リゼンブール小学校の学芸会が近づいてきた。<o:p></o:p>
秋の恒例行事で、子どもたちがそれぞれに歌ったり踊ったり劇をしたり、
工夫をこらした演し物を見せる。保護者や地域のお年寄りなどが毎年
楽しみにしているのだ。<o:p></o:p>
今年は何をやろうかと、ロイは考えていた。学年の担任たちで
できそうな企画をいくつか持ち寄り、話し合って決めることになっている。
八十名近い二年生が出演するので、どうやって全員の出番を確保するかが難しいのだ。<o:p></o:p>
子どもたちは劇が大好きである。そのことを思い出し、ロイはみんなでの
劇を提案することにした。<o:p></o:p>
「劇ねえ。楽しいけど、全員出せるかしら」<o:p></o:p>
「配役を交代して、楽器演奏やナレーションも分担してやれば、
何とかなるんじゃないでしょうか」<o:p></o:p>
「そうね。では、何の話にしましょうか」<o:p></o:p>
学芸会の演し物については、「日常の勉強の内容を生かしたものにする」という
条件があった。まるっきり新しいものに取り組もうとすると、練習にとても時間が
かかるため、本来大切な授業の進み具合に支障が出るからだ。
「今度国語で勉強する『かさじぞう』なんてどうでしょうか」<o:p></o:p>
かさじぞうは有名な日本の民話で、貧しくとも信心深く仲の良い老夫婦が、
年越し前の大晦日、餅代もなかったのでかさを編み、市場に売りに行く話である。
残念ながら売ることができず、帰り道に雪をかぶったお地蔵様をいたましく思って
売り物のかさをかぶせ、最後の一人には自分のかさを脱いでやったところ、夜中に
お地蔵様が餅や味噌や米俵などをたくさん持ってきてくれたという、
ほのぼのハッピーエンドが子どもたちにも人気だった。<o:p></o:p>
おじいさんとおばあさん、お地蔵様で八人。市場にいる人々は二十人ほどか。
ナレーションに十人、音楽担当が十五人とすれば、劇を交代で行えば全員出演
させることができる。<o:p></o:p>
「お地蔵様を増やしたらどうでしょう」<o:p></o:p>
「ロイ先生、実はお地蔵様って六人に決まっているのよ。
倍の十二人の時もあるけど、それじゃ多すぎるし」<o:p></o:p>
「えっ、本当ですか」
地蔵とは地蔵菩薩のことで、六道(地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道・天道)を
それぞれ司っている。そのため必ず六体でセットになっている。
かさじぞうのお話は、最後の一体にかぶせるものがおじいさん自身のかさであったり、
手ぬぐいであったりという微妙な違いはあるものの、地蔵の数は必ず6体であるのは
そうした理由によるのだ。
…………続きます。
どうしてなのか改行がうまくいきません。すみません。
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