Darkness Before the Daylight Blog

鋼の錬金術師、黒子のバスケにまつわる人々、漫画やアニメ、日々の楽しみ、その他つれづれ。

ロイ・たぬたんぐ准将とエドにゃんの小話

2014-11-23 06:54:55 | 小話
たぬたんぐ准将とエドにゃんが暮らしている小さな家の近くの停留所から、
このたび、図書館に行けるバスが出ることになりました。
エドにゃんは大喜びです。
よく手伝いに行っているヨーダ・マルコー先生の診療所には、
医学や薬学についての本は数多くありますが、エドにゃんが最近気に入っている
物語や小説は、ほとんど置いてありません。
待合室やたぬき軍部にある本は、とっくの昔に読み尽くしてしまいました。
図書館に行けば、どんなジャンルの本も好きなだけ手に取ることができます。
「良かったな。今度の休みに一緒に行こうか」
たぬたんぐ准将も、錬金術についての本を探せるので、楽しみになりました。

そして数日後、十五分ほど「バス」という名のたぬ力車に揺られ、着いた図書館は
今まで見た中でも最大級のほら穴を利用して作られていました。
「わあ、すごい」
エドにゃんはびっくりしました。
「これは見事だな。元々はクマの持ち物だった穴だと聞いているが」
准将も目を丸くしました。
以前ここに住んでいた、人、じゃなくてクマのいいクマが引っ越ししていく時、
仲良くしていた隣近所の動物たちの役に立てばと、丹精込めたほら穴を譲ってくれたのだそうです。
そのためか、いろいろな種類の動物たちが利用していました。

見回すと、壁に穿たれたくぼみに本棚が作り付けられ、ぎっしりと本が並べられています。
所々に明るいランプがともされていて、机や椅子も置いてありました。
エドにゃんは喜びのあまり、目からビームが出ています。
受付で2匹分の図書館の会員証を作り、とりあえず1時間後にまた入り口で、と約束して、
たぬたんぐ准将とエドにゃんはそれぞれに読みたい本を探しに行きました。

1時間後、打ち合わせ通りにたぬたんぐ准将は入り口にやってきました。
が、まだエドにゃんは来ていません。
准将は苦笑しました。何かに熱中すると周囲が見えなくなるエドにゃんのことですから、
多少の遅刻は織り込み済みです。
准将に見とれて赤くなる雌の動物たちに会釈しながら、しばらく待つことにしました。

10分経ちました。
少し心配になってきた准将が、そろそろ探しに行った方がいいかと思い始めた時、
耳がぺしょんとなったエドにゃんが、本を抱えて歩いてきました。

「どうかしたのか」
准将が尋ねると、エドにゃんは下を向いて黙ったまま、准将と前足をつなぎました。
肉球をきゅっとにぎってきます。
「元気がないぞ。具合でも悪いのか」
エドにゃんはきっと目をキラキラさせて「准将、もっと見たい」と言うだろうと
予想していた准将は、心配になってきました。

ほら穴から1度出てよく聞くと、とても嫌な本を読んでしまったというのです。
書名を尋ねたところ、それは「かちかち山」でした。
カチカチホークアイ中尉の名前の語源(だかなんだか)ですが、原典の話には
世にも悪辣なたぬきが出て来る上、たきぎをしょわせて火をつけるという
残酷描写があるので、たぬき軍部では禁書扱いになっており、厳重に保管されていたので、
今初めてエドにゃんの目に触れたのでした。
「かわいそう」
エドにゃんはそれにショックを受けてしまったのです。
「よしよし、驚いただろう」
准将は逆に原因がわかってほっとし、エドにゃんの頭をなでてやりました。
「たぬきはみんな優しいのに…あんなことしないのに」
一般的にたぬきは人を化かすものであって、准将をはじめとしたたぬき軍部が例外なのですが
そのエドにゃんの気持ちは嬉しい准将でした。

しばらくしてエドにゃんの気分も落ち着き、選んだ本を借りて帰路につく頃には笑顔でした。
「また来ような」
「ん」
「今度は『ぶんぶく茶釜』にしておきなさい。それにもたぬきが出て来るが、明るい話だから」
「ちゃまが?」
「茶釜」
「ちゃがまだな。わかった」
バス停の方向へと歩きながら、准将はエドにゃんに話しかけます。
途中でご飯を食べて帰ろうか、エドワード。

おしまい。

冬のインテに直参します(予定)

2014-11-15 21:49:19 | 日記
こんばんはです。
冬の大阪インテに直参できそうです。飛行機も予約しました。
今度こそは時間通りに飛んで、予定の空港に着陸してほしいと祈っています。
そして新刊を出せるように頑張ります。
今のところ、原作設定の、ロイエドのなれそめを含んだ話で、
全書き下ろしになる予定です。
時期的にそろそろ原稿の準備に本腰を入れなければならなくなったため、
パソコントラブルで頓挫していた更新祭りは、棚上げになります。すみません。
再開の機会をうかがいつつ、原稿に励みます…

ご来訪、拍手ありがとうございます!

ふたりで

2014-11-05 22:27:15 | 日記
 せりふだけの話です。今は夜の十二時を回ったところで、明日、大佐は非番です。

「大佐」
「なんだ」
「こうして、二人でいるとさ」
「うん」
「時間は過ぎていくんだけど、すっげえ静かで」
「うん」
「この部屋だけしか存在しないみたいな気がしてくるってこと、ない?」
「…そうだな」
「先のことは考えないで、今だけしかなくて」
「うん」
「そういう馬鹿な話、していいかな」
「いいぞ」
「えっとさ」
「ん」
「犬は好き?」
「言うことをよく聞く犬は好きだな」
「俺はダメか」
「君は犬じゃないだろう」
「確かに」
「意味がわからん」
「それじゃ、変な物食べたとき、吐く方? 下痢する方?」
「あまり吐くことはないな。下痢かもしれん」
「そうかあ」
「君はどうなんだ」
「吐くこともある」
「それは大変だな」
「ま、な」
「では私も聞こう。片付けは得意か」
「全然ダメ」
「私もだ。仲間だな」
「えー、あんたとかよ」
「何だと」
「へん」
「そんな鋼のはこうしてやる」
「おわ、やめれ、脇腹は禁止だ」
「ならば」
「あ、首筋とか卑怯」
「禁止事項が多いな」
「わがままで悪かったな」
「私は心が広いから気にしない」
「何だとう」
「ははは」
「あ、笑った笑った」
「嬉しいのか」
「おう」

おしまい。

場所はたぶん大佐のアパートのベッドの上です。
ご来訪、拍手ありがとうございます!

遅れてきたハロウィン話(汗)

2014-11-01 21:37:29 | 小話
やっと復活しました。ご無沙汰して申し訳ありません。

しばらく前、拍手コメントで「No Fate」の続きが読みたいと仰って下さったりーふ様

お返事遅くなって申し訳ありません。コメントありがとうございました。
続きは同人誌「Red Teardeops」で完結しています。もしよろしければご検討ください。
現在は自家通販とイベント販売のみになっています。サイトのオフラインページの方も
ご覧いただければと思います。

たぬたんぐ准将とえドにゃんのお菓子のお話

エドにゃんは、家族のいない一匹暮らし状態で子ども時代を過ごしましたので、たぬたんぐ准将は
エドにゃんがお菓子を食べた経験は、かなり少ないのではないかと考えていました。
きっと、生活に余裕がなかっただろうと思ったからです。
しかし、実はそうではありませんでした。
エドにゃんがお腹を空かせていると、出会った動物が、たまたま持ち合わせていた食べ物を分けてくれる
ということは、意外と多かったらしいのです。小腹が空いた時に備えて、飴やチョコを持ち歩いている人は
結構いますからね。
そんなわけでエドにゃんは甘い物がなかなか好きでしたので、二匹で一緒に暮らし始めてから、
たぬたんぐ准将はエドにゃんを喜ばせようと、おやつを買ってくるようになりました。
ドーナツやアップルパイは特にお気に入りです。
また、たぬき軍部で出張や旅行をしたたぬきが、目的地からおみやげを買ってきてみんなに配ってくれる
こともあります。目新しいお菓子や変わったお茶などを受け取ると、たぬたんぐ准将はエドにゃんのことを
考えます。持って帰ったら喜んでくれるでしょう。
たぬたんぐ准将は、それほど甘い物を好んで食べるわけではないのですが、エドにゃんが幸せそうにして
お菓子を食べている様子を見ると心が和むので、向かい合ってそれを眺めながら、一緒に少し食べるのです。

エドにゃんが食べたことのないものも、いろいろありました。夏祭りに行った時に買ったわたあめや、
練ると色が変わるおもちゃのような駄菓子はエドにゃんもびっくりでした。
准将が、エドにゃんに渡そうと握りしめすぎてこなこなになってしまったうまい棒も、エドにゃんは
おいしいと言ってもふもふ食べました。

そして、お菓子を食べたら当然虫歯が心配になります。
エドにゃんに出会った頃、大佐だったたぬたんぐ准将との付き合い方は、友達とか同僚とか恋人のような
対等な関係ではなく、どっちかといえば育児の要素が濃かったのです。なので、歯みがきの仕方を教え、
時には仕上げみがきまでしてあげたものです。幸いエドにゃんは歯が丈夫で、虫歯はありませんでした。
仕上げみがきも最近はあまり必要ないのですが、今でも当時がなつかしいたぬたんぐ准将でした。

「お菓子くれなきゃいたずらするぞ、准将」

シーツをかぶったエドにゃんが、何か言ってます。

「いいぞ、いたずらしなさい」

准将が笑います。

「えっ」

おばけは絶句しています。シーツの上から、エドにゃんがびっくりしたのがわかりました。
必ずたぬたんぐ准将はお菓子を用意してくれるはずだと思っていたので、具体的ないたずらの計画が
何もなかったらしいのです。

「冗談だよ。パンプキンパイと、クッキーがある」

シーツをとりのけると、ちょっと困り顔のエドにゃんがいました。
ほっぺに口づけると、エドにゃんのひげがぴんと立ちました。

「ありがと」

おしまい。