ある日の給食時間、そろそろごちそうさまの挨拶が近づいてきたという時、ふとある子がロイに尋ねた。
「ロイ先生はどうして、先生になろうと思ったの?」
たまーに出る質問である。
「そうだなあ、教育実習に行ってみて、みんなと一緒に勉強するのが楽しかったからかな」
ロイはそう答えた。
「ふうん」
子どもたちはわかったような、わからないような返事をした。「教育実習」という言葉は、まだ2年生の子たちにはわかりにくかったかもしれない。
「じゃあロイ先生は楽しい?」
「仕事は忙しいけど、楽しいよ」
ロイが笑顔でそう言うと、「えっ」と驚いた声が教室の一角から聞こえた。
見ると、リン・ヤオだった。
「先生って、仕事だったノ」
「はい?」
今度はロイが驚く番だった。
「先生って、仕事なノ? 知らなかっタ」
リンは心底驚愕していた。
「仕事だよ、当たり前だろ」
物知りのセリム・ブラッドレイが冷静に指摘した。
ロイは、驚いているリンに聞き返してみた。
「先生って、仕事じゃないと思ってた?」
「うん」
僕も私も、という子が何人もいる。
聞いてみると、「考えてみれば仕事に決まってるんだけど、今までなんとなく、先生っていうのは学校にいるのが当たり前で、朝になると学校に来る、『そういう人』なんだと思ってタ」というのである。
ふと、エドワードはと見れば、彼も「先生」というのを「仕事」であり「職業」とは認識していなかったようで、よほど意外だったのか、ロイを見ながらボーゼンとしている。
先生(かつてお世話になった、保育園や幼稚園の先生も含まれるかもしれない)というのは、子どもにとって、家族や親戚の次くらいに身近な大人なので、「仕事」というより「そういう存在」なのだろう。
ロイがそのように納得したとき、ここでしゃべる能力を回復したらしいエドワードが叫んだ。
「じゃあ、先生、給料もらってるの!?」
これはまた別方向からの問いである。
「そりゃもらってるよ。だってもらわなかったら、先生はこの赤ペンも買えないよ」
ロイはそう言い、特に採点が多い時には1本が3日ともたない机上の赤ペンを取り上げて見せた。
「あっ、そうか」
「そうかー」
子どもたちは頷いた。そこでちょうど、時刻はごちそうさまとなった。
「仕事」というものについて、子どもたちが少しだけ知る機会になったなら良かったな、と思いつつ、みんなのびっくりした顔を思い出すと、ついつい笑ってしまうロイだった。
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葉月白様
こんにちは! メッセージありがとうございました(感涙)
先日の小話と過去作品まで、楽しんでいただけてとても嬉しかったです。
丁寧な感想までいただいて、とても励みになりました。久しぶりにリゼ小の小話を書きましたので、
読んでいただけたら幸いです。
小学生エド君たちの可愛さが出ていたらいいなあと思いながら書きました。
これからも頑張りますので、どうかよろしくお願いいたします。
ご来訪、拍手ありがとうございます!