Darkness Before the Daylight Blog

鋼の錬金術師、黒子のバスケにまつわる人々、漫画やアニメ、日々の楽しみ、その他つれづれ。

ぽつぽつ更新

2018-01-24 23:09:18 | 小話
少しずつですが、過去の話を引っ張ってきています。
今はパソコンよりもスマホで閲覧する方が多いのではと思いますが、小説はちゃんと表示されているでしょうか。

黒バスの方は、完売した本「あなたが、ボクの」の再録です。
完売といっても、実は手元にあと二冊だけのこっていますが、今の目で見ると手直ししたい部分もあり、
ずっとやりたかった再録なので、読んだことのない方も、ある方も、少しでも楽しんでいただけると
嬉しいです。

長い話ですので、少しずつ更新していきます。完走までよろしくお願いします~!

リゼンブール小学校小話&拍手お返事

2016-10-06 22:56:04 | 小話

ある日の給食時間、そろそろごちそうさまの挨拶が近づいてきたという時、ふとある子がロイに尋ねた。

「ロイ先生はどうして、先生になろうと思ったの?」

たまーに出る質問である。

「そうだなあ、教育実習に行ってみて、みんなと一緒に勉強するのが楽しかったからかな」

ロイはそう答えた。

「ふうん」

子どもたちはわかったような、わからないような返事をした。「教育実習」という言葉は、まだ2年生の子たちにはわかりにくかったかもしれない。

「じゃあロイ先生は楽しい?」
「仕事は忙しいけど、楽しいよ」

ロイが笑顔でそう言うと、「えっ」と驚いた声が教室の一角から聞こえた。
見ると、リン・ヤオだった。

「先生って、仕事だったノ」
「はい?」

今度はロイが驚く番だった。

「先生って、仕事なノ? 知らなかっタ」

リンは心底驚愕していた。

「仕事だよ、当たり前だろ」

物知りのセリム・ブラッドレイが冷静に指摘した。
ロイは、驚いているリンに聞き返してみた。

「先生って、仕事じゃないと思ってた?」
「うん」

僕も私も、という子が何人もいる。
聞いてみると、「考えてみれば仕事に決まってるんだけど、今までなんとなく、先生っていうのは学校にいるのが当たり前で、朝になると学校に来る、『そういう人』なんだと思ってタ」というのである。

ふと、エドワードはと見れば、彼も「先生」というのを「仕事」であり「職業」とは認識していなかったようで、よほど意外だったのか、ロイを見ながらボーゼンとしている。
先生(かつてお世話になった、保育園や幼稚園の先生も含まれるかもしれない)というのは、子どもにとって、家族や親戚の次くらいに身近な大人なので、「仕事」というより「そういう存在」なのだろう。
ロイがそのように納得したとき、ここでしゃべる能力を回復したらしいエドワードが叫んだ。

「じゃあ、先生、給料もらってるの!?」

これはまた別方向からの問いである。

「そりゃもらってるよ。だってもらわなかったら、先生はこの赤ペンも買えないよ」

ロイはそう言い、特に採点が多い時には1本が3日ともたない机上の赤ペンを取り上げて見せた。

「あっ、そうか」
「そうかー」

子どもたちは頷いた。そこでちょうど、時刻はごちそうさまとなった。
「仕事」というものについて、子どもたちが少しだけ知る機会になったなら良かったな、と思いつつ、みんなのびっくりした顔を思い出すと、ついつい笑ってしまうロイだった。


※※※※※※


葉月白様

こんにちは! メッセージありがとうございました(感涙)
先日の小話と過去作品まで、楽しんでいただけてとても嬉しかったです。
丁寧な感想までいただいて、とても励みになりました。久しぶりにリゼ小の小話を書きましたので、
読んでいただけたら幸いです。
小学生エド君たちの可愛さが出ていたらいいなあと思いながら書きました。

これからも頑張りますので、どうかよろしくお願いいたします。


ご来訪、拍手ありがとうございます!

十月三日

2016-10-03 22:02:12 | 小話

十月三日



「どうした」

エドワードは顔を上げて、男に笑ってみせた。

「まだ、あったんだなって思って」

エドワードが手にしていたのは、一枚の上等な紙だった。
鋼の錬金術師という銘を賜ったときの、獅子の紋章も鮮やかな拝命証。

ふたりで暮らす家の書斎の、大きな本棚の前だった。
そこに籠もったきりで、なかなか戻ってこないエドワードを、ロイは茶を淹れてから呼びに来てくれた。


十月三日、暖炉にはまだ火は入らない。

あの日、燃え落ちたエルリック家は、熾火を抱いて三日三晩うっすらと煙を上げ続け、そして静かになったと、エドワードは後で聞いた。
いつしか風雨にさらされて、今も墓標のように、その姿をそこにとどめている。

時間は、エドワードに何かをもたらしてくれたのだろうか。
それとも、何かを奪い去ったのだろうか。
あの火は、兄弟ふたりの――殊更、兄の、と本人はいう――罪を償い、清めたのだろうか。
それとも、新たな罪の始まりとなったのだろうか。


答えはまだ出ない。
しかし今、ロイと共にあって、エドワードは当時のことを少しだけ、忘れたくないと思うようになっている。

辛く、苦しく、思い出したくなかったからこそ、エドワードはそれを、銀時計の中に刻まなければならなかった。
あの、全ての人を憎んだ一瞬が確かに自分の人生の通過点だったことから、もう逃れる必要はない。
今ではもう、心の中はいっぱいに満たされているからだ。

錬金術をこの手から失い、弟の身体と腕を取り戻した。
父とはもう二度と会うことが叶わなくなったことと引き替えに、確かに愛されていた証を受け取った。

あの頃よりは残り少なくなった未来の時間を、今はただできるだけ、この人と過ごしたいと――あのすべてのなつかしい日々もまた、この現在を得るための通過儀礼であったのだと――そう思うことを、エドワードは自分に許した。

「どうした? ぼんやりして」
「何でもねえよ」

旅のことを考えていたんだろう。
そう言う男にエドワードは、「うん」と答えた。

長い長い旅路の始まりが、かつての今日であったこと。
それを心の奥に埋めるように、エドワードはドアを後ろ手に閉めた。


おわり

リゼンブール小学校1年3組初夏

2016-06-07 21:29:47 | 小話
暑くなってきました。
リゼンブール小学校では、全校児童の家庭に、お手紙が配られました。
「熱中症予防のため、お子さんに水筒を持たせてください。中身は水かお茶でお願いします」
その続きには、水筒に名前をつけるようにお願いが添えられていました。

早速次の日、たくさんの子供たちが、肩から水筒を下げて登校しました。
好みの色や大きさの水筒が、ななめに揺れています。

ロイは尋ねました。

「水筒持ってきた人?」
「はあい」
「はあい」

担任している1年生たちはみんな、張り切って手を挙げています。

「先生、ぼくお茶入れてきた」
「わたしも」
「ぼくは水にした」
「氷も入ってるよ」

聞いてみると、家で作った麦茶を入れてきた子もいれば、ペットボトルのお茶を詰め替えて
きたという子もいました。

「おれ、自分で入れた」

エドワードがおおいばりで言います。どうやら自分で、ペットボトルのふたを開けることが
できたらしいのです。

「すごいな」

ロイがほめると、ふんっとエドワードは鼻息を荒くしました。

「けっこう、いっぱい入ってた。多いお茶買ったから」
「多いお茶? 2リットルペットボトルのことかな」
「違うよ先生。知らないの。ちゃんと書いてあるんだぜ、『多いお茶』って」

ロイは実はよく意味がわからなかったのですが、つたない説明をよく聞くと、エドワードは
伊藤園の「お~いお茶」の話をしているらしいと判明しました。

「多いと大きいの間違いはよくあるが…なるほど」

ロイはつい、伊藤園の自動販売機を見ると、思い出し笑いをするようになりました。


※※※※※※


お久しぶりです。

ご来訪、拍手、メッセージありがとうございます!

5/31 葉月白様

いらっしゃいませ! コメントありがとうございます。
細かいネタの寄せ集めのようなシリーズですが、楽しんでいただけてとてもうれしいです。
今回ちょっとリゼンブール小学校の小ネタを考えついたので、書いてみました。
更新はゆっくりペースですが、またお時間がありましたらどうぞ。


リゼンブール小学校2年3組 3月になりました

2016-03-01 21:22:21 | 小話
いよいよ3月になりました。
エドワードたちの、2年生としての生活もあとわずかです。
クラス替えを控えているので、担任のロイ先生はちょっと寂しい気持ちでした。
(この子たちと、この学級で勉強することはもうないんだな…)

そんなロイ先生の心は知らず、子どもたちは今日も元気いっぱいです。

今朝は、春の足音を予感させる強風で、雨も降っていました。かさをさして登校してきた
子どもたちの中には、かさがひっくり返ってしまった子も何人がいました。
「先生どうしよう、お母さんに怒られる」
涙目になって、忠犬ハチ公のようにロイを待っていたのは、エドワードでした。
「どれどれ」
ロイが見てみましたが、かさの骨が折れてしまっているので、これは直せません。
「でも、今朝の風じゃ、仕方ないんじゃないか? お母さんもわかってくれるよ」
「でも…昨日買ってもらったかさだから…」
「それは…運が悪かったな…」
ロイもそうとしか言えません。エドワードはうなだれています。

「先生が、連絡帳に書いてやるから」
ロイがそう言うと、エドワードはパッと笑いました。
「うん」

そのまま、ロイとエドワードは一緒に廊下を歩きました。
「ねえロイ先生」
「なんだ」
「今年は、2月が1日だけ長かったんだよね?」
「そうだよ」
今年はうるう年なのです。
「てことは、今年は、6年生と1日長く一緒にいられるんだよね」

エドワードはなぜか上級生にかわいがられるところがあり、去年はハボック、
今年はフュリーによくなついて、たまに遊んでもらっているのです。
(いいなぁこの子…)
間もなく卒業するフュリーと、1日長く一緒にいられると言って喜んでいるエドワードに、
ロイ先生は不覚にも萌えてしまいました。
卒業式では去年のように,大泣きするのでしょうか。
泣き顔は心が痛みますが、卒業生と別れたくなくて泣いている様子は
とてもかわいいのです。

おしまい。

※※※※※※

先日の11万ヒットを踏んでくださった方からコメントをいただきました~。
小説の感想まで添えていただいて、とても励みになりました。ありがとうございます。

正直、「素晴らしき舞台」はとても書くのが難しい話で、更新停止も長かったので、
もう覚えている方もいらっしゃらないのでは…と思い、投げ出しかけた時もありましたが
更新を喜んでいただけて、本当に諦めずに書いて良かったと思いました。

次の(4)ではロイとエドが出会いますので、頑張って書きます~!!
ご来訪、拍手ありがとうございます!!