こんにちは。初夏の陽気になりました。皆さんお元気でいらっしゃいますか。
小話「マスタングの昼休み」です。小説にするほどの長さはないのでこちらに。
ここから季節は晩秋です。
マスタングの昼休み
※恋愛要素の全くない、品もあまりない小話です。
イーストシティに、寒い季節がやってきた。
まだ冬、とまでは呼ばないにしても、朝夕は急激に気温の下がるこの頃、
身体は気候の変化に対応できず、実際以上に寒く感じられることもある。
そうした時に不用意に冷えの中に身を置くと、一気に風邪を引き込んで体調を
崩すことがあるものだ。
東方司令部の軍人たちは、健康で体力豊富な者が多いが、夜の勤務ともなると
暖房が入っていても肌寒い。悪いことに暖房費の削減のため、設定温度が低めに
してあり、この頃ロイ・マスタング大佐の部下の中には、鼻水を出し始める者もみられた。
その中で、ハボックは皮膚感覚が他人よりもいささか鈍いのではないかと思われていた。
彼は周囲の「見てるだけで寒い、どうにかしろ」という罵倒にもめげず、特別な
お偉いさんの来客でもない限り、秋がかなり深まっても屋内では上半身は黒Tシャツ
一枚である。そして今日もそのいでたちで仕事をしていた。
資料室から戻って自席に着いたとたん、ハボックはくしゃみをした。
「おいお前、今日は午後から冷え込むらしいぜ。そろそろ着たらどうだ」
ブレダの忠告を受け、ハボックもさすがに昼を過ぎたら上着を羽織ろうと思い直した。
ロイに言われたファイルが全部揃っているか確認し、むき出しの両腕に揃えて抱え、
執務室に入って行った。
ロイはハボックの挨拶に応じ、広い机の隅をペンで指した。
「ご苦労だった。そこに置いておけ」
「はい」
瞬間、もう一度ハボックはくしゃみが出そうになり、あわてて後ろを向いた。
「やっべ、風邪ひいたかな」
呟いた小声をロイは聞き取り、「私にうつすな」と言った。
「すんません、大丈夫です」
「お前の小隊はもうすぐ野外訓練だろう。鼻をかんでいる場合か」
そのときはラクダのももひきでも何でも装着しますと答えたハボックに、ロイは冷たい
視線を向けた。
「お前はばかか」
「なんですいきなり」
「そんなものを穿いたまま暮らしていて、好きな女の子の部屋に行くという
千載一遇のチャンスが来たらどうするつもりだ。見られたら幻滅されかねんぞ」
「そんな時はズボンごと下ろせばいいんですよ。恐るるに足りませんよ」
ゴホン
咳払いがした。そこで二人ははっと黙った。
ついいつもの調子で軽口を叩いていたら、執務室のはじっこにエルリック兄弟がいて
文献を読んでいるのを、すっかり忘れていたのである。
「…………」
「…。どうも」
エドワードが会釈をしてよこした。微妙なこちらを見るその目つき、黙ったままの
アルフォンスに、大人二人は(たいしたことはないとはいえ)下ネタを発したことを反省した。
「……失礼した」
ロイがその場を取り繕った。エドワードは貸しができたとでもいうように、にやりと笑った。
「大人の話は難しいな! なっ、アル」
「そうだね、兄さん」
都合のいいときだけ子どもぶってみせる兄弟に、大人二人は頭を掻いた。
おわり
…………
これだけですみません。
先日更新した「ラバーズ・シンクロニシティ」読んでくださってありがとうございます!
あのシリーズの最近三話くらいは、「スキすぎて」を聞きながら書いていました。
その時によってイメージは大佐だったり、兄さんだったりしましたけど、
この気持ち気付かれないように~
とか、
小さな~恋の種だった~きれいな~花の物語~
とか
会うたびに~笑顔咲いたのは~~君だから~~
とか
スキすぎて スキで スキなだけ~
とかが妙に気に入ったので(しかも時々振り付けつけて踊っていた)
それもあってすごく楽しかったです。
ご来訪、拍手、メッセージありがとうございます!
5/17 「ごちそうさまです」の方
いらっしゃいませ!お気に召していただけてとても嬉しいです!
私自身が二人に幸せになってほしくて書いているので、周囲はあてられていると思います。
またお時間のあいた時にでもいらして下さいませ!!