Darkness Before the Daylight Blog

鋼の錬金術師、黒子のバスケにまつわる人々、漫画やアニメ、日々の楽しみ、その他つれづれ。

ロイ・たぬたんぐ大佐とエドにゃんのお話(2)

2011-12-06 00:27:57 | 小話

(拍手コメントお返事は下の方にございます)

たぬたんぐ大佐は、ぽてぽてと道を歩いていきました。

のどかな村の昼下がり、蝶々が楽しげに飛んでいます。

査定のことを思い起こしてみると、大総統の言う通り、確かに自分は、誰かを化かすこと、

つまりは騙すことが好きではないのです。

道ばたに、大きな柿の木があるのが見えました。つやつやとした堅い葉っぱが風に

揺れています。お金に見せかけるには大変好都合で、化かしの道の基本中の基本です。

たぬたんぐ大佐も何度となく練習してきました。それ自体は普通にできます。

しかし査定の時の実技試験では、葉っぱのお金を持って買い物に行き、何くわぬ顔をして

売り物をかすめ取って来なければならないのです。たぬきの審査員が、陰になり

ひなたになりついて来て、うまく化かせるか見張っているという過酷な試験なのです。

たぬたんぐ大佐は、これがどうしても上手にできません。誰かを騙すために使うと

意識した途端、錬金術がうまく発動しなくなり、葉っぱは葉っぱのまま、緑色に

輝くばかりなのです。

それでも筆記試験とレポートは完璧な出来です。たぬきの肉球でペンを持つのは

なかなか難しいのに、大佐にはそんなのはお手の物。

そんなわけで査定には何とか通るのですが、たぬきたちの群れの生存競争が厳しく

なりつつある昨今、うまく化かせないままでは不便で仕方がありません。

大総統は、自分を優しいと言いました。しかしたぬき界においてはそれは褒め言葉には

なりません。別の種類のけものならともかく、優しいたぬきなど物笑いの種、この世で

一体他に、我を生かす道があるものでしょうか。

この旅ではむやみに他人に情けをかけるまいと、たぬたんぐ大佐は決心しました。

そう思うこと自体、たぬきらしくないのですが。

畑の中を抜ける道は、小さな森の中へと続いていきます。森から出ると、隣の村です。

「大佐ーーー!」

突然呼ばれて振り向くと、部下のたぬきが土煙を上げて、すたたたたと追いかけて

くるのが見えました。がっちり握ったお米のおにぎりか、力士を彷彿とさせるその外見は、

ハイマンス・げんこつ山ブレダ少尉に間違いありません。

なかなかの頭脳派で、たぬたんぐ大佐も頼りにしていました。

「何だ」

「これにサインをお願いします」

なんということでしょう。書類の束を差し出され、大佐は目が点になりました。

ここまで書類が追ってくるとは、どんだけ人使いが、もといたぬき使いが荒いのでしょうか。

「どうしても、大佐でないとだめなものがあるんです」

手近な切り株に腰を下ろして書類をさばきながら、それでも大佐は少し嬉しくなりました。

自分はたぬきの一員として、群れの役に立てているのです。

続いてブレダ少尉は、いいにおいのする大きな包みを渡してきました。

「差し入れです」

受け取ると、感触からホットドッグだとわかりました。ブレダ少尉の好物です。

犬の名前のついた食べ物ですが、これで力を蓄えれば景気づけになることでしょう。

大佐が感謝の言葉を伝えると、少尉は笑いました。

「時々来ます。移動する時は、滞在場所を教えて下さい。どうかお気を付けて」

「わかった。君たちも頑張るように」

「大佐のお帰りを、お待ちしています」

ブレダ少尉は大佐のサインを貰った書類を抱えて、また土煙とともに去っていきました。

大佐は再び歩き出し、ようやく村境の森に足を踏み入れました。

うっそうとした木陰の中、どこまでも続く草藪の一つが、かさりと音を立てました。

「誰かいるのか」

問うと、たぬきのものとは違う三角に尖った耳が二つ、ちらりと見えました。

(猫…だな。それも子どもだ)

たぬきにとって犬はやっかいな存在で、狐は永遠のライバルですが、猫はあまり接点が

なく、適当に共存し合っています。

その耳は、珍しい金色をしていました。

怖がらせないように「おいで」と呼ぶと、その生き物は藪から出てきました。

やはり子猫です。目は一層濃い金色でした。

こんな所にひとりでいるとは、珍しいこともあるものです。

大佐の黒い目と、その猫の金色の目が合いました。

そのとたん、子猫はぱたりとたおれました。大佐は驚いて駆け寄りました。

「腹…減った」

可愛いなりをしてぞんざいな言葉遣いです。

「食べるかい」

大佐の差し出したホットドッグに、子猫はばくりとかぶりつきました。

もう一つ、もう一つと食べさせるうち、六個あった差し入れは、あと一個だけになって

いました。はたと、子猫は大佐の顔を見上げました。

「あんた、誰」

………続く………

ご来訪、拍手、メッセージありがとうございます!

12/4  メグさま

いらっしゃいませ!学園パラレル続きとクリスマス話、読んでくださって嬉しいです!

クリスマス話はまだ早いかなと思いつつ、どうしても書きたくなって書いてしまいました。

幸せな二人の様子を楽しんでいただけたのなら良かったです!

まわりの寒さや、お風呂やお茶のあったかさを盛り込んで、楽しく考えることができました。

幸せな気分になったと仰っていただけて、書いて良かった!と感激です。

大佐は仕事をさぼるな!と叱られがちなので、エドに「たまには休め!」と言わせて

あげたかったんですよ。励まし合う二人もいいなあと思いまして。

ロイ先生とエド君はまだまだ続きます!多少山あり谷ありでも、気持ちはしっかり

つながっている二人なので大丈夫です!また頑張りますのでどうぞよろしく!

12/4  りんこさま

いらっしゃいませ!コメント感謝です!ありがとうございます!

たぬたんぐ話笑っていただけましたか!?楽しんでいただけるものか、書いている

本人はあんまり自信がなくて、良かったーとほっとしました!

チャットでは、大佐がけもの設定だったら何の動物?という話題が発端になりました。

ストーリーまではその時は出なかったのですが、最中から妄想が爆発しまして(笑)

今回ゲストで小説を寄稿させて頂いたサイト様で、その時の絵がご覧になれるようです。

許可をいただいて形にし始めましたが、意外と長くなりそうです…

よろしかったらまた覗いてみてくださいませ!マイペースで続けますのでよろしくです!

12/5  たちもりさま

いらっしゃいませ!コメントありがとうございました!ご来訪下さって感謝です!

たぬたんぐ話笑っていただけて光栄です!書いたかいがありました!

今回、まだ名乗ってはいませんが、エドにゃんと会えたので、今後の展開に

ご期待ください(そんなこと言って大丈夫か)

また楽しんでいただけるように頑張りますね!