Darkness Before the Daylight Blog

鋼の錬金術師、黒子のバスケにまつわる人々、漫画やアニメ、日々の楽しみ、その他つれづれ。

夏のイベントありがとうございました!&ペーパー小話後編

2018-08-19 20:30:47 | 日記
夏コミに続きましてインテでも、たくさんの方々にお世話になり、本当にありがとうございました。
同人界を取り巻く環境も変化し、今後の活動のあり方について色々と考えつつ、これからも
精進して参りますので、よろしくお願いいたします。

夏コミペーパーの小話の続きを、インテペーパーに載せています。
以下再掲しましたので、よかったらご覧ください。


「サンドイッチの話 続き」

 ロイは、いつも執務室で見ているのとは違って、くつろいだ表情だった。
 おはようと言えば良いのかもしれない。でも、それはどうしてか言葉にならない。
「勝手に材料使わせてもらってる。あと、台所も」
「構わんよ。あるものは何でもどうぞ」
 エドワードは頷いて、トマトを薄切りにした。よく切れるナイフだった。
「何か手伝おうか」
「じゃ、このバゲットに切り込みを頼むぜ。完全に切り離さないで、片側はつなげて」
「わかった」
 ロイはナイフを手に取り、エドワードの言う通りに一つずつ切り分けていった。
「これにトマトをのせてから、チーズとハムを挟むんだ」
「それはいいな」
「トマトに少し塩をふるのがコツなんだ」
「ほう」
「この前、うまい店を見つけて、それで教えてもらった」
 ロイが渡してくれた塩をトマト一つ一つに振りかけて、パンにはさんで閉じていく。
なじむまで待てばできあがりだ。トマトの赤とチーズの薄黄色、ハムの桃色が、しっかりした固さのある
パンの間から覗いている。
 大きな皿を一度取り出したが、思い直してそれに盛るのはやめる。エドワードは、できたサンドイッチを
それぞれ紙にくるんでいった。
 ここにはいないホークアイの分もある。誰かに持って行ってもらって、彼女に渡し、昼食にでも
してもらえばいい。
 がさがさという音を聞いて、皆が目覚めて動き出した。

「うまそうだな」
 最後に顔を洗って着替えたブレダと、毛布を片付け終わったフュリーが言った。
 ファルマンは、慣れた手つきでコーヒーの準備にかかっている。
 時刻を見ればまだ、司令部が動き出すにはだいぶ早いが、すでに酒の残ったぼんやり顔は見当たらない。
――頼もしいよな、この人たち。
 エドワードはかつて、その優れた頭脳で、ともすれば大人たちをも自分の尺度で測ろうとしていた。
 錬金術にのめり込んでいた頃は、学校の授業もろくに聞かなかった。わかっている内容だから
聞く必要はないと思い決めて、構築式ばかり考えていた自分が、果たして教師にはどう見えていたのか。
 苦々しく思いながら、大目に見てくれていたことだろう。
 それがわかる今となっては、自分がこうした大人たちの素晴らしさを知らないままで終わらずに済んだ
ことを感じ、何かに感謝したいような気持ちになっている。
「大将のサンドイッチか。貴重だな」
「大佐も手伝ったぜ。パンを切るのをな」
 ほうろうのカップに入ったコーヒーが配られ、めいめいが食べ始める。
 エドワードはその様子を、まずは見守った。
「旨いな、これ」
「トマトでパンが柔らかくなって、食べやすいよ」
 フュリーの笑顔が、エドワードはとても嬉しい。
 
 ロイも食べているのを見て、エドワードはひそかにほっとする。
「今度、機会があったら私が作ってやる。ホットドッグでどうだ。ブレダ直伝の作り方がある」
「いいっすね」
 ロイの言葉に皆が応じるのを聞いて、エドワードは思う。
 そんな時が本当に来ればいい。

 こうしていることは楽しい。心が、兄弟でいる時とは違った満たされ方をするのがわかる。
 アルフォンスといると――それが鎧姿であっても――自分が本来の自分に還るような気がする。
 濃い血のつながりのもたらす心地よく、懐かしく、落ち着いた感覚だ。
 でも、東方司令部の皆と過ごしていると、自分が空に向かって伸びていく木になったように、
 どこまでも青いはるか遠くに、ぐいと運ばれていくような気がするのだった。
 知らない世界を追いかけて、成長を遂げたいという心が、身体の奥底からわき出てくる。
 誰が、自分をこんな気持ちにさせるのだろうか。

 エドワードはふと、窓のそばの椅子に座っている黒髪の男を見た。
 軍服のワイシャツを着込んで、サンドイッチを手に持っている男だ。そのバゲットを切り分けて、
塩を探してくれた。
 ひどく厳しかったり、そうかと思えばからかったり。時には人を食った態度を取る。
 確かにいけ好かないけれど、この妙に気になる感じは何だろう。

 俺は忙しいんだ。
 思い出せ、旅の目的を。
 このまま見ていれば、きっと大佐は気付いて「どうした」と話しかけてくる。
 期待している訳じゃない。
 気にしていると思われるのもしゃくにさわる。
 面倒はごめんだ。

 面倒なのはロイという存在ではなく、自分自身の心が動いてしまうことなのだと、エドワードは
薄々気付いている。
 今はとりあえず食べるのだ。
 エドワードは一本に縛った金髪を一振りして、サンドイッチにかみついた。

                      おわり

ペーパー小話&夏コミありがとうございました

2018-08-14 22:18:27 | 日記
夏コミではたくさんの方々にお世話になり、ありがとうございました!

以下は夏コミのペーパーに書き下ろした小話の前編です。
後半は、19日のインテのペーパーに載りますので、続けて読んでいただけたら嬉しいです。
インテが終了しましたら、後半をまたこちらに、そしてサイトの方にまとめてアップします。

原作設定で、まだ付き合っておらず、お互いの気持ちを自覚していないロイエドの話です。

サンドイッチの話    
                   わふわふ

 まだ日中は暑さの残る、初秋のある日だった。
 新聞にも載らないほどの小さな事件を解決し、ようやく仕事に一区切りのついた東方司令部の面々は、
珍しくうち揃って息抜きの飲みに出かけた。
「大将も一緒なんて初めてじゃないか。たくさん食えよ」
「よっしゃ」
 ちょうどその頃イーストシティに来ていたエルリック兄弟は、犯人逮捕に協力したため、
ハボックたちに引き連れられて、夜の街を歩いていた。

 石畳を並んで進み、目立たない路地を曲がっていくと、小さな看板の店があった。
 皿やナプキンの並んだテーブルに着く。前もって予約をしていたから、次々と料理が運ばれてくる。
 飲み物が行き渡り、まずは乾杯だ。
「お疲れ様でした!」
 大人たちの持ち上げるビールのジョッキに、水の入ったグラスを軽く当てた後、エドワードは
腕まくりせんばかりの勢いでフォークを持った。
「いっただっきまあす」
 ピザとチキンソテー、グリーンサラダ、熱々のポテトフライ。わいわいと大人数で食べるのはいつ以来
だろうか。
 どれも旨かった。熱いものは熱く、冷たいものは冷たく、酒を飲んでも飲まなくても、楽しめる料理
ばかりだった。
「好きなだけ、食べるといい」
 グラスを持ったロイがそう言って笑っているのは、上機嫌な証拠だ。
「おう」
 エドワードはそう答える。
 周囲は、仕事とは関係のない話題で盛り上がっていて、ロイはそれを聞いている。
 飲食のできないアルフォンスにとっては、こうした楽しい話が絶好のご馳走だった。
 ブラックハヤテ号は、おとなしく店の隅に陣取って伏せたまま、周囲を窺っている。

 つくづくと、エドワードは彼らの様子を眺めた。
 小さな事件でおさまったのは、犯人グループの動きを、こちらがいち早く察知して対応できたから
だった。それぞれの持ち場での皆の働きがあってこそ、敵の裏をかき、テロ計画の準備を阻止でき、
新聞記者が気にも留めないような規模の話で済んだのだった。
 この場の全員が、今は開放感ではめを外しているように見えても、いつでも出動できる体勢を維持
している。店の入り口には、誰一人として背を向けない。酒を飲んではいても、飲まれることはなかった。
 それがエドワードにも見て取れるほど、司令部の皆との付き合いは長くなっていた。
 こうした時は、ロイのおごりということになっている。行きつけの店はその辺りを心得ていて、皆を
ちょうど良くもてなしてくれた。
 例えば二年前の自分ならどうだったか。このように誘われても、タダ飯にありつけるとしか思わなかった
だろう自分を、エドワードは若干の恥ずかしさをもって振り返る。
 
 やがてお開きとなった。最もその店から近かったのはロイのアパートだったため、皆はそのままそこに
泊まることになった。
 ホークアイは、しっぽを振るブラックハヤテ号とアルフォンスを護衛に連れ、
「では、これで帰ります」
と言って立ち上がった。女性らしい身体の輪郭線を隠す上着の中に、もう一つの相棒、銃がいつも
しのばせてあった。
「気をつけて」
 ロイの言葉に二人は「はい」と答えて、ドアは静かに閉められた。アルフォンスは、今日はホークアイの
もとに世話になる予定だった。

 男たちはソファーや床にそれぞれ長くなって眠っている。
 実はまだ、エドワードは泊まるかどうかは迷っていた。
「私は寝る。良かったらそこにある毛布を使うといい。洗濯済みだ」
 ロイがさっさと自分の寝室に引っ込んでしまったので、エドワードは素直に部屋の隅の毛布にくるまり、
クッションを枕にして絨毯に横たわった。今から宿を探すのも、もう面倒だった。
 こうした寝方には慣れている。眠りはすぐに訪れた。

※※※※※※

 夜明けからしばらく経った頃、エドワードは目覚めた。
 目を開けて周囲を見回すが、全員がまだぐっすりと眠っていた。
 ロイの寝室も静かだ。最近よく休めていなかったはずだから無理もない。
 エドワードはなるべく物音を立てないように毛布から抜け出した。
 キッチンに入り、冷蔵庫を開けてみた。
 ちょうど買い込んだバゲットを持っている。
 昨夜のささやかな礼のしるしに、皆の朝食を作ろうと思ったのだった。
 
 トマトが一つあった。チーズとハムも入っていた。ロイの部屋の食料を勝手に使うのは気が引けるが、
後で話せば大丈夫だろう。これで全員分のサンドイッチができる。
「ナイフは、と」
 最初の引き出しで見つけた。刃の状態を見ようと顔を近づけた時、声がした。
「鋼のか」
 いつの間にか起き出してきたロイが、戸口によりかかり、やわらかい朝日の射す中でこちらを見ていた。

 ……続く



夏コミのお知らせ

2018-08-09 19:29:18 | 日記
ただいまです。ご無沙汰しておりました。
今年の夏は暑さが極端で大変ですが、皆様体調は大丈夫でしょうか。

現在、管理人は病気療養中です。退院して一日ごとに回復し、日常生活はもう大丈夫ですが、
しばらく小説の同人誌の新刊はない見込みです。

ですが、創作はマイペースで続けていきたいと思っております。

8月11日(祝・土)は、COMIC MARKET94にて、既刊「センチメンタル・バースデイ」を

東京ビッグサイト 西1ホール
ま17-a「3P-ThreePii-」様

で委託していただく予定です。

また、ペーパーにロイエド小話を書かせていただきました。
コミケとインテのペーパーで前編・後編となっています。
イベントでお手にとって読んでいただけたらとても嬉しいです。
相方の可愛らしいペーパー漫画、そして勿論新刊もお楽しみに!

ペーパー小話は後でこちらのブログとサイトにも再録しますので、よろしかったらご覧ください。

復帰第一作という感じで、自分の気持ちを自覚しかけたばかりの兄さんを書けて
楽しかったです~!!

入院先では、暇なので色々と書きたいものを考えることができました。
本は出なくても、むしろこちらの更新は進むかも……と思っています。