新ブログhttp://jazzlab.blog67.fc2.com/もご覧ください。
保守派と革新派が入り乱れる混沌とした現代NYジャズ・シーンにおいて、革新本流を貫く、今最も有望視されているピアニスト、アーロン・パークスのBlue Note デビュー盤。現在までに Keynote Records というレーベルから4枚のソロ名義のアルバムを出してきたが、テレンス・ブランチャードのバンドでの活躍が認められ、今回、晴れてメジャー・デビューを果たすことになった。
83年生まれのアーロンは、10代の早い時期からケニー・バロンの薫陶を受け、弱冠16歳でデビュー盤『 The Promise 』(1999)を録音した。そこには折り目正しい正統派ピアニストとしてのアーロンの姿が刻まれていた。しかし、作品を追うごとにそのスタイルはより現代的なものへと変貌していき、2002年に吹き込まれた『 Shadows 』は、自身のオリジナル曲を中心とした都会的で洗練された作品として高い評価を得た。ちょうどその頃にテレンス・ブランチャードの目にとまり、彼のバンドに参加。5年間在籍し、3枚のアルバムにその名を刻んだ。
その一方で、 フランク・ネメス、アンブローズ・アーキンムシーレイ、マット・ペンマン、マイク・モレノ、ケンドリック・スコット、クリスチャン・スコットなど、NY の最前線で活躍する若手ミュージシャンンらと競演する中で、独自の世界観を築いていった。
本作のメンバーには、ベースにマット・ペンマン、ドラムにエリック・ハーランド、そしてギターのマイク・モレノと、盟友をそろえた。収録されてている曲は全10曲で、すべてアーロンのオリジナル曲だ。
幾分内省的で、ダークで陰鬱な楽曲が大半を占める。ブラッド・メルドーやE.S.T. 的な手法も散見される。しかし、そのような先人達のスタイルを完全に咀嚼、消化し、独自の明確なオリジナリティーを提示することに成功しているあたりに、相当の手腕を感じる。決して楽しい音ではないが、脳内に確かな余韻を残す稀有な音世界だ。
また、4人のメンバー間の結束力の強さもその音から明確に伝わってくる。特にマイク・モレノの音楽的意匠は、完全にアーロンの意匠と同一ベクトル線上にあると言ってよいだろう。こういった音楽はそれだけで聴いていて非常に心地よいものだ。
ただ、若干残念なことは、エリック・ハーランドの奏法が、いつもよりも軽く、デジタル感が漂っていることだ。スネアのチューニングがハイピッチなのか。ミキシングのせいなのか。なんだかとっても落ち着かない音なのだ。最近のNY録音の作品には有りがちだが、個人的にはあまり好きではない。
ということで、普段、欧州産ジャズを好んで聴いている方には、ややトッツキにくい面をもった作品かもしれないが、NYジャズの現状を知る意味でも、一聴の価値はある作品だと思う。きっとアーロンの醸し出す不思議な磁場を体感できるであろう。
Aaron Parks / Invisible cinema 2008 Blue Note ( Music from EMI )
Aaron Parks ( p, mellotron, key )
Mike Moreno ( g )
Matt Penman ( b )
Eric Harland ( ds )
最新の画像[もっと見る]
- C.Baker & E.Pieranunzi / Soft Journey 16年前
- Paolo Di Sabatino / Atelier of Melody 16年前
- Paolo Di Sabatino / Atelier of Melody 16年前
- Walter Bishop Jr. / Speak Low HQ-CD仕様 ( 2 ) 16年前
- Walter Bishop Jr. / Speak Low HQ-CD 仕様 ( 1 ) 16年前
- American Clave / Anthology 16年前
- Aaron Parks @ Cotton Club 16年前
- Modern Art Trio / Progressive Jazz 16年前
- November 20, 2008 16年前
- November 18, 2008 16年前
Aaron Parksの新作ですが、そこそこ期待が持てそうですね。これは、既に注文済みですが、抱き合わせの関係で未着です。そのかわりクリスさんお勧めの「Shadows」やJoe Kienenmann「Integration」、話題になったNajponkの旧作をまとめて手に入れましたが、仕事が忙しくて未だ聴いておりません。
ところで、念願の書斎が完成したのですが、未だオーディオ機器を導入しておらず、数日後の遅い夏休みで、いろいろ物色しようかと考えております。
正直なところ、最初は「あれ?」ってな感じで、あまりピンとこなかったですよ。やっぱり「 The Promises 」の方がいいわ、なんて思っていたのですが、だんだん、じわじわ感じてきて、今では毎日、聴いてます。通勤中に。
>念願の書斎が完成したのですが、未だオーディオ機器を導入しておらず、数日後の遅い夏休みで、いろいろ物色しようかと考えております。
お~、お若いのに「書斎」だなんて、すげー、うらやましいです。
オーディオ導入したら、詳細をぜひ教えてくださいませ。待ってます。
で、僕も木曜日から遅い夏休みで、沖縄行ってきます。 明日は、学会で四国に行ってきます。とっても最近、忙しくて、なかなか新譜も聴いてられませんが、マイペースで更新していきますので、どうかよろしく。
またハーランドもそれなりに叩いてはいるものの、やはり音的なこともありなんかイマイチなんですよね。
私も繰り返して聴くとじわじわ感じてくるのかなぁ(苦笑)
まだまだ、若いので、これからに期待です。
温度感低めなれど、なかなか楽しめました。
TBさせていただきます。
週末、なにかと忙しくなってしまい、
ブログどころじゃなかったので。
>温度感低めなれど、なかなか楽しめました。
僕なんかも、体調がすぐれないときなどは、
こういった類いのNYジャズは聴けません。
心底、好きか、と聞かれると、ちょっと
悩んじゃいます。
こんどコットンクラブに来るみたいですが、
今回はパスしようかと思ってます。
ということで、こちらからもTBさせて
いただきます。