「大佐、おかえり」
玄関をくぐると、エドワードはいつものようにそっと抱きついてきます。大佐は-もう准将
なのですが、エドワードは呼び慣れた名前が好きなようで、今でもこう話しかけてきます-
横にかばんを置いて、エドワードを抱き留め、ただいまを言います。
「准将だった、ごめんね大佐」
「いいんだよ」
猫耳に大佐がそっと鼻を寄せれば、すべすべとして絹のようです。揺れるしっぽも、
一緒に暮らし始めて、すっかり手入れが行き届いています。
ひょいと抱き上げると、少しずつ重くなってきてはいるものの、まだまだ華奢な猫の身体
です。頬にキスをしてやると、エドワードは「くすぐったいよ」と言いながらひげをぴんと
立てて笑いました。
大佐はとっても幸せです。毎日毎日、家に戻ってくればいつも、大好きなエドワードと
一緒にいられるからです。
「今日はおさかなのムニエルだよ」
「そうか、エドワードの得意料理だな」
大佐はにっこりしました。
エドワードはやはり猫ですから、魚が大好きです。大佐は、エドワードと暮らすまでは
あまり魚を食べたことがなかったのですが、旅をしていれば、その土地土地でいろんな
ものが出てきます。エドワードと出会い、二人で暮らすようになってから、大佐は魚も
なかなか美味しいものだと思い始めました。
そしてこのごろ、大佐はいつの間にか、ハッと気づくと、猫独特の動作である「顔を洗う」
ことをしている時がありました。エドワードが小さな肉球でこしこしと顔をこすっているのが
可愛かったので、「こうするのか」と真似をしてみたら、「大佐、もうちょっと前足を曲げて
やるんだよ」とレクチャーをされたのがはじまりでした。
「こうか?」
「そうそう」
「こんな感じだな?」
「大佐、上手上手」
とおだてられ、言われたようにやってみるとなかなか気持ちのよいもので、大佐は少し
猫の生活様式に影響を受け始めているのでした。
このままではたぬにゃんぐ准将という、不思議な生き物になってしまいそうですが、
大佐大佐とごろごろ喉を鳴らして甘えてくるエドワードと一緒にいると、もう何でも
構わないという気持ちになってしまうのでした。
エドワードも、自称もうすぐ十六歳です。
………
エイプリルフール企画ではなく、マジです!
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