Darkness Before the Daylight Blog

鋼の錬金術師、黒子のバスケにまつわる人々、漫画やアニメ、日々の楽しみ、その他つれづれ。

続 ロイ・たぬたんぐ大佐とエドにゃんのお話(2)

2012-03-30 22:15:07 | 小話

(拍手コメントお返事は下の方にございます)

たぬたんぐ大佐は、木でできた扉をノックしました。

「ぶんぶくブラッドレイ大総統、ロイ・たぬたんぐ大佐、ただ今参りました」

すると、すぐに「入れ」と返事が聞こえました。

エドワードは大佐とカチカチホークアイ中尉の後について、たぬきの大総統の部屋に足を

踏み入れました。その中はほら穴だというのに広く、座り心地の良さそうな椅子や豪華な

机が置かれていました。

黒い眼帯をかけたおやじっぽいたぬきが出迎えてくれました。たぬたんぐ大佐の方が

若くて背が高いのですが、さすがにえらいたぬきだけあって、妙に強そうに見えるのです。

「たぬたんぐ君、元気そうで何よりだ」

「はっ。お久しぶりです」

大総統はエドワードの方を見て笑いました。

「君が猫のエドワード君か。メロンは食べるかね?」

冬だというのに、綺麗なカットグラスの皿に盛られたマスクメロンが出てきました。

食べるととても甘くて、どこの御高級ハウス栽培メロン様かと、エドワードはびっくりしました。

「君が出発してからの成果の報告は受けているよ。他の動物にも使える錬金術や、

医療系を強化した錬金術を開発できれば、われわれたぬき軍部にとってこの上ない

力になるだろう。引き続き旅を続けてくれ。いかようにも便宜をはかろう」

「はっ、勿体ないお言葉です。粉骨砕身の覚悟で頑張ります」

「医療系の錬金術に関しては、詳しい人物の心当たりがある。後で情報をまとめて届け

させるから、一度会ってみるといい」

「はい。ご配慮ありがとうございます」

「今後、たぬき軍部のテリトリーから出ることもあるだろう。その時はくれぐれも気をつけて

くれ。エドワード君もな。必要なら応援を送る」

大佐は大総統と、肉球で握手を交わしました。

その後の相談で、一週間ほど軍部にとどまって、仕事をこなし、情報を集めてからまた

旅立つことになりました。

たぬたんぐ大佐は四ヶ月前、化かすことができずに修行に出ろと言われて、風呂敷包み

ひとつでしょんぼりと旅立ったというのに、今やたぬき軍部の新しい可能性を背負った

希望の星なのでした。

大佐の仕事場だったたぬき軍部の部屋に行くと、大佐の机は旅立ったときそのままの

状態で、すぐに仕事が再開できるようにしてありました。

「大佐、よく戻ってきて下さいました」

「助かります」

口々に迎えられ、大佐はうなずき、早速席についててきぱきと書類を片付け始めました。

エドワードはホークアイ中尉に出して貰った栗ようかんを食べながら、たぬきたちが働く

様子を眺めました。こんなにたくさんのたぬきが一堂に会したのを見るのは初めてです。

軍のたぬきたちは、おしりにくっついているふさふさしっぽを、机や椅子にぶつからない

ように、器用に動かしながら仕事をしています。

「大佐、お電話が入っています」(ふさっ)

「こちらに廻せ」(ふさっ)

「この書類にサインをお願いします」(ふさふさっ)

「わかった」(ふさっ)

「大佐、あなぐま軍部から、旧たぬき軍部の巣穴の一部を、渋抜き済みの柿の実三十個で

一ヶ月間借用したいと、電話で依頼が来ておりましたが」(ふさっ)

「掃除をきちんとするなら構わんと伝えろ。別途提出の依頼状の書式を伝えておけ」(ふさっ)

仕事してる大佐は何ともいえずかっこいいなと、エドワードは思いました。しっぽさばき

ひとつとっても素敵です。

そのたぬたんぐ大佐は、私のしっぽにさわっていいのはエドワードだけだと、優しく約束して

くれたのです。エドワードはその時の大佐の甘い声を思い出すと、とろんとした気分に

なります。自分は猫ですが、大佐のために頑張ろうとエドワードは決心しました。

大総統も、二人で旅を続けてよいと言ってくれました。この先どんなことが待ち受けて

いるかわかりませんが、エドワードはとても満ち足りた気分でした。

アルも元気だったし…と思ううち、ほっとしたのか気がゆるみ、エドワードのまぶたは

別な意味でとろんと重くなってきました。

「あらあらエドワード君、寝ちゃったのね」

長旅の疲れが出てきたらしく、エドワードは椅子の上に丸くなり、眠りこんでしまいました。

……………

ご来訪、拍手、メッセージありがとうございます!

3/29にメッセージを下さった方

いらっしゃいませ!リゼンブール小学校話にコメントありがとうございます!

ロイ先生は持ち上がりで、「リゼンブール小学校2年3組」として続く予定です。

気軽に書ける話なので、のんびりと楽しく続けていきたいと思います。

よろしかったらまたご覧くださいね。嬉しいお言葉感謝です!


リゼンブール小学校1年3組 3月(2)

2012-03-27 20:23:43 | 小話

(拍手コメントお返事は下の方にございます)

卒業式が終わり、1年生から5年生だけとなったリゼンブール小学校の校内は、

やはり寂しくなった。6年生が登校して来なくなったため、5年生が張り切って委員会活動

などに取り組んでくれているものの、頼りがいのあった6年生が不在だと、どこか心許ない

感じがする。

教室の中の絵なども少しずつ取り外され、絵の具セットなどと一緒に持ち帰ることになり、

もうすぐ2年生になるのだということが、子どもたちにも少しずつ実感されてきている

ようだった。今では教科書もほとんど終わってしまい、一年間の思い出を作文に書いたり、

整理したりしている。

休み時間、全部終了したドリルの表紙に赤マジックで花丸をつけていたロイのところに、

子どもたちが寄ってきた。

「ぼくのだー、花丸だ」

「ほら、持って行きなさい」

「わあい」

「まだマジックが乾いてないから、触ると手にインクがつくぞ。ふうふうしておけばいい」

半分冗談なのだが、真面目にドリルの表紙に息をかけ始めるのが面白い。

「ねえねえ」

「何だ」

「ロイ先生は、2年生になってもぼくたちの先生になるの?」

この質問は、年度末になると時々出てくる。その場にいた子たちはみんな、ロイが何と

答えるか聞き耳を立てている。答え方はいつも同じだ。

「それは、校長先生がよく考えて決めるんだよ。新しく来る先生や、よその学校にかわる

先生もいるから、まだ決まっていないんだ」

説明すると、子どもたちは「そうなのかー」とため息をついた。

すると、セリムがロイに向かって手を合わせた。

「ロイ先生がまた担任になりますようにー」

「あっ、俺もやる」とエドワードが急いでやってきた。

「ロイ先生が担任になりますようにー。ぱんぱん」

こらこら柏手を打つのはよしてくれ。

「ちがうよ、ちーんってやるんだよ」

それでは私が仏様になってしまう。

「なりますようにー」

ロイ先生は大明神になってしまったらしい。おさいせんはないが、御利益はあるだろうか。

「ようにー」

「にー」

一斉に拝まれて、ロイは「やめなさい、何も出ないぞ」と笑った。

そうなったらいいのにな。

そうなったらいいのにな。

……………

ご来訪、拍手、メッセージありがとうございます!

3/25 まあこさま

いらっしゃいませ!コメントありがとうございます嬉しいです!

お仕事お疲れ様でした!卒業式・卒園式シーズンですものね!

ロイ先生は高校も、小学校も、妄想で理想化して書いているので、実際とはいろいろ

違う部分もあるとは思いますが、楽しんで頂けていれば嬉しいです。

お花を育てるっていいですね。熱心に世話をして生き生きしてくれば、やりがいも感じますし。

皆さんにとっていい思い出になるだろうな、とコメントを拝読して感じました。

応援ありがとうございます!騎士ロイさんも少しずつ書いておりますので

よろしかったらまた覗いてみて下さいませ。楽しみですのお言葉に励まされます!

3/27 カイさま

いらっしゃいませ!お忙しい中お話読んで下さってありがとうございます!

あのセリフ「羨ましくなんか~」どこのツンデレという感じで、いっぺん使ってみたかった

んですよ!共感していただけてとっても嬉しいです!

お知らせくださった件、了解いたしました。おめでとうごさいます!応援しております。

どちらかお知らせいただければ、光の速さで遊びに行かせていただきますよ!

連載完結にねぎらいのお言葉、本当にありがとうございました。また頑張ります!


続 ロイ・たぬたんぐ大佐とエドにゃんのお話(1)

2012-03-24 20:46:36 | 小話

(拍手コメントお返事は下の方にございます)

焔の錬金術を操るたぬき軍部の若きエリート、しかし化かしだけは苦手な美男狸

ロイ・たぬたんぐ大佐は、化かせる自分探しの旅路で知り合った猫のエドワードと一緒に、

ひとまず一度もとの村に戻ることになりました。

これから厳しい冬に向かう時期、子猫、おっと間違い小柄な猫と二匹だけの雪中行軍は

危険ですし、キング・ぶんぶくブラッドレイ大総統にも直接会って、ここまでの成果を

報告した方がよいと判断したのです。

これからの目的は大きく二つありました。

まずは猫であるエドワードにも使える錬金術があるかどうかを調べ、なければ開発する。

そしてもう一つは、エドワードの弟のアルフォンスに頼まれた、ユキヒョウの病気を治す

錬金術を探すことでした。「賢者の石」とかいう伝説の秘宝が役立つのではないかという

情報も得ていました。

たぬき軍部に参考になる資料がないか、まずは当たってみることにしたのです。

「大佐、俺も行ってもいいのか」

「勿論だ。君のことは部下を通じて報告済みだし、私が一緒にいるんだから何も心配は

いらないよ」

エドワードはにっこりしました。大佐も笑いました。

横を向けばいつもエドワードがいるのです。

「大佐、もう困ってないな。良かった」

「私は幸せそうか?」

「うん」

エドワードには、困っている人を見つけ出すという特別な力があります。

大佐が錬金術でその人を助けながら、二匹で一緒に旅してきたのでした。

今、自分がとても満たされた気持ちでいるのはエドワードがそばにいてくれるおかげだと、

たぬたんぐ大佐は猫の頭をなでました。

一山越えて、二山越えて、南に向かいます。

※※※※※※※

たぬき軍部のある村が見えてきました。道すがら、アルフォンス捜しに協力してもらった

あなぐま軍部、いたち軍部、あらいぐま軍部、フェレット軍部にもお礼に立ち寄り、

何かの時にはたぬき軍部からも情報提供をすることを改めて約束しました。

大佐は結構義理堅い男なのです。

四ヶ月ぶりの村、ひさしぶりの軍部でした。ほら穴の出入り口では、警備のたぬきが

見張っています。大佐とエドワードが近づいていくと、

「これは、たぬたんぐ大佐!よくぞご無事で」

と、すぐに取り次いでくれました。

カチカチホークアイ中尉も急いで出てきました。

「お帰りなさいませ、大佐。皆、大佐をお待ちしていました」

「ご苦労だった」

そして中尉はエドワードにも、「いらっしゃい。元気そうでよかったわ」と挨拶してくれました。

たぬき軍部の仕事穴に歩いて行く途中、いくつも枝分かれした長いほら穴を歩いて行くと、

たぬたんぐ大佐の帰りを心待ちにしていた雌のたぬきたちが、そこかしこから熱い目で

見つめてきます。

ちらりと大佐が視線を送ると、「まあ…素敵」「ぽっ」などというため息が聞こえます。

「ぬけがけ禁止・たぬたニストの会」なるたぬたんぐ大佐のファンクラブが発足したと

聞いてはいましたが、まさか本当だったとは。

「大佐って、女の子にもてるんだな」

エドワードはあっけにとられています。

俺だって大佐が好きなんだけどと、もじもじしているエドワードに、大佐は言って聞かせ

ました。

「私のしっぽにさわっていいのは、君だけなんだよ」

たぬきにとって、ふさふさしっぽにさわらせるというのは、心を許している証拠なのです。

「さあ、行こうか」

この直後、愛らしい金色の猫を間近で見た雌たぬきたちが「キティ・エドを愛でる会」を

結成して盛り上がるとは、予想外でした。

そして三匹は、大総統のところへと呼ばれて行きました。

……………

再開しました。少しでもお楽しみいただければ幸いです。

第一部の方は後ほどサイトにまとめておきます。

ご来訪、拍手、メッセージありがとうございます!

3/23   メグさま

いらっしゃいませ!ご丁寧な感想、とっても嬉しいです!心にしみました。

学園パラレルずっと読んでくださって、本当にありがとうございます。応援してくださった

おかげで、ここまで続けてくることができました。ヒューズとの会話、どう書こうかとずいぶん

考えました。ありのままの姿を普通に受け入れて、変わらない関係を続けていくという

感じになっていればいいなと思っています。二人の気持ちは確かなので、それは

絶対に変わらないのですが、途中ハラハラして読んでいただけたのでしたら、書き手と

してはとても光栄です。両思いになってから一緒に困難を乗り越えるということが、

物語として読めるものになるのかどうか自信がなかったので、お言葉をいただいて

報われた思いです。小学校話も、また思いついたら書きたいです。

またお時間がありましたら覗いてみてくださいませ。本当にありがとうございます!


リゼンブール小学校1年3組 3月

2012-03-23 10:40:52 | 小話

(拍手コメントお返事は下の方にございます)

リゼンブール小学校では、とうとう卒業式の日を迎えた。

花で飾られた体育館にびっしりと保護者のためのパイプ椅子が並び、全校児童が

参加しての式が行われた。

ハクロ教頭の司会で式は進んだ。卒業証書授与を見て、キング・ブラッドレイ校長の

話を聞き、偉いお客さんの話を聞き、みんなで校歌を歌う。立ったり座ったりおじぎをしたり、

長い式典の間1年生の集中力がもつかどうか、ロイは心配していた。

体調が悪そうな子どもがいないか、途中で何度もクラスの方に視線を送りながら、ロイは

胸に花をつけた卒業生の晴れ姿を眺めた。

いよいよ卒業生が退場する場面になった。拍手とともに6年生が1人ずつ、一歩一歩

赤絨毯の上を歩いて行く。ブレザー姿の背の高いのはハボックで、妙な貫禄を醸し出し

ているのはブレダだ。

女子はみんな泣いていた。ロイも切なくなる。これからも元気で頑張ってほしいと思い、

ふと見ると在校生席の前列でエドワードが泣いているではないか。

6年生とはよく遊んでもらい、いつも楽しそうだった1年生たちは何人も涙を流していた。

しかしとりわけ今まで、けんかをしてもしかられても一度も泣かなかったエドワードの

泣き顔に、ロイは少々びっくりした。この子にもこんな面があるのだと、改めてこの

年度末に、新しい一面を発見したような気になった。

各自の教室に戻る時になっても、エドワードはまだ足腰も立たず

「じゃんーじゃんーおおおおん」と泣いていたので、階段を椅子を持って上がるのは

無理だとロイは思い、椅子を持ってやった。教室でも号泣大会で、泣き止む子もあるが

新たにもらい泣きする子もあり、なかなか落ち着かない。可愛いなと思いながら、ロイは

背中をかわりばんこにさすってやる。泣いていても今は原因を究明したり解決したりする

必要がないので、ひたすらよしよしとなぐさめた。

外で卒業生を見送る時刻になった。幸い天気のいい日で、青空とそよ風のもと、在校生が

通路の両端に並び、音楽とともに卒業生が出てきた。握手をしたり花を渡したり、

それぞれに祝う。

エドワードはハボックを見つけ、走って抱きつき、また泣き出した。

ロイは少し心配になってきた。あとは下校するのだが、こんなに泣いたままでは

帰り道があぶない。

「エド、俺は別にこの町からいなくなる訳じゃないぞ。そんなに泣かなくていい。

明日家に遊びに来るか」

ハボックが優しく誘うと、エドワードは真っ赤になった目を拭いて笑った。

「来年は弟も入ってくるんだろ。2年生になるんだから、頑張らなくちゃな」

「うん」

エドワードはまだすんすんとしゃくりあげてはいたが、涙は止まったようだった。

自分が言おうとしていたことを全部ハボックに言われ、出る幕のなかったロイは、なぜか

とても幸せだった。

初めての1年生担任も、あと数日だった。

……………

3/21  13:15頃の方

いらっしゃいませ!コメントありがとうございます!

楽しみにしてますというお言葉がやる気の素です!とっても嬉しいです。

第三部でこのシリーズ全体が完結する予定なので、ちょっと寂しいような気もしますが

ハッピーエンドに向かってまた少しずつ書いていきたいと思います。よかったらまた

よろしくお付き合いくださいませ!