることもあるだろう。その時はくれぐれも気をつけて
くれ。エドワード君もな。必要なら応援を送る」
大佐は大総統と、肉球で握手を交わしました。
その後の相談で、一週間ほど軍部にとどまって、仕事をこなし、情報を集めてからまた
旅立つことになりました。
たぬたんぐ大佐は四ヶ月前、化かすことができずに修行に出ろと言われて、風呂敷包み
ひとつでしょんぼりと旅立ったというのに、今やたぬき軍部の新しい可能性を背負った
希望の星なのでした。
大佐の仕事場だったたぬき軍部の部屋に行くと、大佐の机は旅立ったときそのままの
状態で、すぐに仕事が再開できるようにしてありました。
「大佐、よく戻ってきて下さいました」
「助かります」
口々に迎えられ、大佐はうなずき、早速席についててきぱきと書類を片付け始めました。
エドワードはホークアイ中尉に出して貰った栗ようかんを食べながら、たぬきたちが働く
様子を眺めました。こんなにたくさんのたぬきが一堂に会したのを見るのは初めてです。
軍のたぬきたちは、おしりにくっついているふさふさしっぽを、机や椅子にぶつからない
ように、器用に動かしながら仕事をしています。
「大佐、お電話が入っています」(ふさっ)
「こちらに廻せ」(ふさっ)
「この書類にサインをお願いします」(ふさふさっ)
「わかった」(ふさっ)
「大佐、あなぐま軍部から、旧たぬき軍部の巣穴の一部を、渋抜き済みの柿の実三十個で
一ヶ月間借用したいと、電話で依頼が来ておりましたが」(ふさっ)
「掃除をきちんとするなら構わんと伝えろ。別途提出の依頼状の書式を伝えておけ」(ふさっ)
仕事してる大佐は何ともいえずかっこいいなと、エドワードは思いました。しっぽさばき
ひとつとっても素敵です。
そのたぬたんぐ大佐は、私のしっぽにさわっていいのはエドワードだけだと、優しく約束して
くれたのです。エドワードはその時の大佐の甘い声を思い出すと、とろんとした気分に
なります。自分は猫ですが、大佐のために頑張ろうとエドワードは決心しました。
大総統も、二人で旅を続けてよいと言ってくれました。この先どんなことが待ち受けて
いるかわかりませんが、エドワードはとても満ち足りた気分でした。
アルも元気だったし…と思ううち、ほっとしたのか気がゆるみ、エドワードのまぶたは
別な意味でとろんと重くなってきました。
「あらあらエドワード君、寝ちゃったのね」
長旅の疲れが出てきたらしく、エドワードは椅子の上に丸くなり、眠りこんでしまいました。
……………
ご来訪、拍手、メッセージありがとうございます!
3/29にメッセージを下さった方
いらっしゃいませ!リゼンブール小学校話にコメントありがとうございます!
ロイ先生は持ち上がりで、「リゼンブール小学校2年3組」として続く予定です。
気軽に書ける話なので、のんびりと楽しく続けていきたいと思います。
よろしかったらまたご覧くださいね。嬉しいお言葉感謝です!